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《税法話題の裁決》前期の役員退職金の損金算入を否定した判決確定を理由とした翌期での損金算入

ニュース&トピックス | 2014年8月28日 木曜日 13:08

1.事件の概要

 (1)X医療法人(控訴人・原告)は、理事乙が平成11年8月20日に死亡し、退任したことに伴
   う本件退職慰労金及び弔慰金(本件退職慰労金等)を、平成11年4月1日から平成12年3月
   31日までの事業年度(平成12年3月期)の未払金に計上して損金の額に算入した上、欠損金
   額及び翌期繰越欠損金額を5134万9311円として確定申告をした。

    もっとも、本件退職慰労金等に係る社員総会が開催され、それが支払われたのは、いずれ
   も平成13年3月期中のことであった。

 (2)Y税務署長は、本件退職慰労金等は平成12年3月期において債務が確定しておらず、法人
   税法(平成18年法律10号改正前)36条所定の損金算入の要件を満たさないとして、同期の法
   人税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(本件課税処分)をした。

 (3)X医療法人は、本件課税処分の取り消しを求める訴えを提起した。
    平成16年3月17日、本件退職慰労金等を平成12年3月期の損金の額に算入することはでき
   ないとする第一審判決があり、X医療法人は控訴したが、平成16年9月14日、控訴請求の判
   決があり、同年10月7日、第一審判決が確定した(別件確定判決)。

    なお、Y税務署長は、弔慰金については、それを支払った平成13年3月期の損金の額に算
   入すべきであるとして、平成16年10月1日、同期についてされていた更正処分の一部を取消
   した。

 (4)X医療法人は、別件確定判決により本件退職慰労金が平成13年3月期に支出したことが確
   定され、同期の法人税の税額計算の基礎としたところと異なったとして、国税通則法(通則
   法)23条2項1号に基づき、平成16年11月8日、平成13年3月期の法人税について更正の請
   求(本件更正請求)をした。

 (5)Y税務署長は、平成17年2月1日付けで、本件更正請求は通則法23条2項1号に該当せず、
   期間を徒過しているとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分(本件各通知処分)をし
   た。

 (6)X医療法人は、本件通知処分の取消しを求めて、本件訴えを提起した。
 

 2.本判決の要旨

 (1)本件退職慰労金を平成13年3月期の損金の額に算入できるか。

    本件退職慰労金が社員総会において承認され、費用として確定したのは平成13年3月期で
   あるが、X医療法人は、同期の確定した決算において本件退職慰労金を費用又は損失として
   経理していないため、本件退職慰労金を同期の損金と認めることはできず、また、X医療法
   人は、平成12年3月の確定申告において本件退職慰労金を未払金として計上しているが、本
   件退職慰労金を平成13年3月期の損金の額に算入して確定申告をしていないから、法人税基
   本通達(平成19年課法2-3改正前)9―2―20(筆者注:現9-2-28)によっても、損
   金経理をしたとの取り扱いをすることはできず、したがって、本件退職慰労金が同期の損金
   の額に算入される余地はない。

 (2)本件更正請求は通則法23条2項1号の更正の請求ができる場合に該当するか。

   ア X医療法人が問題とする平成12年3月期の確定申告に基づく課税と平成13年3月期の確
    定申告に基づく課税は、課税の根拠を異にする別個のものである上、本件退職慰労金を平
    成13年3月期の損金に計上するためには、平成12年3月期において未払金として計上する
    にとどまらず、本件退職慰労金を平成13年3月期の確定申告において損金に計上して確定
    申告するという新たな行為が必要であるから、別件確定判決により本件退職慰労金が平成
    12年3月期の損金に算入されない旨の判断が示されたとしても、そこから当然に、本件退
    職慰労金が平成13年3月期の損金として算入される旨の法的効果が導き出されることには
    ならないため、別件確定判決が、平成13年3月期の「課税標準等又は税額等の基礎となつ
    た事実に関する訴えについての判決」に該当するものではないことはもとより、別件確定
    判決によって「その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」と認め
    ることも困難というほかない。

   イ X医療法人は、本件退職慰労金を平成12年3月期の損金として計上すべきである旨主張
    して争っていたのであるから、X医療法人において、このような主張と矛盾する内容の確
    定申告をすることに躊躇ないし抵抗感を感じることには無理からぬ側面が存することは否
    定できないが、X医療法人が、平成12年3月期の更正処分を争う一方で、本件退職慰労金
    を平成13年3月期の損金に算入して確定申告するという手段を採ることは容易であり、こ
    れによって、平成13年3月期に本件退職慰労金を損金に算入するという法人税法上の効果
    を享受することは十分可能であったと認められるから、X医療法人がこのような手段に出
    なかった以上、本件更正請求が認められないことにより、本件退職慰労金が損金に計上さ
    れないという結果になったとしてもやむを得ない。
  =請求棄却 (上告・上告受理申立)=(最高裁平成21年11月17日決定・棄却・不受理)
 

 3.参考

 (1)本判決も指摘しているように、平成12年3月期の課税の根拠と平成13年3月期の課税の根
   拠とは別個のものであり、また、課税処分取消訴訟における判決は当該処分の適否について
   判断するものであるから、平成12年3月期の更正処分についての判断である別件確定判決の
   法的効果(本件退職慰労金は同期の損金の額に算入することができず、更正処分は適法とす
   るもの)が平成13年3月期の課税の根拠(本件退職慰労金を損金の額に算入しないでした申
   告)に及ぶことにはならないのであり、したがって、X医療法人としては、このことに思い
   を至し、本件退職慰労金は平成12年月期の損金の額に算入されるべきであるとして更正処分
   を争う一方、敗訴となった場合のリスクを回避するため、平成13年3月期の確定申告書にお
   いて本件退職慰労金を損金の額に算入して申告しておくというのが適切な対応であった。

 (2)本件のような事態は、本件に限られず、収入金額の収入すべき時期や、収益の計上時期等
   についての納税者と課税庁との見解が相違する場合に生ずるものであり、前記2(2)イの
   本判決の判断(訴訟上の主張と矛盾する内容の確定申告をすることに躊躇ないし抵抗感があ
   ることをもって更正の請求を許容することはできない旨)は、実務上、留意されるべき点で
   ある。

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