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「従業員持株会」制度を機能させる3つのポイント

Q1
 従業員に経営への参画意識を持たせるために従業員持株会制度を導入したいと考えています。導入にあたり留意すべき点を教えてください。

A1

 従業員持株会制度を導入するメリットの1つに、従業員の経営参画意識を向上させることができるということが一般的に言われています。ただし、これは理念的なものにすぎません。同族会社で株式未公開の場合には、社長をはじめとした同族関係者がその殆どの株式を保有しています。会社の株式を数%程度保有するにすぎない従業員持株会では、従業員が経営参画意識を持って業務にあたり会社の業績を向上させたとしても、従業員持株会は会社の経営権を確保できないために従業員の意思で配当金額を決めることができません。また株式公開途上会社のようにキャピタルゲインを期待することもできません。これでは、従業員持株会制度の導入により、従業員に経営参画意識が芽生えたとしても、継続的な効果は期待できません。実際に、同制度の導入効果が得られずに、社長が自社株式を従業員持株会から買い上げたりすることは珍しいことではありません。
 
 したがって、従業員持株会制度を導入すれば従業員が経営参画意識をもつようになると考えるのは危険です。同制度は社員に経営参画意識を持たせるための1つの道具でしかなく、その道具を有効に機能させるための要素を担保しておく必要があります。その要素とは3つあると考えられます。1つは従業員に会社の経営成績を公開すること、2つ目は配当金額の支払方法を明確にしておくこと、3つ目は入会時および退会時における取引価格を時価にすることです。

 1つ目の「従業員に会社の経営成績を公開すること」というのは法律的に当然のことです。従業員が持株会に加入するということは従業員が株主になるということです。株主であれば会社の決算書を見ることができます。しかし実際には従業員持株会制度を導入しても従業員に会社の経営成績を公開してない会社が殆どです。これでは従業員は、経営参画をしたつもりで頑張って仕事をしても、その努力の結果が見えてこないので、意欲は導入する前よりも減退してしまいます。

 2つ目の「配当金額の支払方法を明確にしておくこと」というのは従業員へのインセンティブです。株主が会社へ投資することにより期待することは一般的に配当とキャピタルゲインです。株式公開を予定していない未公開会社では大きなキャピタルゲインは期待できません。このため投資リターンとしての配当が重要になります。しかし従業員持株会には株主総会で配当額を決議できるほどの議決権は有していません。理論的には大株主である経営者は配当を支給せずに役員賞与のみを支給することが可能です。したがって従業員持株会制度を導入する場合には、経営者は当期利益等に対する配当額の割合を公約することなどの工夫が必要になると考えられます。

 3つ目の取引価格の問題は、株式未公開会社が導入する従業員持株会制度において、最も難しい問題です。なぜならば株式未公開会社の株式には市場価格がないためです。このため何らかの方式により算定された評価額により株式取引を行わなければなりません。また取引価格にどのような意味を持たせるかによっても採用すべき評価方式は異なってきます。ただし従業員持株会制度の性格から株価が高めに誘導される収益還元方式や株式市場の変動に影響される類似会社比準方式などは避けた方が良いでしょう。法人税法や所得税法では時価純資産価格方式が未公開株式の原則的評価方式として認められておりますが、ケースによっては相続税法に規定される配当還元方式も実務的に許容されています。なお、この配当還元方式による株価は従業員持株会制度を運営する際の弊害も少なくないので、あまりお勧めはできません。どのような従業員持株会制度を導入したいかを決めて、その目的に適った株式評価方法を採用し取引価格を決める必要があります

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