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【賃金政策】 中小企業の夏季賞与の相場


 関東地区で小売店を経営しています。今年も夏季賞与を支給したいと考えていますが、中小企業の相場はどれくらいになりそうか教えてください。


 賞与の動向は基本的に企業業績によって決まります。データで確認しておくと、厚生労働省の「就労条件総合調査」によれば、賞与の主たる決定要素として「業績・成果を基準としている」企業は、管理職のケースで57.6%、管理職以外のケースで58.9%と、いずれも過半を占めています。ちなみに基本給を基準としている企業は、それぞれ30.9%、32.5%にとどまっています。

 では、賞与と企業業績の間には具体的にどのような関係があるのでしょうか。過去における、賞与の伸び率と経常利益の伸び率の関係をみてみましょう(『戦略経営者』2011年7月号30頁・図表参照)。2008年秋のリーマン・ショックのような急激な変化が生じたときは、ほぼラグなしに両者は連動していますが、通常、約半年前の企業業績がその期の賞与の伸びに影響していることがうかがわれます。現在はリーマン・ショックから2年以上経過しており、すでにその影響は一巡しているとみられます。したがって、基本的には昨年後半の業績動向が、今夏の賞与の動きを決めることになります。

 昨年後半を振り返ってみると、企業はリーマン・ショック後のリストラクチャリングにほぼ目処をつけ、財務体質が相当程度改善していました。そこに新興国向け輸出が伸びてきたことから、企業業績は全産業ベースで約4割増の増益を達成しています。

 これを前提に、過去の関係から今夏の賞与の前年比伸び率を推計すると1.1%となります。ちなみに日本経団連の第1次集計が発表されていますが、全産業ベースで4.17%となっています。業種別には製造業が5.44%、非製造業が▲0.55%です。日本経団連加盟企業には大手製造業が多く、これらの企業業績は平均よりも良かったため、ここでの推計値よりも高くなったとみられます。

 中小企業の場合、総じて大手企業よりも業績改善度合いが小さく、非製造業の割合も高いことから、平均的な今夏の賞与伸び率は0〜1%程度になると予想されます。ちなみに厚生労働省の「毎月勤労統計」ベースでの2010年夏の賞与を企業規模別にみると、従業員100〜499人で47.7万円、30〜99人で28.9万円となっています。したがって、このベースでの金額(今季賞与)でいえば、従業員100〜499人で48万円、30〜99人で29万円程度が平均的な相場になるものと考えられます。

 このように、わずかながらも2年連続で夏の賞与の増加が予想されますが、先行きは不透明です。いうまでもなく、東日本大震災の影響が懸念されるためです。被災に遭った企業はいうまでもありませんが、今回はサプライチェーン寸断の影響で全国的に生産活動が低下し、電力不足のマイナス影響もあります。今年上期の業績が悪化することは避けられず、経済活動の正常化は秋から年末ごろ以降になると考えられます。こうしてみると、この冬の賞与は再びマイナスとなりそうです。

 しかし、忘れてはならないのは震災のような大きな変化が生じたときは、企業業績の差が広がりやすくなることです。賞与は従業員のやる気を左右する重要なインセンティブです。その意味では厳しいなかでもあえて賞与を捻出し、従業員のやる気を引き出して、経営改革を進めるという発想も重要といえるでしょう。

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