《26年税制改正大綱》租税特別措置等

2 租税特別措置等
 〔新 設〕
 〈相続税・贈与税〉
 (1) 医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の創設
   ① 相続税
    イ 概要
      個人(以下「相続人」という。)が持分の定めのある医療法人の持分を相続又は遺贈
     により取得した場合において、その医療法人が相続税の申告期限において認定医療法人
     (仮称)であるときは、担保の提供を条件に、当該相続人が納付すべき相続税額のうち、
     当該認定医療法人の持分に係る課税価格に対応する相続税額については、移行計画(仮
     称)の期間満了までその納税を猶予し、移行期間内に当該相続人が持分の全てを放棄し
     た場合には、猶予税額を免除する。
    (注) 認定医療法人(仮称)とは、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法
      等の一部を改正する法律に規定される移行計画(仮称)について、認定制度の施行の
      日から3年以内に厚生労働大臣の認定を受けた医療法人をいう。
    ロ 税額の計算
    (イ) 通常の相続税額の計算を行い、持分を取得した相続人の相続税額を算出する。
    (ロ) 持分を取得した相続人以外の者の取得財産は不変とした上で、当該相続人が持分の
      みを相続したものとして相続税額の計算を行い、当該相続人の相続税額を算出し、そ
      の金額を猶予税額とする。
    (ハ) 上記(イ)の相続税額から上記(ロ)の猶予税額を控除した金額を持分を取得した相続
      人の納付税額とする。
    ハ 猶予税額の納付
      移行期間内に持分の定めのない医療法人に移行しなかった場合又は認定の取消し、持
     分の払戻し等の事由が生じた場合には、猶予税額を納付する。
      また、基金拠出型医療法人(仮称)に移行した場合には、持分のうち基金として拠出
     した部分に対応する猶予税額についても同様とする。
    ニ 利子税の納付
      上記ハにより猶予税額の全部又は一部を納付する場合には、相続税の申告期限からの
     期間に係る利子税を併せて納付する。
    ホ 税額控除
      相続の開始から相続税の申告期限までの間に持分の全てを放棄した場合には、納税猶
     予は適用せず、上記ロの計算により算出される猶予税額に相当する金額(基金として拠
     出した部分に対応する金額を除く。)を相続人の納付すべき相続税額から控除する。
   ② 贈与税
    イ 概要
      持分の定めのある医療法人の出資者が持分を放棄したことにより他の出資者の持分の
     価額が増加することについて、その増加額(経済的利益)に相当する額の贈与を受けた
     ものとみなして当該他の出資者に贈与税が課される場合において、その医療法人が認定
     医療法人(仮称)であるときは、担保の提供を条件に、当該他の出資者が納付すべき贈
     与税額のうち、当該経済的利益に係る課税価格に対応する贈与税額については、移行計
     画(仮称)の期間満了までその納税を猶予し、移行期間内に当該他の出資者が持分の全
     てを放棄した場合には、猶予税額を免除する。
    ロ 税額の計算
    (イ) 上記イの経済的利益及びそれ以外の受贈財産について通常の贈与税額を算出する。
    (ロ) 上記イの経済的利益のみについて贈与税額を算出し、その金額を猶予税額とする。
    (ハ) 上記(イ)の贈与税額から(ロ)の猶予税額を控除した金額を納付税額とする。
    ハ 猶予税額の納付、利子税の納付及び税額控除については、相続税と同様とする。
   ③ その他所要の措置を講ずる。
 (注) 上記の改正は、移行計画(仮称)の認定制度の施行の日以後の相続若しくは遺贈又はみ
   なし贈与に係る相続税又は贈与税について適用する。
 〈登録免許税〉
 (2) 全国新幹線鉄道整備法第6条の規定に基づき国土交通大臣から指名された中央新幹線の建
   設主体が、中央新幹線の事業の用に供するために取得する不動産に係る所有権の保存登記若
   しくは移転登記又は地上権の設定登記に対する登録免許税を免税とする措置を講ずる。
 (3) 中心市街地の活性化に関する法律の改正を前提に、同法の認定特定民間中心市街地交流拠
   点緊急整備事業者(仮称)が、同法の認定特定民間中心市街地交流拠点緊急整備事業計画
   (仮称)(平成28年3月31日までに認定を受けるものに限る。)に従い不動産を取得する場
   合における当該不動産に係る所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率を、次のとおり
   軽減する措置を講ずる。
   ① 所有権の保存登記 1,000分の2(本則1,000分の4)
   ② 所有権の移転登記 1,000分の10(本則1,000分の20)
 (4) 関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律に規定す
   る空港運営権者が、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に受ける関西国際空港
   及び大阪国際空港に係る公共施設等運営権の設定登録に対する登録免許税の税率を、1,000分
   の0.5(本則1,000分の1)に軽減する措置を講ずる。
 (5) 個人が、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に、宅地建物取引業者により一
   定の増改築等が行われた一定の住宅用家屋を取得する場合における当該住宅用家屋に係る所
   有権の移転登記に対する登録免許税の税率を、1,000分の1(一般住宅1,000分の3、本則
   1,000分の20)に軽減する措置を講ずる。
 (6) 農地中間管理事業の推進に関する法律に規定する農地中間管理機構が、平成26年4月1日
   から平成28年3月31日までの間に、農地売買等事業により農用地区域内の農用地等を取得す
   る場合における当該農用地等に係る所有権の移転登記に対する登録免許税の税率を、1,000分
   の10(本則1,000分の20)に軽減する措置を講ずる。
 
 〔延長・拡充等〕
 〈相続税・贈与税〉
 (1) 農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、次の見直しを行う。
   ① 特例適用農地等を収用等のために譲渡した場合の利子税の特例について、平成26年4月
    1日から平成33年3月31日までの間に特例適用農地等を収用等のために譲渡した場合には、
    利子税の全額(現行2分の1)を免除する。
   ② 特例適用農地等を譲渡し、代替農地等を取得した場合の買換え特例について、三大都市
    圏の特定市の特例適用農地等を収用等のために譲渡した場合には、取得時に三大都市圏の
    特定市の生産緑地地区内の農地等又は市街化調整区域内の農地等に該当しないものであっ
    ても、譲渡後1年以内にこれらの農地等に該当することとなる土地については、代替農地
    等に該当することとする。
   ③ 三大都市圏の特定市の特例適用農地等を収用等のために譲渡した場合において、譲渡後
    1年以内に、その譲渡があった日において特例適用者が有していた特例適用農地等以外の
    三大都市圏の特定市の生産緑地地区内の農地等若しくは市街化調整区域内の農地等又は譲
    渡後1年以内にこれらの農地等に該当することとなる土地(譲渡をした特例適用農地等に
    係る相続等の開始前において有していたものを除く。)で、譲渡時における価額がその譲
    渡対価の額の全部又は一部に相当するものを納税猶予の適用対象とする見込みであること
    につき、税務署長の承認を受けたときは、次のとおりとする。
    イ その譲渡はなかったものとみなす。
    ロ 譲渡後1年を経過する日において、その譲渡対価の額の全部又は一部に相当する価額
     の農地等が納税猶予の適用対象とされていない場合には、譲渡した特例適用農地等のう
     ち納税猶予の適用対象とされなかった価額に相当する部分については、その日において
     譲渡がされたものとみなす。
   ④ 農地中間管理事業の推進に関する法律により創設される農地中間管理事業のために行わ
    れる賃借権等の設定による貸付けを特定貸付けの特例の対象とするほか、同法の制定に伴
    う所要の措置を講ずる。
   ⑤ 農業経営基盤強化促進法及び農地法の改正に伴う所要の措置を講ずる。
  (注) 上記①から③までの改正は、平成26年4月1日以後の収用等のための譲渡について、上
    記④及び⑤の改正は、同日以後の貸付け等について適用する。
 (2) 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置及び特定の贈与者
   から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例について、適用対象となる
   既存住宅用家屋の範囲に、地震に対する安全性に係る規定又はこれに準ずる基準に適合しな
   い既存住宅を取得した場合において、当該既存住宅の取得の日までに耐震改修工事の申請等
   をし、かつ、その者の居住の用に供する日までに耐震改修工事を完了していること等の一定
   の要件を満たす既存住宅用家屋を加える。
 (3) 相続財産を贈与した場合の相続税の非課税制度の対象となる法人の範囲に、博物館、美術
   館、植物園、動物園又は水族館の設置及び管理の業務を行う地方独立行政法人を加える。
 (4) 森林法施行規則の改正を前提に、改正後の認定基準により森林経営計画の認定を受けた場
   合にも、特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例及び計画伐採に係る相続税
   の延納等の特例を適用することとする。
 〈登録免許税〉
 (5) 特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用
   期限を2年延長する。
 (6) 認定低炭素住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を
   2年延長する。
 (7) マンション建替事業の施行者等が受ける権利変換手続開始の登記等に対する登録免許税の
   免税措置について、次の措置を講ずる。
   ① マンションの建替えの円滑化等に関する法律の改正を前提に、適用対象にマンション敷
    地売却組合(仮称)が受ける次の登記を加える。
    イ 分配金取得手続開始の登記(仮称)
    ロ マンション敷地売却組合(仮称)が売渡請求権の行使により取得する区分所有権又は
     敷地利用権の取得の登記
    ハ 権利消滅期日(仮称)後の建物及び土地に関する権利について必要な登記
   ② 適用期限を2年延長する。
 (8) 預金保険法に規定する第一号措置を行うべき旨の内閣総理大臣の決定又は特定第一号措置
   に係る特定株式等の引受け等を行うべき旨の内閣総理大臣の決定に基づく預金保険機構によ
   る金融機関等の株式の引受け等に伴い、当該金融機関等が受ける資本金の額の増加の登記等
   に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
 (9) 認定経営基盤強化計画等に基づき行う株式会社の設立等の登記に対する登録免許税の税率
   の軽減措置について、適用対象から金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法に規
   定する認定経営基盤強化計画に基づき行う株式会社の設立等の登記を除外した上、その適用
   期限を2年延長する。
 (10) 国際船舶の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延
   長する。
 (11) 国家戦略特別区域法の国家戦略民間都市再生事業を定めた同法の区域計画について内閣総
   理大臣の認定を受けたことによりその事業の実施主体に対して都市再生特別措置法の民間都
   市再生事業計画の認定があったものとみなされた場合には、その計画に基づいて行われる都
   市再生事業により整備される建築物について、認定民間都市再生事業計画に基づき特定民間
   都市再生事業の用に供する建築物を建築した場合の所有権の保存登記に対する登録免許税の
   税率の軽減措置を適用できることとする。
 (12) 特定の社債的受益権に係る特定目的信託の終了に伴い信託財産を買い戻した場合の所有権
   の移転登記等に対する登録免許税の免税措置の適用期限を2年延長する。
 (13) 株式会社地域経済活性化支援機構法の改正を前提に、株式会社地域経済活性化支援機構が
   金融機関等からの債権の買取りにより取得する不動産に関する権利等の移転登記等に対する
   登録免許税の免税措置について、適用対象に株式会社地域経済活性化支援機構が再生支援対
   象事業者に対する資金の貸付けに伴い金融機関等から取得する不動産に関する権利等の移転
   登記等を加える。
 〔廃 止〕
 (1) 次に掲げる特別措置について、適用期限の到来をもって廃止する。
   ① 国立公園特別保護地区等内の土地に係る相続税の物納の特例
   ② 新関西国際空港株式会社が移転補償事業により買い取った土地の所有権の移転登記に対
    する登録免許税の免税措置
   ③ 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構から交換により建物を取得した場合の登
    記に対する登録免許税の免税措置
   ④ 認可地縁団体が特例民法法人から取得した不動産の所有権等の移転登記に対する登録免
    許税の免税措置
 
 3 その他
 (1) 次に掲げる一時金等について、相続税法上のみなし相続財産(退職手当金等に含まれる給
   付)として相続税の課税対象とするとともに、法定相続人1人当たり500万円までの非課税
   制度の対象とする。
   ① 小規模企業共済法施行令の改正を前提に、小規模企業共済制度の加入対象者に追加され
    る小規模企業者の死亡に伴い支給を受ける一時金
   ② 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律及び国
    家公務員の退職給付の給付水準の見直し等のための国家公務員退職手当法等の一部を改正
    する法律等の施行により、国家公務員共済、地方公務員共済及び私立学校教職員共済に創
    設される退職等年金給付のうち共済組合員等の死亡に伴い遺族が支給を受ける一時金等
 (2) 調書について、次の措置を講ずる。
   ① 調書を提出すべき者が、所轄税務署長の承認を受けた場合には、当該所轄税務署長以外
    の税務署長に対し、その調書に記載すべき事項(以下「調書記載事項」という。)を記録
    した光ディスク等を提出する方法又は当該調書記載事項を電子情報処理組織(e-Tax)を
    使用する方法のいずれかの方法により提供できることとする。
   (注)上記の改正は、平成26年4月1日以後に提出すべき調書について適用する。
   ② 上記①の所轄税務署長の承認を受けるための申請書又は調書記載事項を記録した光ディ
    スク等を提出する場合における税務署長の承認を受けるための申請書の提出があった場合
    において、その提出の日から2月を経過する日までにその申請につき承認又は却下の処分
    がなかったときは、その日においてその承認があったものとみなすこととする。
   (注)上記の改正は、平成26年4月1日以後に提出する申請書について適用する。
 (3) 子ども・子育て支援法等の施行に伴い、次の措置を講ずる。
   ① 幼保連携型認定こども園の設置を主たる目的とする学校法人又は社会福祉法人に対する
    寄附を、相続財産を贈与した場合の相続税の非課税制度の対象とする。
   ② 幼保連携型認定こども園における教育又は保育に対する助成を目的とする認定特定公益
    信託を、相続財産を拠出した場合の相続税の非課税制度の対象とする。
   ③ 相続税又は贈与税が課されない公益事業を行う者の範囲に、認定こども園を設置し、運
    営する事業又は小規模保育事業、家庭的保育事業若しくは事業所内保育事業を行う者を加
    える。
   ④ 学校法人、公益社団法人及び公益財団法人、社会福祉法人並びに宗教法人が認定こども
    園又は小規模保育事業、家庭的保育事業若しくは事業所内保育事業の用に供するために取
    得する不動産に係る所有権の移転登記等に対する登録免許税を非課税とする措置を講ずる。
   ⑤ その他所要の措置を講ずる。
 (4) 母子及び寡婦福祉法の改正を前提に、父子家庭の父等が作成する同法に定める資金の貸付
   けに関する文書については、印紙税を課さないこととする。
 (5) 奄美群島振興開発特別措置法の期限の延長を前提に、独立行政法人奄美群島振興開発基金
   を引き続き非課税法人(印紙税法別表第二)とする。
 (6) 小規模企業者等設備導入資金助成法の廃止に伴い、特別貸付けに係る消費貸借に関する契
   約書の印紙税の非課税措置について、規定の整備を行う。
 (7) 東日本大震災により被害を受けた者に対する青年等就農資金の特別貸付けに係る消費貸借
   に関する契約書については、引き続き印紙税を課さないこととする。
 (8) 中小企業基盤整備機構が作成する不動産の譲渡に関する契約書等の印紙税の非課税措置の
   適用期限を2年延長する。
 (9) 中小企業基盤整備機構が行う工業再配置等業務及び産炭地域経過業務の廃止に伴い、これ
   らの業務に係る印紙税の非課税措置を廃止する。
 
 三 法人課税
 
 1 復興特別法人税の1年前倒し廃止
   復興特別法人税の課税期間を1年間前倒しして終了することとする。
   なお、復興特別法人税の課税期間終了後、法人が各事業年度において利子及び配当等に課さ
  れる復興特別所得税の額は、各事業年度において利子及び配当等に課される所得税の額と合わ
  せて、各事業年度の法人税の額から控除する。この場合に、復興特別所得税の額で法人税の額
  から控除しきれなかった金額があるときは、その金額を還付する。
 
 2 民間投資と消費の拡大
 〔延長・拡充等〕
 (1) 交際費等の損金不算入制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年
   延長する。
   ① 交際費等の額のうち、飲食のために支出する費用の額の50%を損金の額に算入すること
    とする。
   (注)飲食のために支出する費用には、専らその法人の役員、従業員等に対する接待等のた
     めに支出する費用(いわゆる社内接待費)を含まない。
   ② 中小法人に係る損金算入の特例について、上記①との選択適用とした上、その適用期限
    を2年延長する。
 
 3 地域経済の活性化
 〔新 設〕
 (1) 中心市街地活性化のための税制措置
    特定再開発建築物等の割増償却制度について、中心市街地の活性化に関する法律の改正を
   前提に、同法の認定特定民間中心市街地交流拠点緊急整備事業計画(仮称)に係る商業施設
   等で同法の認定特定民間中心市街地交流拠点緊急整備事業者(仮称)が取得等をするものに
   つき、5年間30%の割増償却が適用できる措置を加える(所得税についても同様とする。)。
 (2) 特定の資産の買換えの場合等の課税の特例について、都市再生特別措置法の改正を前提に、
   都市機能誘導区域(仮称)以外の地域内にある土地等、建物等又は構築物から都市機能誘導
   区域内にある土地等、建物等、構築物又は機械装置で、認定区域整備事業計画(仮称)に記
   載された誘導施設(仮称)において行われる事業の用に供されるものへの買換えを適用対象
   に加える(所得税についても同様とする。)。
 
 4 国家戦略特区
 〔新 設〕
 (1) 国家戦略特別区域法の制定に伴い、次の措置を講ずる。
   ① 国家戦略特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制
    度等の創設
    イ 青色申告書を提出する法人で国家戦略特別区域法の一定の特定事業の実施主体として
     同法の認定区域計画に定められたものが、平成26年4月1日又は同法の区域計画に関す
     る規定の施行の日のいずれか遅い日から平成28年3月31日までの間に、国家戦略特別区
     域内において、同法に基づく事業実施計画(仮称)に記載された機械装置、開発研究用
     器具備品、建物及びその附属設備並びに構築物で、一定の規模以上のものの取得等をし
     て、その特定事業の用に供した場合には、その取得価額の50%(建物及びその附属設備
     並びに構築物については、25%)の特別償却とその取得価額の15%(建物及びその附属
     設備並びに構築物については、8%)の税額控除との選択適用ができることとする。た
     だし、税額控除における控除税額は当期の法人税額の20%を上限とし、控除限度超過額
     は1年間の繰越しができる。
      なお、特定中核事業の用に供される一定の機械装置及び開発研究用器具備品について
     は、その普通償却限度額との合計でその取得価額までの特別償却ができることとする。
   (注1) 国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却若しくは法人税額
      の特別控除制度又は国際戦略総合特別区域における指定特定事業法人の課税の特例と
      の選択適用とする。
   (注2) 一定の特定事業とは、国家戦略特別区域法の特定事業のうち、産業の国際競争力の
      強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に資するものとして我が国の経済社会の活力
      の向上及び持続的発展に寄与することが見込まれる事業をいう。
   (注3) 特定事業の具体的な内容については、政府における検討と併せて、与党の税制調査
      会においても検討する。
   (注4) 一定の規模以上のものとは、機械装置については1台又は1基の取得価額が2,000
      万円以上のものとし、開発研究用器具備品については1台又は1基の取得価額が1,000
      万円以上のものとし、建物及びその附属設備並びに構築物については一の建物及びそ
      の附属設備並びに構築物の取得価額の合計額が1億円以上のものとする。
   (注5) 特定中核事業とは、一定の特定事業のうち中核となる事業をいい、具体的には、イ
      ノベーションにより新たな成長分野を切り開いていくために、特に促進していくべき
      事業として、次の(イ)から(ハ)までのいずれにも該当するものを行う事業をいう。
    (イ)当該地域に存する人的・物的資源を活用することによって実現できる先端的な取組
    (ロ)革新的な技術開発による国民生活の改善や、新規産業・新規市場の創出につながる
      取組
    (ハ)他の地域に広くメリットが波及する取組
       なお、特定中核事業は、まずは、先端的技術を活用した医療等医療分野を対象とし、
      さらに、特区の具体的な内容について検討が進んだ段階において、関係者の合意を得
      て、必要に応じて追加される。
    ロ 上記イの特別償却の適用を受ける特定中核事業の用に供された設備が開発研究用資産
     である場合において、研究開発税制の適用を受けるときは、その減価償却費は、特別試
     験研究費として取り扱うこととする。
 
 5 復興支援のための税制上の措置
  〔延長・拡充〕
 (1) 復興産業集積区域等において機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度に
   ついて、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
   ① 産業集積事業用機械装置に係る普通償却限度額との合計でその取得価額までの特別償却
    ができる措置の適用期限を2年延長する。
   ② 復興居住区域に係る措置について、次のとおり適用対象となる被災者向け優良賃貸住宅
    の要件の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
    イ 各独立部分の床面積について、120㎡以下で、かつ、25㎡以上(現行50㎡以上)とし、
     床面積が50㎡未満の各独立部分については、その賃貸が単身者に対し優先して行われる
     と明らかにされているものであることとする。
    ロ 共同住宅又は長屋を構成する各独立部分の数について、床面積が25㎡以上のものが10
     以上又は50㎡以上のものが4以上(現行50㎡以上のものが10以上)とする。
 (2) 被災代替資産等の特別償却制度における償却割合を引き上げる措置の適用期限を2年延長
   する(所得税についても同様とする。)。
 (3) 被災者向け優良賃貸住宅の割増償却制度について、上記(1)②と同様に適用対象となる被
   災者向け優良賃貸住宅の要件の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する(所得税に
   ついても同様とする。)。
 
 6 沖縄振興関連
 〔新設・拡充〕
 (1) 産業集積経済金融活性化特別地区(仮称)に係る措置の創設
    沖縄振興特別措置法の改正により、金融業務特別地区制度を発展的に解消し、産業集積経
   済金融活性化特別地区制度を創設することに伴い、次の措置を講ずる。
   ① 産業集積経済金融活性化特別地区における認定法人の所得控除制度の創設金融業務特別
    地区における認定法人の所得控除制度を改組し、青色申告書を提出する内国法人で、産業
    集積経済金融活性化特別地区の区域内において、同地区の指定の日以後に設立され、かつ、
    本店又は主たる事務所を有するものであって、産業集積経済金融活性化促進計画(仮称)
    に記載された特定産業(仮称)を行う法人として平成26年4月1日又はその指定の日のい
    ずれかか遅い日から平成29年3月31日までの間に沖縄県知事の認定を受けたもの(認定法
    人)が、一定の要件を満たす場合には、その設立の日から10年を経過する日までの間に終
    了する各事業年度において、所得金額の40%に特区内従業員数割合を乗じた金額の所得控
    除ができる制度とする。
   (注1) 特定地域において工業用機械等を取得した場合の特別償却若しくは法人税額の特別
      控除制度又は沖縄の認定法人の所得控除制度との選択適用とする。
   (注2) 一定の要件とは、次のイからハまでのいずれにも該当することをいう。
     イ 主として特定産業に該当する事業を営む法人であって、産業集積経済金融活性化特
      別地区の区域内において特定産業を主として営んでいること。
     ロ 産業集積経済金融活性化特別地区で常時使用する地元の従業員の数が5人以上であ
      ること。
     ハ 認定法人の営む事業が公序良俗に反しておらず、かつ、風俗営業に該当しないこと。
   (注3) 特区内従業員数割合とは、認定法人の常時使用する従業員の数のうちに認定法人の
      産業集積経済金融活性化特別地区の区域内の事業所において常時使用する従業員の数
      の占める割合をいう。
   ② 産業集積経済金融活性化特別地区において特定産業用設備等を取得した場合の特別償却
    又は法人税額の特別控除制度の創設金融業務特別地区において金融業務に係る事業用設備
    等を取得した場合の法人税額の特別控除制度を改組し、青色申告書を提出する法人が、平
    成26年4月1日又は産業集積経済金融活性化特別地区の指定の日のいずれか遅い日から平
    成29年3月31日までの間に、同地区の区域内において、一定の機械装置、器具備品並びに
    建物及びその附属設備の取得等をして、産業集積経済金融活性化促進計画に記載された特
    定産業の用に供した場合には、その取得価額の50%(建物及びその附属設備については、
    25%)の特別償却とその取得価額の15%(建物及びその附属設備については、8%)の税
    額控除との選択適用ができる制度とする。ただし、税額控除における控除税額は当期の法
    人税額の20%を上限とし、控除限度超過額は4年間の繰越しができる(特別償却制度は、
    所得税についても同様とする。)。
   (注1) 上記①の制度、特定地域において工業用機械等を取得した場合の特別償却若しくは
      法人税額の特別控除制度又は沖縄の認定法人の所得控除制度との選択適用とする。
   (注2) 対象となる機械装置、器具備品並びに建物及びその附属設備は、一の生産等設備を
      構成するこれらの減価償却資産の取得価額の合計額が1,000万円を超えるもの又はそ
      の減価償却資産のうち機械装置及び器具備品の取得価額の合計額が100万円を超える
      ものとする。
 
 7 その他の租税特別措置等
 〔新設・拡充等〕
 (1) 関西国際空港及び大阪国際空港に係る公共施設等運営権対価について、延払基準の方法に
   より益金算入することができる措置を講ずる。
 (2) 特定の資産の買換えの場合等の課税の特例について、次の見直しを行った上、長期所有の
   土地、建物等から国内にある土地、建物、機械装置等への買換え以外の措置の適用期限を3
   年延長する(所得税についても同様とする。)。
   ① 都市再生特別措置法の改正を前提に、都市機能誘導区域(仮称)以外の地域内にある土
    地等、建物等又は構築物から都市機能誘導区域内にある土地等、建物等、構築物又は機械
    装置で、認定区域整備事業計画(仮称)に記載された誘導施設(仮称)において行われる
    事業の用に供されるものへの買換えを適用対象に加える。
   ② 既成市街地等の内から外への買換えについて、農林業用以外の買換資産の対象区域に都
    市開発区域を加える。
 
 〔延 長〕
 (1) 国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除
   制度の適用期限を2年延長する。
 (2) 雇用者の数が増加した場合の税額控除制度(雇用促進税制)の適用期限を2年延長する
   (所得税についても同様とする。)。
 (3) 公害防止用設備の特別償却制度の適用期限を2年延長する(所得税についても同様とす
   る。)。
 (4) 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例の適用期限を撤廃する。
 (5) 中小企業者等以外の法人の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置の適用期限を2年
   延長する。
 (6) 損害保険会社の受取配当等の益金不算入等の特例の適用期限を5年延長する。
 (7) 退職年金等積立金に対する法人税の課税の停止措置の適用期限を3年延長する。
 
 〔廃止・縮減等〕
 (1) エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(環境関
   連投資促進税制)について、対象資産から熱電併給型動力発生装置等を除外する(所得税に
   ついても同様とする。)。
 (2) 法人税額から控除される特別控除額の特例について、当期の法人税額から控除できる税額
   控除可能額の合計額を当期の法人税額の 90%に引き下げる(所得税についても同様とする。)。
 (3) 短期の土地譲渡益に対する追加課税制度について、適用除外措置の範囲から独立行政法人
   環境再生保全機構に対する土地等の譲渡を除外した上、適用停止措置の期限を平成29年3月
   31日まで延長する。
 
 8 その他
 (1) 次の事業について、収益事業から除外する措置を廃止する。
   ① 公益社団法人等が行う児童福祉施設の児童の給食用の輸入脱脂粉乳の販売業
   ② 小規模企業者等設備導入資金助成法の貸与機関が設備貸与事業又は設備資金貸付事業と
    して行う設備の販売業、金銭貸付業及び物品貸付業
   ③ 独立行政法人中小企業基盤整備機構が工業再配置等業務及び産炭地域経過業務として行
    う不動産販売業及び不動産貸付業
   ④ 食品流通構造改善促進機構が食品流通構造改善促進法の認定構造改善事業として行う不
    動産販売業及び不動産貸付業
   ⑤ 公益社団法人等が独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構の委託を受けて行う年
    金福祉施設等の運営又は管理に係る医療保健業
 (2) 企業再生税制について、次の措置を講ずる。
    株式会社地域経済活性化支援機構がその準則に従って策定した債務処理に関する計画に従
   って債権者間の調整等のみを行い、2以上の金融機関等により債務免除が行われた場合につ
   いても企業再生税制の適用対象とする。
 (3) 子ども・子育て支援法等の施行に伴い、次の措置を講ずる(所得税についても同様とす
   る。)。
   ① 幼保連携型認定こども園を設置する学校法人又は社会福祉法人に対する寄附金について、
    幼稚園又は保育所に対する寄附金と同様に、指定寄附金及び特定公益増進法人に対する寄
    附金の対象とする。
   ② 幼保連携型認定こども園における教育又は保育に対する助成を目的とする特定公益信託
    について、認定特定公益信託となる認定の対象とする。
 (4) 特定公益増進法人の範囲に、博物館、美術館、植物園、動物園又は水族館の設置及び管理
   の業務を行う地方独立行政法人を加える(所得税についても同様とする。)。
 (5) 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度について、対象となる国庫補
   助金等の範囲に独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法に基づく助成金で水素
   利用技術研究開発事業(仮称)等に係るものを加える(所得税についても同様とする。)。
 (6) 会社法の改正を前提に、次の整備を行う。
   ① みなし配当の額が生ずる事由となる自己の株式の取得について、その範囲から株式の併
    合に反対する株主からのその併合により端数となる株式の買取請求に基づく取得を除くこ
    ととする(所得税についても同様とする)。
   ② 損金の額に算入される役員に対する利益連動給与の決定の手続に係る要件について、監
    査等委員会設置会社においては、取締役会の決議において監査委員の過半数がその決議に
    賛成していることとする。
   ③ 使用人兼務役員とされない役員の範囲に監査等委員会の委員である取締役を加える。
 
 四 消費課税
 
 1 車体課税の見直し
 (1) いわゆる「自動車重量税のエコカー減税」について、平成26年4月1日以後に新車に係る
   新規検査を受けた検査自動車のうち、当該新規検査の際に納付すべき自動車重量税を免除さ
   れた検査自動車については、新規検査後に受ける最初の継続検査等の際に納付すべき自動車
   重量税を免除する。
    また、平成26年4月1日以後に継続検査等を受ける自家用の検査自動車のうち、新車新規
   登録から13年を経過したもの(新車新規登録から18年を経過したものを除く。)に係る自動
   車重要税の税率について見直しを行う。
 
 2 復興支援のための税制上の措置
 (1) 被災自動車等の使用者であった者が取得する自動車に係る自動車重量税の免税措置の適用
   期限を2年延長する。
    また、被災自動車等に係る自動車重量税の還付措置の適用期限を2年延長する。
 
 3 租税特別措置等
 〔新設〕
 (1) 石油石炭税課税済みの原油を精製する過程等で発生する非製品ガスについて、平成26年4
   月1日から平成29年3月31日までの間の措置として、同税の還付制度を創設する。
 〔延長・拡充等〕
 (1) 特定の用途に供する石炭に係る石油石炭税の軽減措置の適用期限を3年延長する。
    また、特定の石油製品を特定の運送又は農林漁業の用に供した場合の石油石炭税の還付措
   置の適用期限を3年延長する。
 (2) 輸入・国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の免税・還付措置の適用期限を3年延長す
   る。
 (3) 入国者が輸入するウイスキー等に係る酒税の税率の特例措置について、ウイスキー及びブ
   ランデーに係る特例税率を1kLにつき600,000円(現行500,000円)に引き上げた上、適用期
   限を1年延長する。
 (4) 入国者が輸入する紙巻たばこのたばこ税の税率の特例措置について、特例税率を1,000本
   につき11,000円(現行10,500円)に引き上げた上、適用期限を1年延長する。
 
 4 その他
 (1) 消費税の簡易課税制度のみなし仕入率について、次の見直しを行う。
   ① 金融業及び保険業を第5種事業とし、そのみなし仕入率を50%(現行60%)とする。
   ② 不動産業を第6種事業とし、そのみなし仕入率を40%(現行50%)とする。
   ③ その他所要の措置を講ずる。
  (注)上記の改正は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間について適用する。
 (2) 外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)について、次の見直しを行う。
   ① 次の方法で販売することを前提に、免税販売の対象物品に消耗品(その旅行者に対して、
    同一店舗で1日に販売する50万円までの消耗品に限る。)を追加する。
    イ その旅行者に対して、同一店舗で1日に販売する消耗品の額が5千円超であること
    ロ 国土交通大臣及び経済産業大臣が財務大臣と協議して定める方法により包装すること
    ハ 購入後30日以内に輸出することを、免税購入する旅行者が誓約すること
   ② その旅行者に対して、同一店舗で1日に販売する見直し前の免税対象物品(消耗品以外
    の物品)の額が100万円を超える場合には、輸出物品販売場を経営する事業者が保存しな
    ければならない書類に、その旅行者の旅券等の写しを追加する。
   ③ 購入記録票等の様式の弾力化及び手続きの簡素化を行う。
   ④ その他所要の措置を講ずる。
  (注)上記の改正は、平成26年10月1日以後に行われる課税資産の譲渡等について適用する。
 (3) 消費税の課税売上割合の計算上、金銭債権の譲渡については、その譲渡に係る対価の額の
   5%相当額を資産の譲渡等の対価の額に算入することとする。
  (注)上記の改正は、平成26年4月1日以後に行われる金銭債権の譲渡について適用する。
 (4) 電気事業法の改正に伴い、広域的運営推進機関を消費税法別表第三に追加する。
 (5) マンションの建替えの円滑化等に関する法律の改正を前提に、マンション敷地売却組合
   (仮称)を、消費税法別表第三に掲げる法人とみなす。
 (6) 子ども・子育て支援法の施行に伴い、消費税が非課税とされる社会福祉事業等の範囲に、
   同法に基づく施設型給付費、特例施設型給付費、地域型給付費及び特例地域型給付費の支給
   に係る事業として行われる資産の譲渡等を加える。
 (7) 難病の患者に対する医療等に関する法律(仮称)の制定及び児童福祉法の改正を前提に、
   消費税が非課税とされる医療等の範囲に、難病の患者に対する医療等に関する法律(仮称)
   及び改正後の児童福祉法の規定に基づく医療費の支給に係る医療等を加える。
 (8) 予防接種法の改正を前提に、新たなワクチン追加後の同法の健康被害救済給付に係る医療
   について、引き続き消費税を非課税とする。
 (9) 母子及び寡婦福祉法の改正を前提に、改正後の母子家庭日常生活支援事業等について、引
   き続き消費税を非課税とする。
 (10) 資信託及び投資法人に関する法律の改正により金融商品取引法の有価証券に追加される新
   投資口予約権の譲渡について、他の有価証券の譲渡と同様に消費税を非課税とする。
 
 【参考】
  軽減税率
   消費税の軽減税率制度については、「社会保障と税の一体改革」の原点に立って必要な財源
  を確保しつつ、関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入する。
   このため、今後、引き続き、与党税制協議会において、これまでの軽減税率をめぐる議論の
  経緯及び成果を十分に踏まえ、社会保障を含む財政上の課題とあわせ、対象品目の選定、区分
  経理等のための制度整備、具体的な安定財源の手当、国民の理解を得るためのプロセス等、軽
  減税率制度の導入に係る詳細な内容について検討し、平成26年12月までに結論を得て、与党税
  制改正大綱を決定する。

 五 国際課税
 
 1 国際課税原則の見直し(総合主義から帰属主義への変更)
 (1) 外国法人の国際課税原則の見直し
    外国法人に対する課税原則について、いわゆる「総合主義」に基づく従来の国内法を、
   2010年改訂後のOECDモデル租税条約に沿った「帰属主義」に見直す。
 (2) 恒久的施設に帰せられる所得の位置づけ
    外国法人がわが国に有する恒久的施設(Permanent Establishment)(以下「PE」とい
   う。)に帰せられる所得(以下「PE帰属所得」という。)を、従来の国内事業所得に代え
   て国内源泉所得の一つとして位置づける。
 (3) PE帰属所得の算定
   ① PE帰属所得
     PE帰属所得は、外国法人のPEが本店等から分離・独立した企業であると擬制した場
    合に当該PEに帰せられるべき所得とする。
   ② 内部取引
     PE帰属所得の算定においては、外国法人のPEと本店等との間の内部取引について、
    移転価格税制と同様に、独立企業間価格に基づく損益を認識する。
   ③ PEへの資本の配賦及びPEの支払利子控除制限
     外国法人のPEが本店等から分離・独立した企業であると擬制した場合に帰せられるべ
    き資本(以下「PE帰属資本」という。)をPEに配賦する。
     また、外国法人のPEの自己資本相当額がPE帰属資本の額に満たない場合には、外国
    法人のPEにおける支払利子総額(外国法人のPEから本店等への内部支払利子及び本店
    等から外国法人のPEに費用配賦された利子を含む。)のうち、その満たない部分に対応
    する金額について、PE帰属所得の計算上、損金の額に算入しない。
 (4) 外国法人に係る外国税額控除制度の創設
    外国法人のPEのための外国税額控除制度を創設する。
 (5) 内国法人の外国税額控除
    内国法人が国外に有するPEに帰せられる所得(以下「国外PE帰属所得」という。)を
   国外源泉所得の一つとして定義し、内国法人の外国税額控除に関して国外PE帰属所得を算
   定する際には、上記(3)に準じて内部取引等を勘案する。
 (6) その他
   ① 個人課税
     非居住者(個人)課税については、原則として、帰属主義に変更する外国法人に準じた
    取扱いとする。また、居住者(個人)課税についても、原則として、帰属主義に変更する
    内国法人に準じた取扱いとする。
 (7) その他所要の措置を講ずる。
 (注)上記の改正は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税及び平成29年分以後
   の所得税について適用する。
 
 2 その他
 (1) 国外関連者との取引に係る課税の特例(いわゆる移転価格税制)について、その対象とな
   る非関連者を通じた取引の範囲に役務提供取引等を加える。

 六 納税環境の整備
 
 1 猶予制度の見直し
 (1) 換価の猶予の特例(申請)の創設
   ① 税務署長は、滞納者につき国税を一時に納付することにより事業の継続又は生活の維持
    を困難にするおそれがあると認められる場合で、その者が納税について誠実な意思を有す
    ると認められるときは、その国税の納期限から6月以内にされた申請に基づき、1年以内
    の期間を限り、換価の猶予をすることができることとする。ただし、申請に係る国税以外
    の国税(猶予の申請中の国税及び一定の猶予中の国税を除く。)について滞納がある場合
    は、この限りでないこととする。
   ② 上記の換価の猶予をする場合には、猶予に係る国税(納付を困難とする金額として、滞
    納国税の額から納付可能な額を控除した一定の額を限度とする。)の納付については、税
    務署長においてやむを得ない理由があると認める場合を除き、猶予期間内において、毎月
    納付の方法により、猶予に係る金額をその者の財産の状況及び納付能力からみて合理的か
    つ妥当なものに分割して納付させなければならないこととする。
  (注) この改正は、平成27年4月1日以後に納期限が到来する国税について適用する。
 (2) 納税の猶予及び換価の猶予(職権)の見直し
   ① 担保の徴取基準の見直し
     要担保徴取額の最低限度額を100万円(現行50万円)に引き上げ、猶予期間が3月以内
    の場合には担保を不要とする。
   (注) 所得税及び相続税の延納の担保並びに移転価格税制に係る納税の猶予の担保について
     も同様とする。
   ② 納付方法の見直し
     納税の猶予をする場合には、猶予期間内において、猶予に係る金額をその者の財産の状
    況及び納付能力からみて合理的かつ妥当なものに分割して納付する方法を定めることがで
    きることとする。
     換価の猶予をする場合には 上記(1)①と同様とする。
   ③ 猶予の不許可事由の整備
     税務署長は、納税の猶予(猶予期間の延長を含む。)の申請があった場合において、次
    のいずれかに該当するときは、猶予を認めないことができることとする。
    イ 滞納者の財産につき強制換価手続が開始された場合等一定の場合において、その者が
     その猶予に係る国税を猶予期間内に完納することができないと認められるとき
    ロ 申請に係る事項についての職員の質問に対して答弁せず、又は検査を拒み、妨げ、若
     しくは忌避したとき
    ハ 不当な目的で猶予の申請がなされたとき、その他申請が誠実にされたものでないとき
   ④ 猶予の取消事由の整備
     猶予の取消し(猶予期間の短縮を含む。)の事由について、次の場合を対象に加える。
    イ 上記(2)により定めた分割納付の方法により国税を納付しないとき(税務署長がやむ
     を得ない理由があると認めるときを除く。)
    ロ 新たに猶予に係る国税以外の国税を滞納したとき(税務署長がやむを得ない理由があ
     ると認めるときを除く。)
    ハ 偽りその他不正な手段により猶予の申請がされ、その申請に基づき猶予をしたことが
     判明したとき
  (注) 上記の改正は、平成27年4月1日以後に行われる納税の猶予の申請又は同日以後に行わ
    れる換価の猶予に係る国税について適用する。
 
 2 税理士制度の見直し
   税理士制度について、申告納税制度の円滑かつ適正な運営に資するよう、税理士に対する信
  頼と納税者利便の向上を図る観点から、次の見直しを行う。
 (1) 租税教育への取組の推進
    税理士会及び日本税理士会連合会の会則に記載すべき事項について、租税に関する教育そ
   の他知識の普及及び啓発活動に関する規定を、対象に加える。
 (2) 調査の事前通知の規定の整備
    税務官公署の当該職員は、租税の課税標準等を記載した申告書を提出した者について調査
   する場合において、その租税に関し税理士法30条の規定による書面を提出している税理士が
   あるときは、国税通則法等の定めるところにより、当該税理士に対し調査の事前通知をしな
   ければならないこととする。
    この改正は、平成26年7月1日以後に行う事前通知について適用する。
 (3) 報酬のある公職に就いた場合の税理士業務の停止規定等の見直し報酬のある公職に就いた
   場合の税理士業務の停止等について、兼業禁止規定がない一定の公職に就いた者を、その対
   象から除外し、併せて、非税理士に対する名義貸しの禁止規定及びその違反に対する罰則を
   設ける。
 (4) 税理士試験の受験資格要件の緩和
    一定の事務又は業務に一定期間従事したことにより認められる受験資格について、その従
   事期間を2年以上(現行3年以上)とする。
 (5) 補助税理士制度の見直し
    補助税理士について、所属する他の税理士又は税理士法人の承諾を得て、他人の求めに応
   じ自ら税理士業務の委嘱を受ける場合の手続を設けることとし、その業務範囲の見直しに伴
   い、その名称の変更、登録事項及び税務書類等への付記の見直し等所要の措置を講ずる。
 (6) 公認会計士に係る資格付与の見直し
    税理士の資格について、現行税理士法3条1項及び2項とは別に、公認会計士は、公認会
   計士法16条に規定する実務補習団体等が実施する研修のうち、一定の税法に関する研修を受
   講することとする旨の規定を設けることとする。
  (注1) 上記の税法に関する研修は、次のとおりとする。
     ① 実務補習団体等が実施する税法に関する研修を国税審議会が指定する。
     ② 指定する研修は、税法に属する試験科目の合格者と同程度の学識を習得することが
      できる研修とする。
  (注2) 上記の改正は、平成29年4月1日以後に公認会計士試験に合格した者について適用す
     る。
 (7) 税理士に係る懲戒処分の適正化
    税理士に係る懲戒処分のうち、税理士業務の停止について、その期間を2年以内(現行1
   年以内)とする。
 (8) 懲戒免職等となった公務員等に係る税理士への登録拒否事由等の見直し懲戒免職等となっ
   た公務員等が、欠格期間を経過した後に税理士の登録申請をした場合において、登録を拒否
   できることとする等所要の措置を講ずる。
    この改正は、平成26年4月1日以後の登録申請について適用する。
 (9) 事務所設置の適正化
    税理士の登録事務について、日本税理士会連合会及びその登録申請等に係る税理士会は、
   申請者等に対し、事務所の所在地等の登録事項(変更登録を含む。)に関し、必要に応じ、
   指導又は助言を行うことができることとする。
 (10) 税理士証票の定期的交換
    税理士証票について、税理士は、日本税理士会連合会及びその所属する税理士会の会則の
   定めるところにより、定期的にその交換を受けなければならないこととする。
 (11) 電子申告等に係る税理士業務の明確化
    電子申告等の電子情報処理組織を使用して行う業務について、税理士業務に含まれること
   を明確化する。
 (12) 会費滞納者に対する処分の明確化
    税理士会の会費を滞納する者に対して、懲戒処分をすることができる旨を明確化する。
 (13) その他所要の措置を講ずる。
 (注) 上記の改正は、(2)、(6)、(8)及び(11)を除き、平成27年4月1日から適用する。
 
 3 国税不服申立制度の見直し
   国税に関する不服申立て手続について、行政不服審査法の見直しに伴い、次に掲げる所要の
  規定の整備を行う。
 (1) 処分に不服がある者は、直接審査請求ができることとする(現行「異議申立て」と「審査
   請求」の2段階の不服申立前置)。
   現行の審査請求に前置する「異議申立て」は「再調査の請求(仮称)」に改める。
 (2) 不服申立期間を処分があったことを知った日の翌日から3月以内(現行2月以内)に延長
   する。
 (3) 審査請求人、参加人及び処分庁は、担当審判官の職権収集資料を含め物件の閲覧及び謄写
   を求めることができることとする(現行 審査請求人及び参加人の処分庁提出物件の閲覧の
   み)。
 (4) 審査請求人の処分庁に対する質問、審理手続の計画的遂行等の手続規定の整備を行う。
 (5) 国税庁長官の法令解釈と異なる解釈等による裁決をするときは、国税不服審判所長は、あ
   らかじめその意見を国税庁長官に通知しなければならないこととし、国税庁長官は、国税不
   服審判所長の意見を相当と認める一定の場合を除き、国税不服審判所長と併せて国税審議会
   に諮問することとする。国税不服審判所長は、その議決に基づいて裁決しなければならない
   こととする。
 (6) その他所要の措置を講ずる。
 (注) 上記の改正は、改正行政不服審査法の施行の日から適用する。
 
 4 その他
 (1) 公売・換価
   ① 公売財産の見積価額について、税務署長は、近傍類似又は同種の財産の取引価格、公売
    財産から生ずべき収益、公売財産の原価その他の公売財産の価格形成上の事情を適切に勘
    案して決定しなければならないこととし、決定をする場合において、差押財産を公売する
    ためのものであることを考慮しなければならないこととする。
     この改正は、平成26年4月1日以後に行う見積価額の決定について適用する。
   ② 公売又は随意契約による売却について、差押財産を、相互の利用上、他の差押財産(滞
    納者を異にするものを含む。)と一括して同一の者に買い受けさせることが相当と認める
    ときは、これらの差押財産を一括して売却できることとし、差押財産が一括して売却され
    た場合において、各差押財産ごとに売却代金の額を定める必要があるときは、その額は、
    売却代金の総額を各差押財産の見積価額に応じて按分して得た額とする(各差押財産ごと
    の滞納処分費の負担についても同様とする。)。
     この改正は、平成26年4月1日以後に行う公売公告に係る公売又は見積価額の決定に係
    る随意契約による売却について適用する。
   ③ 差押財産について、3回公売に付しても買受けの申込みがなかった場合において、差押
    財産の形状、用途、法令による利用の規制その他の事情を考慮して、更に換価に付しても
    なお買受人がないと認められるときは、その差押えを解除することができることとする。
   ④ 所轄税務署長は、差し押さえた財産を換価するために必要があると認めるときは、国税
    局長又は他の税務署長に滞納処分の引継ぎをすることができることとする。
 (2) 税務代理人がある場合の調査の事前通知について、納税者本人の同意がある場合として税
   理士法30条の規定による書面にその旨の記載がある場合には、当該納税者への通知に代えて、
   税務代理人への通知ができることとする。
    この改正は、平成26年7月1日以後に行う事前通知について適用する。

      以上

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