Q.首都圏でスーパーを経営しています。同業他社との厳しい価格競争にさらされていますが、
今年も夏季賞与を支給したいと考えています。世間相場はどれくらいになりそうか教えてください。
A.日本経済は2009年春から回復局面に入りましたが、
昨年は雇用者にとって景気の持ち直しを実感するのは難しい1年間でした。
厚生労働省が今年3月に発表した09年冬の1人当たりボーナス支給額は、
前年比▲9.3%(08年冬は同+1.0%)と大幅に減少しました。
支給額の算定基礎となる所定内給与、支給月数ともにマイナスとなり、冬季賞与としては過去最大の下落幅です。
多くの企業は、業績が最も厳しかった昨春の賃金交渉の際に支給額を妥結していたため、
夏季ボーナス(前年比▲9.7%)と同程度のマイナス幅となりました。
夏・冬のボーナスが両方とも大幅に絞り込まれることは過去にあまり例のないことですが、
昨年は1年を通じて人件費抑制に取り組んだ企業が多かったようです。
1人当たり支給額の激減に加え、支給対象労働者の割合
(常用労働者総数に占める、支給事業所に雇用される常用労働者の割合)は83.0%と前年から
2.4ポイント低下し、過去最低となりました。
冬のボーナスが支給される11〜1月の常用雇用者数を用いて試算すると、
支給対象者数(支給事業所に雇用される常用労働者数)は前年比▲3%の大幅減、支給総額は13.9兆円と
前年から2.1兆円も減少したことになります。雇用者にとって非常に厳しい所得環境であったといえます。
2010年夏のボーナスを取り巻く環境には、昨冬よりも幾分明るさが見られます。
09年度下期の経常利益(法人企業統計ベース)は低水準ながらも前年比+130.1%と大幅に増加しました。
そのため、企業収益と連動する傾向のある支給月数(ボーナス支給額÷所定内給与)は、
1.05ヵ月(前年差+0.02ヵ月)と4年ぶりに上向くとみられます。
一方、ボーナス算定の基礎となる所定内給与が増加する可能性は低そうです。
今年の春闘では、労働側の要求通り概ね定昇の維持が回答されたようですが、
ベースアップはほとんどありませんでした。
日本経団連の2次集計によると、今年の賃上げ率は大企業で1.81%(昨年の2次集計値は1.76%)、
中小企業で1.5%(同1.42%)と、ほぼ昨年並みにとどまりそうです。
また、企業の求人は持ち直してはいますが、非正規社員に偏っています。
相対的に賃金の低い非正規社員のウェイトが高まる結果、
雇用者全体の平均値で見た所定内給与は前年比▲0.5%と小幅に減少するでしょう。
以上を踏まえ、大手シンクタンクでは今夏の民間企業1人当たりボーナス支給額(5人以上事業所)を
前年比+1.0%と、4年ぶりに増加すると予測しています。
規模別に見ると、中小企業(5〜29人)は前年比+0.5%と、
大企業(30人以上)の同+1.2%と比べれば小幅な伸びになりそうです。
これは、大企業の昨年の落ち込み幅(前年比▲11.5%)が中小企業(同▲5.7%)より大きかったためです。
支給対象者も増加し、民間の支給総額は2年ぶりに増加するとみられますが、
大企業・中小企業とも、金融危機前の08年と比べれば低い水準にとどまるでしょう。
基本給である所定内給与が上向き、所得環境が本格的に回復するには今暫く時間がかかりそうです。