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返済猶予法(中小企業金融円滑法)の要点と対策

 

昨年12月、資金繰りの悪化が深刻な中小企業に対して、金融機関に出来る限り

前向きに返済条件の見直し等に努めることを定めた「中小企業金融円滑化法」が

施行されました(平成23年3月31日までの措置)。

 そこで今月は表題にもあるように、中小企業金融円滑化法について特集を組んで、

その活用や金融機関対策も含めた融資情報を御案内致します。

 

1.全ての貸出が返済猶予される訳ではない
 中小企業金融円滑化法は、金融機関に対して、中小企業等から返済の負担軽減の

申込があった時に、親身に相談に乗り、その会社の事業改善や再生の可能性、

経営力などを総合的に審査して、返済計画策定の助言や条件変更後のモニタリングを

求めたものです。

 この法律によって、すぐにでも月々の返済を待ってくれるのでは?との期待を

持った方も、誤解をしていけないのは、すべての貸出に対して、一律に返済猶予等を

定めた法律ではないということです。

 法律施行に伴い改訂された「監督指針」「金融検査マニュアル」によれば、あくまで、

金融機関と今後の「経営改善計画」「返済計画」を検討した上で、その実現に必要な

貸付条件の変更等を行うことを求めています。

*貸付条件の変更等には、元本返済以外にも、例えば返済期間の延長、旧債の借換え、

 債務の株式化などの債務の弁済負担の軽減のための全ての措置が含まれます。

 
 また経営改善計画がなくても、1年以内に計画を策定できる見込みであれば、先に

貸出条件の変更等を行った上で、金融機関と一緒に計画作成の検討を行うとされています。
 金融機関が、条件変更等に応じられない場合には、中小企業が納得出来て、次の改善行動に

繋がる断り方をしなければならないとされています。つまり門前払い的な断り方を

しないようにという意味です。

 金融機関に内部体制の整備、報告義務を課すとともに、罰則の適用によって柔軟な

対応を強く求める内容になっています。

 

2.中小企業は積極的に情報開示や財務報告をすること
 当法律は金融機関に「経営指導、経営相談をすること」を求めていますが、これは、

資金繰りがどうすれば円滑になるかを助言しなさいという意味であり、計画作成後は、

金融機関がモニタリングによって計画の進捗状況を確認していくことになります。

 そのため、借り手である中小企業も、自社の経営状態等をしっかりと把握して、

経営者が自分で金融機関に自社の現状、将来の見通し、財務状態を正しく説明することが

必要になってきます。

 企業が金融機関に借入金の貸付条件の変更等を求める時には、実現可能性の高い

「経営改善計画」「経営再建計画」を策定していれば、条件変更等を行っても、

「不良債権とみなさない」とされていますが、計画がなくても、1年以内に計画を

策定する見込みがあれば、不良債権とはみなさないとしています。

 つまり、「経営改善計画」が無くても、最長1年の間に実現性の高い「経営改善計画」を

作れば良いことになります。但し、この適用を受けるには、金融機関が下記のような

経営改善の具体的根拠を確認できること、更には経営者に経営改善計画を作成し、

それを実現する意思があることが前提となっています。
(具体的根拠の例)

①資産の売却によって財務内容を健全化することが出来る

②まだまだ経費や役員報酬を削減できる。

③新商品開発や販路の拡大によって売上アップが期待できる

④その会社の技術力や販売力、成長性から時間をかければ改善可能と判断出来る

 

3.経営改善計画を確実に実行すること
 金融機関に条件変更等を申し出て返済猶予等が始まってから1年以内の間に、

経営改善計画を作成・実行することになりますが、経営改善計画を計画倒れに

しないために、前年の決算において、出来るだけ会社の贅肉をそぎ落とした

スリムな決算を行うことが望ましいと言えます。

 これは、経営改善計画がスタートした後になって、赤字が顕在化しないように

するためです。

(具体例)

(1)回収見込みのない長期売掛金を貸倒処理する

(2)販売見込みのない不良在庫等を処分する

(3)陳腐化設備、含み損のある固定資産等を処分する
 仮に、前期の決算で贅肉をそぎ落としたことで、債務超過になったとしても、

平成20年11月の「金融検査マニュアル別冊」改訂によって、経営改善計画の

実行について「5年から10年の間に『要注意先』『正常先』になれば良い」

と緩和されていますので、この期間内に経営改善計画を実行して、債務者区分の

格付けアップを目指します。

 返済猶予を含む貸出条件の変更を受けるために求められている「実現可能性の

高い経営改善計画」を作成・実行することは、決して容易なことではありません。

 まず、スリムな決算書をベースにして、自社の強み、例えば営業力、技術力、

経営者の財産、資質などの要因に基づいて実現可能な計画を作り上げていきます。

「金融機関に見せるため」という発想ではなく、「会社の未来のために本当の

経営改善に挑戦する」という意志で作成することが重要です。

 

 当事務所では、上記の経営改善計画の策定等について、随時、面談・ご相談を

承っております。お気軽にご相談下さいませ。

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