このところ、「米粉」という文字をあちらこちらでよく目にするようになりました。
「もち米」や「うるち米」を製粉して作られる「米粉」は、一般的に「白玉粉」「上新粉」などの名称で家庭でも愛用され、古くから団子、煎餅、落雁(らくがん)、さくら餅といった和菓子の材料として私たちの生活に馴染みの深い食材でした。
ではなぜ、小麦粉より1.5〜2倍ほど割高な米粉が、ここにきて“引っ張りだこ”になっているのでしょう。その大きな要因は、2年前からの小麦の価格高騰が挙げられます。つまり、近年、日本人の米の消費量が激減するなか、国が懸命に米の消費拡大を図ってきましたが、その普及を阻んでいたのが米と小麦の価格差だったのです。
米粉の割高感が薄まったこと。粒が硬い米を小麦粉レベルに粉砕できる製粉技術が進歩したこと。さらに米粉ならではのもちもち、しっとりした食感がウケたことなどが、いま脚光を浴びている背景といえます。
学校給食での導入から始まり、大手食品メーカーは相次いで米粉の原材料使用に力を入れ始めています。
敷島製パン、ヤマザキといった製パンメーカーでは菓子パンや食パンに積極的に米粉を使用。ちなみにヤマザキの「米粉入り食パン」の場合、小麦粉8、米粉2の割合です。
ニチレイでは、アジフライなどの冷凍食品のコロモに米粉を2割程度配合。
日本ハムは、外食店向けに小麦を一切使用しない米粉100%のパンを開発。今春発売で、小麦アレルギーに悩む人にも安心して食べられると注目されています。個人向けにも通信販売される予定。
丸美屋食品工業からは「米粉のもちっと パンミックス」、グリコ栄養食品からはホームベーカリー用に「米粉パン用ミックス粉 こめの香」と天才パン職人と評判の福盛幸一氏が完成させた「福盛シトギミックス20A」とケーキ作りにも適した「福盛シトギ2号」が発売されています。
昨年10月、国産米粉の消費促進を目的に「米粉倶楽部」が発足しました。皆さんも新聞やテレビで広告をご覧になったことがあると思います。これは、農水省が推進する「FOOD ACTION NIPPON」の活動の一つで、米粉に関わる生産者、食品メーカー、流通業者、外食・サービス業などが一体となって、“米粉で食料自給率アップ!”を目指そうというもの。この主旨に賛同する企業の米粉使用製品に「米粉倶楽部ラベル」を貼付し、米粉の認知拡大や利用促進をアピールしています。
うどん、ラーメン、ビーフン、そば、パスタなどの麺類。クッキー、ケーキ、カステラなどの洋菓子。パン、ナン、ピザ生地、餃子やシュウマイの皮など、いまや小麦粉でできるものは何でも米粉でできる、と言っても過言ではないほどです。
小麦粉との価格差が縮んだとはいえ、まだまだ高価なことに変わりはない米粉。良質なたんぱく質を含み日本人好みの食感や味という、小麦に勝るメリットをいかに効果的に活かしていくか。今後の食品メーカーの腕の見せどころに注目しましょう。