財産評価基本通達における大会社の株式保有割合による株式保有特定会社の判定基準の改正について
財産評価基本通達における大会社の株式保有割合による株式保有特定会社の判定基準が改正されました。
1.従来の取扱い
取引相場のない株式の発行会社の中には、類似業種比準方式における標本会社である上場会
社に比べて、資産構成が著しく株式等に偏った会社が見受けられます。このような会社の株式
については、一般の評価会社に適用される類似業種比準方式により適正な株価の算定を行うこ
とが期し難いものと考えられることから、財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)
189《特定の評価会社の株式》(2)では、株式保有割合(評価会社の有する各資産の価額
の合計額のうちに占める株式等の価額の合計額の割合)が25%以上である大会社を株式保有
特定会社とし、その株式の価額を類似業種比準方式ではなく、原則として純資産価額方式で評
価することとされていました(評価通達189-3《株式保有特定会社の株式の評価》)。
2.通達改正の概要等
(1)東京高等裁判所判決の概要
東京高等裁判所平成25年2月28日判決(以下「高裁判決」といいます。)において、
この株式保有特定会社の株式の価額を原則として純資産価額方式により評価すること自体は
合理的であると認められるものの、平成9年の独占禁止法の改正に伴って会社の株式保有に
関する状況が、株式保有特定会社に係る評価通達の定めが置かれた平成2年の評価通達改正
時から大きく変化していることなどから、株式保有割合25%という数値は、もはや資産構
成が著しく株式等に偏っているとまでは評価できなくなっていたといわざるを得ないと判断
されました。
(2)通達改正の概要
この高裁判決を受け、現下の上場会社の株式等の保有状況等に基づき、評価通達189
(2)における大会社の株式保有割合による株式保有特定会社の判定基準を「25%以上」
から「50%以上」に改正されました。
3.改正後の評価通達の適用時期等
この改正後の評価通達は、平成25年5月27日以後に、相続、遺贈又は贈与により取得し
た財産を評価する場合に適用されることとなりますが、上記2の通達改正は判決に伴うもので
あるため、過去に遡って改正後の通達が適用されることにより、過去の相続税等の申告の内容
に異動が生じ相続税等が納めすぎになる場合には、国税通則法の規定に基づき、この通達改正
を知った日の翌日から2月以内に所轄の税務署に更正の請求をすることにより、当該納めすぎ
となっている相続税等が還付となります。
なお、法定申告期限等から既に5年(贈与税の場合は6年)を経過している相続税等につい
ては、法令上、減額できないこととされていますのでご注意ください。
おって、取引相場のない株式等の評価明細書についても所要の改正が行われていますからご
留意ください。
以上