質疑応答事例(法人税関係)の更新について

国税庁は、さきごろ、平成24年7月1日現在の法令・通達等に基づく「質疑応答事例(法人税)」
を更新し、新たに13事例を追加掲載しましたので、そのうち、組織再編成の事例について紹介し
ます。

その他の事例については、「国税庁ホームページ(質疑応答事例(法人税)」を参照してください。
 
       いわゆる「三角合併」における合併法人が保有する親法人株式
       に係る課税関係について
 
【事 例】

   A社の100%子会社であるB社(3月決算法人)と特に出資関係を有しないC社との間で、
  B社を合併法人とする合併契約を平成24年1月1日付で締結し、同年5月1日に合併(適格合
  併に該当するものです。)を行いました(A社、B社及びC社はいずれも株式会社です。)。

   この合併は、C社の株主に交付する対価をB社株式ではなく、B社の親会社の株式であるA
  社株式(合併親法人株式)とするいわゆる「三角合併」によるものです。

   B社は合併契約日においてA社株式(帳簿価額500百万円)を既に保有しており、合併に伴
  いこの全てをC社の株主に交付しましたが、合併契約日におけるA社株式の時価は550百万円
  でした。

   この合併において、B社が保有していたA社株式に係るB社における課税関係はどのように
  なるでしょうか。

1.適格三角合併

   株式会社が行う合併が適格合併に該当するためには、合併法人と被合併法人との関係が、完
  全支配関係、支配関係又はそれ以外の関係のいずれに当たるかによって定められた要件(法2
  十二の八イ~ハ)を満たすとともに、これらの関係に共通して定められた要件(法2十二の八
  柱書き)を満たす必要があります。

   このうち、これらの関係に共通して定められた要件は、被合併法人の株主に、次に掲げる株
  式のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないこととされております(法2十二の八柱書
  き)。

   いわゆる「三角合併」の場合には、②の株式以外の資産が交付されないことが要件となりま
  す。

   ① 合併法人株式(合併法人の株式をいいます。)
     又は
   ② 合併親法人株式(合併法人との間に当該合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係と
    される一定の関係がある法人の株式をいいます。)

   上記②にいう「合併法人との間に当該合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係とされ
  る一定の関係」とは、次のいずれにも該当する場合をいいます(法2十二の八、法令4の3
  ①)。  

   (1)その法人(以下「対象法人」といいます。)と合併法人との間に、対象法人による直接
    完全支配関係(二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の全部を保有
    する関係をいいます。)があること。

   (2)合併後において、対象法人と合併法人との間に、対象法人による直接完全支配関係が継
    続することが見込まれていること。

   なお、事例の場合は、B社とC社との間には出資関係がないということですので、B社とC
  社との関係が、完全支配関係及び支配関係のいずれにも該当しないことになります。このよう
  な場合には、その合併が、B社とC社とが共同で事業を営むための合併に該当することが必要
  となります(法2十二の八ハ)。

 
 2.合併法人等が有する親法人株式の「みなし譲渡」

   法人が、自己を合併法人とする合併の対価として親法人株式(合併法人との間に当該合併法
  人の発行済株式等の全部を保有する関係とされる一定の関係がある法人に該当することが合併
  契約日において見込まれる法人の株式をいいます。)を交付しようとする場合において、その
  合併契約日にその親法人株式を保有するとき又は合併契約日後に一定の事由により親法人株式
  の移転を受けたときは、その合併契約日又は移転を受けた日(以下「合併契約日等」といいま
  す。)において、その親法人株式をその合併契約日等の価額で譲渡し、かつ、その価額で取得
  したものとみなすこととされています(法法61の2㉒、法令119の11の2②)。

   この規定は、合併法人が合併対価として交付する親法人株式で合併契約日等において保有す
  るものについては、その合併契約日等に時価による譲渡をし、直ちにその価額で取得をしたも
  のとして、それまでの含み損益を清算するためのものであり、その合併が適格合併に該当する
  か否かにかかわらず適用されます。

  【B社が有するA社株式の合併契約日におけるみなし譲渡(平成24年3月期)】

   事例のいわゆる「三角合併」において、B社は、合併契約日に保有していたA社株式の全て
  をこの合併によりC社の株主に交付していますので、同日を含む事業年度(平成24年3月期)
  の所得の金額の計算上、この合併契約日において帳簿価額500百万円のA社株式の全てを同日
  の時価550百万円で譲渡し、直ちに同額で取得したものとみなされることから、このみなし譲
  渡によって生じる50百万円の譲渡益を益金の額に算入することとなります(法法61の2㉒)

 
 3.合併法人等が交付する合併親法人株式等の譲渡損益の取扱い

   法人が、自己を合併法人とする合併の対価としてその有する有価証券を被合併法人の株主に
  交付する場合には、原則として、その合併の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、その
  有価証券に係る譲渡損益の額は益金の額又は損金の額に算入することとなりますが(法法61の
  2①、法規27の3六)、法人が自己を合併法人とする適格合併により合併親法人株式(合併法
  人との間に当該合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係とされる一定の関係がある法人
  の株式をいいます。)を被合併法人の株主に交付した場合には、その譲渡に係る対価の額は、
  その適格合併の直前の帳簿価額に相当する金額とすることとされており(法法61の2⑥)、対
  価の額と原価の額が同額となるため、譲渡損益は生じないこととなります。

  【B社が合併に伴い交付するA社株式の譲渡損益の取扱い(平成25年3月期)】

   事例のいわゆる「三角合併」は、適格合併に該当するということですので、この合併により
  B社がC社の株主に交付したA社株式の譲渡価額は、その適格合併の直前の帳簿価額に相当す
  る金額(B社が上記2において取得したとみなされた550百万円)と同額となりますので、こ
  の合併の日を含む事業年度(平成25年3月期)の所得の金額の計算上、譲渡損益が生じること
  はありません(法法61の2⑥)

お問い合わせ
ご相談・ご質問、お気軽にお問い合わせください。
お電話でのお問い合わせ
0120-958-583
0120-958-583
受付時間:9:00~18:00(平日)
メールでのお問い合わせ
お問い合わせフォーム