飲料市場の二大カテゴリーとして君臨してきた「コーヒー」「緑茶」の売れ行きが失速するなか、近頃、がぜん勢いを増しているのが「紅茶」市場です。ほのかな香りに癒されたい人が増えたのか、季節を選ばず通年売れるという特性が功を奏したのか、とくに今春からの新製品ラッシュともいえるにぎわいぶりに注目です。
紅茶の市場ランキングは、「午後の紅茶」のキリンビバレッジ、「リプトン」の森永乳業(一部、サントリー)、「紅茶花伝」のコカ・コーラグループの順で3強を形成し、20年以上もゆるぎないものでした。
ところがそこに昨年夏、“お茶屋さん”だとばかり思っていた伊藤園が、ニューヨークスタイルの紅茶という、これまでにない斬新な商品性の「TEAS’TEA」で紅茶市場に参入、3強に闘いを挑んできました。“ベルガモット&オレンジティー”や“アップルティー”など、トラディショナルな英国風紅茶とはひと味ちがう、香りを楽しむという新しい切り口が若い女性にウケ、爆発的な売上げを達成して業界を驚かせました。今年3月に発売された同ブランドの「水出し用ティーバッグ」も、当初の販売計画を上回る好調な売れ行きとか。
迎え撃つ3強も黙ってはいません。
2009年冬にミルクティーでヒットを飛ばした「午後の紅茶」は、今年2月、同ブランドで「エスプレッソティー」を発売。茶葉をエスプレッソ(高温・高圧)抽出するという画期的な商品で、濃厚かつ良質な苦味、そして缶コーヒーと同じ190ml缶というパッケージ演出も若い男性を中心とした缶コーヒー派にウケて大ヒット中。
「午後の紅茶」シリーズは、続いて3月に糖分・脂肪ゼロの「ヘルシーミルクティー」、4月に「シトラスアイスティー」、5月にチルドパックの「微糖マンゴー&ゴールデンパインティー」、6月には「無糖プレーンティー」と立て続けに発売して攻勢をかけます。
伊藤園に続けとばかりに、アサヒ飲料も自信のブランドを6年ぶりに新ブランドとして復活させ、紅茶市場に再参入。“糖類ゼロ”が売りの「ティオ(TeaO)」シリーズ(ゴールデンストレートティーとゴールデンミルクティー)を、20〜30代の紅茶男子をターゲットに今年5月、発売しました。
リプトンは、「ピンクグレープフルーツティー」(ペットボトル)と「エクストラショット 豊潤ピーチティー」「同 アップルティー」のチルドカップを今年5月に発売。
毎月、どこかのブランドから新製品がデビューするといってもいいほどの盛り上がりを見せている紅茶市場。このにぎわいは、メーカー間の勢力争いとなって当分続きそうな気配です。