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《税務質疑応答》インボイス制度/相続により個人事業を承継した場合のインボイス登録の取扱い


[相談]

 2023年10月5日に、私の父が他界しました。
 生前の父は個人事業(消費税課税売上高は1,500万円程度で、インボイス発行事業者の登録を受けていました)を営んでおり、その個人事業は私が引き継ぎ、私は消費税課税事業者となったのですが、本日(2023年10月30日)時点で、私はまだインボイス登録事業者の申請を行っていません(なお、私は父の事業を引き継ぐ前は給与所得者でした)。
 このため、私は2023年11月中にインボイス発行事業者の登録申請を行う予定なのですが、このような場合、私がインボイス発行事業者の登録を受けるまでの間、私が父から引き継いだ個人事業について、個人事業の取引先にインボイスを交付できるのでしょうか。教えてください。

[回答]

 ご相談の場合、みなし登録期間という制度が設けられており、そのみなし登録期間中は、ご相談者は適格請求書(インボイス)発行事業者とみなされ、また、そのみなし登録期間中は、亡くなられたお父様の適格請求書(インボイス)発行事業者の登録番号がご相談者の登録番号とみなされますので、ご相談者がインボイス発行事業者の登録を受けるまでの間は、お父様のインボイス登録番号をもって、取引先にインボイスを交付することが可能となります。

[解説]

1.相続があった場合の消費税の納税義務の免除の特例の概要

 消費税法では、その年において相続があった場合において、その年の基準期間(※1)における課税売上高が1,000万円以下である相続人(※2、※3)が、その基準期間における課税売上高が1,000万円を超える被相続人の事業を承継したとき(※4)は、その相続人のその相続のあった日の翌日からその年12月31日までの間における消費税の納税義務は免除されない、と定められています。

※1 基準期間とは、個人事業者についてはその年の前々年をいいます。

※2 相続人からは、消費税課税事業者選択届出書の提出等により、消費税を納める義務が免除されない相続人を除かれます。

※3 相続人には、相続のあった日において現に事業を行っている相続人でその相続のあった日の属する年の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である相続人だけでなく、相続があった日の属する年の基準期間において事業を行っていない相続人も該当することとされています。

※4 「被相続人の事業を承継したとき」とは、相続により被相続人の行っていた事業の全部又は一部を継続して行うため財産の全部又は一部を承継した場合をいうこととされています。

2.インボイス発行事業者が死亡した場合の取扱い

 消費税法上、相続により適格請求書(インボイス)発行事業者の事業を承継した相続人(インボイス発行事業者を除きます)がいる場合には、その相続のあった日の翌日から、その相続人がインボイス発行事業者の登録を受けた日の前日又はその相続に係るインボイス発行事業者が死亡した日の翌日から4ヶ月を経過する日のいずれか早い日までの期間(みなし登録期間)については、その相続人をインボイス発行事業者の登録を受けた事業者とみなす、と定められています(※5)。

 また、この場合において、上記のみなし登録期間中は、被相続人のインボイス発行事業者に係る登録番号をその相続人の登録番号とみなすと定められています。

 したがって、今回のご相談の場合、ご相談者がインボイス発行事業者の登録を受けるまでの間は、お父様のインボイス登録番号をもって、取引先にインボイスを交付することが可能となります。

※5 なお、相続人が、上記のみなし登録期間後も引き続き格請求書発行事業者の登録を受けるためには、相続人が既にインボイス発行事業者の登録を受けていた場合を除き、インボイス発行事業者登録申請書の提出が必要となります。

[参考]
消法2、10、57の3、消基通1-5-1、1-5-3、1-5-4、国税庁軽減税率・インボイス制度対応室「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(令和5年10月改訂)など

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