代表ブログ

自社株(非上場株式)を発行会社に譲渡した場合の課税関係について

その他,代表ブログ,資金調達 | 2011年10月7日 金曜日 16:10

【質問】  社長一族でY社(非上場会社)の発行済株式(すべて普通株)の51%を保有しており、社長自身はそのうち30%を保有していた。社長自身にある程度まとまった金銭が必要になったので、社長保有の自社株(Y社株式)のうち発行済株式数の10%相当数をY社に自己株式として買い取らせて資金調達をすることになった。この場合、社長とその同族会社の株主について、社長とA社との間の自社株の売買取引によって発生する課税関係について説明して欲しい。 【回答】 1.社長に対する課税(みなし配当所得・株式譲渡所得) (1)みなし配当所得課税  自己株式の譲渡対価の額のうち、譲渡した株式に対応する資本等の金額を控除した残額は「利益の配当」とみなされ、所得税の課税対象となります。 (2)株式譲渡所得課税 自己株式の譲渡対価のうち、(1)の利益の配当とみなされた金額を控除した残額は「株式等に係る譲渡所得等」の収入金額とみなされ、譲渡所得課税(分離課税)の対象となります。  ただし、その譲渡対価の額が譲渡した自己株式の時価の2分の1未満であるときは、譲渡所得課税上、時価で譲渡したものとみなして収入金額を算定します。 具体的には、譲渡した自己株式の時価相当額から実際の譲渡対価の額に基づき計算したみなし配当金額を控除した残額を自己株式の譲渡収入金額として譲渡所得金額を算定します。 2.Y社の他の株主に対する贈与税の課税 株式の譲渡が低額譲渡に当たる場合には、それによってY社の他の株主の有する株式の1株当たりの価額が売買取引前よりも増価することになります。 株式の価額(相続税評価額)が増価する場合には、株式の譲渡人から各株主に対して各株主の持株数に応じた経済的利益の贈与があったものとして、贈与税の課税対象となることがあります。 【関連情報】 《法令等》 所得税法25条1項4号 所得税法59条1項 相続税法9条 租税特別措置法37条の10第1項 租税特別措置法37条の10第3項4号 所得税法施行令169条 所得税基本通達23〜35共-9 所得税基本通達59-6 相続税法基本通達9-2 租税特別措置法通達37の10-27 【解説】 1.自己株式の譲渡による所得の課税 (1)通常の場合  個人株主がその保有する株式を発行会社に対して売買により譲渡する取引(自己株式の譲渡)は、一般的には「株式の相対売買」に当たりますので、その譲渡益は「株式等に係る譲渡所得等」として所得税の課税(分離課税)の対象となります。  ただし、平成13年度税制改正により、個人株主が自己株式の譲渡により収受した譲渡対価のうち、譲渡した株式に対応する資本等の金額を超える部分の金額は、「利益の配当」とみなされ、配当所得の課税対象(みなし配当所得。総合課税)に改められました(所法25(1)四)。したがって、譲渡した株式の譲渡対価のうち資本等の金額に相当する部分の金額以下の部分が、株式等に係る譲渡所得金額等の譲渡収入金額になります(措法37の10(3)四)。 (2)自己株式の譲渡が低額譲渡に該当する場合 イ みなし譲渡所得課税の仕組み   譲渡所得課税は、当事者が取り決めた譲渡対価の額が譲渡収入金額となって課税されることが原則とされています(所法36(1) (2))。   しかし、法人に対して、時価の2分の1未満の譲渡対価の額で資産の譲渡をすると、時価で譲渡したものとみなして譲渡所得の課税が行われます(いわゆる「みなし譲渡所得課税」。所法59(1))。   なお、この低額譲渡によるみなし譲渡所得課税の適用の基準となる「時価」の判定基準は、所得税基本通達23〜35共-9に定めてあります。   同通達によれば、取引相場のない株式については、(1)売買実例があるものは最近において売買の行われたもののうち適正と認められる価額又は(2)類似会社の株式の価額のあるものは、類似会社の株式の価額に比準した価額、さらに、(3)これらに該当しないものについては、その株式等の発行法人の1株(1口)当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額によることとされています。 この場合の「1株(1口)当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」については、所得税基本通達23〜35共-9を補完する具体的な取扱通達(所得税基本通達59-6)が定めてあり、それによれば「その時の価額」(時価)とは、一定の条件によることを前提として、財産評価基本通達178から189-7までの規定の例により算定することとして取り扱われています。  ロ みなし配当課税との関係 自己株式の低額譲渡があった場合には、譲渡した株式の実際の譲渡対価のうち資本金等の額に対応する部分を超える部分について、利益の配当とみなされ配当所得の課税対象になります。  したがって、自己株式の低額譲渡に該当し、かつ、その譲渡対価の額が資本金等の額に対応する額を超える場合には、その譲渡価額(時価)相当額は、(1)みなし譲渡収入金額(時価-実際の譲渡対価の額)、(2)みなし配当金額(実際の譲渡対価-資本等の額に対応する額)、(3)実際の譲渡収入金額(資本等の額に相当する金額)からなることになります。 2.贈与税について   株式発行法人が客観的時価により自己株式を取得したものである場合には、相続税法9条に定める経済的利益の贈与という事実は発生せず、したがって、他の株主に対する贈与税の課税関係が生じることはありません。 同族会社が個人から財産の低額譲渡を受けたため、その会社の発行済株式の1株当たりの価額(相続税評価額)について、株式の低額譲受前よりも譲受後の方が増価する場合には、その差額については財産の譲渡人から同族会社の株主に対して経済的利益の贈与があったものとみなされ、贈与税の課税対象になることがあります(相法9)。

【資金繰り】 円滑化法に基づく住宅ローンの返済猶予

代表ブログ,資金調達 | 2011年7月12日 火曜日 18:07


 先日、「金融円滑化法」に基づき返済猶予を申請しましたが、住宅ローンについても同法により返済猶予を申請できると聞きました。申請にあたっての注意点など、詳しい内容を教えてください。


 金融円滑化法は、平成21年12月に、中小企業の事業活動の円滑な遂行および住宅ローン借入者である個人の生活の安定により国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的に施行されました。当初は平成23年3月末までの時限立法でしたが、景気回復・雇用環境改善の遅れ、また今回の東日本大震災の影響もあり、期限が1年間延長されることになりました。

 同法第2条に住宅ローン借入者についての定義が規定され、中小企業だけではなく、個人の住宅ローンについても返済猶予、返済条件変更等の申し込みが可能です。また、今年5月末に金融庁HPで発表された「中小企業金融円滑化法に基づく貸付条件の変更等の状況について」では、その申込件数は、累計で中小企業が約176万件、住宅資金借入者が約16万件となっています。審査中・申込者からの取り下げを除く実行率(実行+謝絶に対する実行割合)は、それぞれ9割以上と、かなり柔軟に金融機関が対応しています。

 さて、中小企業の経営者が住宅ローンを申し込む場合は、金融機関はその企業の内容について将来性や安定性を吟味しますが、特に企業業績が下降しており、人件費等経費削減をしなければならないときは、貸し手はその経営者のキャッシュフローに注目します。経営者は株主であることが多いので、当然会社における金融機関からの借入金の連帯保証人です。一般の中小企業において会社と経営者個人の財産は実質同一体であるとも言えます。つまり、会社の業績が悪化すれば個人の財産も減少するのが通常であるため、経営者は自身の財産を会社に投入してでも事業を継続しようとします。この点が経営者の住宅ローンを検討する際の特徴と言えます。

 金融円滑化法に基づき返済条件変更を申し出た場合、会社は1年以内に経営改善計画書を提出する必要がありますが、会社の業績が悪化してきたため、その経営改善計画策定の際に、役員報酬を削減する必要も出てくると思います。

 しかし、一方で従来の役員報酬を基準に経営者が住宅ローンの返済額を設定していることが多いため、住宅ローンの返済に支障を来すケースが発生すると考えられます。このように企業を再生するために経営者自身がその痛みを覚悟する場合においては、住宅ローンについても金融円滑化法により条件変更を申請し、会社・個人一体となった改善計画を提出するのが望ましいと思われます。

 すなわち、会社と同様に住宅ローンについても返済条件の変更を申し込み、早急に会社・事業の経営改善を図ったうえで、将来的に住宅ローンの返済条件も条件変更前の返済額に戻すというような内容の計画を各金融機関に提出することになるのです。会社における経営改善の王道は(1)遊休資産等の売却(2)経費削減(3)新商品の開発(4)販路拡大であり、個人については(1)不要不急の支出の削減(2)新たな現金収入の拡大(3)遊休資産(不動産・有価証券等)の売却です。これらを検討し、会社と経営者自身のそれぞれの計画を策定する必要があります。

 よくある例ですが、経営者が会社の業績が悪化したために役員報酬を削減せざるを得ず、その結果カードローン等、金利の高い借り入れを行うことによって住宅ローンの返済に充当し、またそのカードローン返済のために他の借り入れを行うというケースがあります。住宅ローンについても金融円滑化法により返済条件の変更に応じてもらい、再度、経営する企業の借り入れと経営者自身の住宅ローンについて無理のない返済計画を立てることをお勧めします。

【資金調達】 「挑戦支援資本強化特例制度」とは ?

代表ブログ,資金調達 | 2011年1月31日 月曜日 10:01


 日本政策金融公庫に、中小企業に対して無担保無保証人の資本性資金(資本性劣後ローン)を供給する「挑戦支援資本強化特例制度」というものがあると聞きました。詳細を教えてください。


 「挑戦支援資本強化特例制度」とは、政府系金融機関の日本政策金融公庫(中小企業事業)が新規事業や企業再建などに取り組む中小企業に対して、資本性資金(資本性劣後ローン)を供給する制度です。

 同資金の主な特徴は、(1)企業の財務体質が強化されると同時に民間金融機関からの借入が受けやすくなること、(2)借入期間中の資金繰り負担が軽いこと、(3)企業の利益状況に応じて低利益のときは低金利を適用することの3点です。

 特徴(1)は、借り入れた資金が金融検査上、自己資本とみなされ、法的倒産時には他の金融機関の債務に比べ返済順位が劣後するため、民間金融機関からの追加借入が受けやすくなるものです。特徴(2)は、返済条件が15年間金利支払いのみで元金は期限到来時の一括返済ですので、期間中の返済負担は軽くなります。特徴(3)は、借入後1年ごとに直近の決算状況に応じて適用利率を見直す仕組みで、3区分の利率の中で利益が少ないほど低利率を適用するものです。さらに、無担保・無保証人と借入手続きの負担も軽くなっています。

 借入を受けるためには、取組み事項、収支計画、資金繰り計画等を盛り込んだ事業計画書を作成すること、日本公庫の新企業育成貸付制度又は企業再生貸付制度の対象として一定の要件に該当することが必要になります。

 日本公庫では、事業計画の実現可能性と財務状況、資金繰り、収益力等からみた償還可能性について金融審査を行い、融資可否を判断します。

 借入契約時には、四半期ごとの業況報告、真実の情報開示等の表明保証、業績悪化時の経営指導の受入れなどを含む特約を締結し、日本公庫とともに事業計画の実現を目指していきます。

 本制度は平成20年4月から始まり、20年度は52社、49億円、21年度は204社、206億円と急激に利用が伸びており、22年度(4〜10月)も197社、133億円と利用社数は前年同期比50%増となっています。

 利用した企業からは、「新規事業への取組みにあたって、当面の元金返済が不要なので事業に集中できる」、「大規模設備投資の際の担保不足問題を解消できた上に資本増強効果があった」、「実質的に債務超過から脱却でき、メーン銀行からの追加借入を受けられ事業再建に取り組みやすくなった」などの感想が寄せられています。

  なお、借入申込みの詳細などについては、各都道府県にある日本政策金融公庫の支店(中小企業事業)に相談してみてください。

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