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《国税庁公表》令和3事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要

国税庁は、このほど「令和3事務年度(令和3年7月~令和4年6月)における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」を公表しましたので紹介します。
近年、個人投資家の海外投資や企業の海外取引が増加するなど、経済社会がますます国際化しています。このような中、OECD(経済協力開発機構)が策定・公表したCRS(共通報告基準)に基づく非居住者の金融口座情報の交換やBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの進展などにより、富裕層や海外取引のある企業による海外への資産隠しのほか、各国の税制の違い等を利用して税負担を軽減する等の国際的な脱税及び租税回避に対して、関心が大きく高まっている状況にあります。また、G20やOECDにおいては、これらの問題に対処するため、各国税務当局間での協力・連携を一層推進していくこととしています。
こうした状況を踏まえ、国税庁としては、国際的な動きも十分に視野に入れて適正・公平な課税を実現していくことが、国民からの信頼の確保につながるものと考えており、租税条約等に基づく外国税務当局との情報交換を通じて、国際的な脱税及び租税回避の把握や防止に取り組んでいくとしています。
情報交換の重要性に関する国際的認識が高まる中、我が国の情報交換ネットワークは、151か国・地域に拡大しています。
なお、租税条約等に基づく情報交換には、「自動的情報交換」、「自発的情報交換」及び「要請に基づく情報交換」の3つの類型があります。
1.自動的情報交換
・ 令和3事務年度のCRS(Common Reporting Standard)情報の自動的情報交換では、日本居住者のCRS情報約250万件(口座残高約14兆円)を94か国・地域の外国税務当局から受領した一方、外国居住者のCRS情報約65万件(口座残高約4.9兆円)を国税庁から77か国・地域の外国税務当局に提供しました。
・ CbCR(Country by Country Report:国別報告書)の自動的情報交換では、外国に最終親会社等がある2,246グループのCbCRを53か国・地域の外国税務当局から受領した一方、日本に最終親会社等がある901グループのCbCRを60か国・地域の外国税務当局に提供しました。
・ 法定調書により把握した非居住者等への支払についての情報約10万件を外国税務当局から受領した一方、約77万件を外国税務当局に提供しました。
CRSは、外国の金融機関等を利用した国際的な脱税や租税回避に対処するため、非居住者の金融口座情報(氏名・住所・口座残高など)を税務当局間で定期的に交換するための国際基準として、OECDが策定・公表したもので、我が国もこの枠組みに基づき、外国税務当局との間で情報交換を実施しています。
このような諸外国の税務当局から受領するCRS情報や法定調書情報等は、国外送金等調書・国外財産調書といった各種調書や既に保有している他の資料情報等との分析を通じて、課税上問題があると見込まれる資産や所得の把握などに有効であり、また、徴収の分野においても、受領した情報を活用し、外国税務当局への徴収共助の要請等を行っています。
〇「CRS情報の自動的情報交換」の活用例
滞納者Aは、日本に居住しているX国籍の者であり、勤務先の日本法人からの給与収入や報酬等について、確定申告を行ったが、その国税を納付しなかった。
滞納者Aの国内の財産では徴収が不足していたところ、X国から受領したCRS情報から、国内調査では把握していなかった滞納者A名義のX国国内の預金口座を把握した。
そこで、国税庁は、租税条約に基づき、X国の税務当局に対して徴収共助の要請を行った。
その結果、上記預金について、X国税務当局により差押え及び取立てがなされ、徴収することができた。
2.自発的情報交換
自発的情報交換は、国際協力の観点から、自国の納税者に対する調査等の際に入手した情報で外国税務当局にとって有益と認められる情報を自発的に提供するものです。
・ 外国税務当局から国税庁に提供された「自発的情報交換」の件数は448件であり、特定の国から大量の情報を受領した昨事務年度と比較し、大幅に減少しています。
・ 国税庁から外国税務当局に提供した「自発的情報交換」の件数は73件であり、例年と比べ減少しています。地域別にみると、アジア・大洋州の国・地域への提供が40件と最も多くなっています。
3.要請に基づく情報交換
要請に基づく情報交換は、個別の納税者に対する調査において、国内で入手できる情報だけでは事実関係を十分に解明できない場合に、必要な情報の収集・提供を外国税務当局に要請するものです。国際的な取引の実態や海外資産の保有・運用の状況を解明する有効な手段となっています。
外国税務当局から、海外法人の決算書、契約書、インボイス、銀行預金口座取引明細書などのほか、外国税務当局の調査担当者が取引担当者に直接ヒアリングして得た情報を入手しています。
・ 国税庁から外国税務当局に行った「要請に基づく情報交換」の件数は639件であり、昨事務年度と同程度の水準でした。
地域別にみると、我が国と経済的関係が強いアジア・大洋州の国・地域向けの要請が520件となり、約8割を占めています。
・ 外国税務当局から国税庁に寄せられた「要請に基づく情報交換」の件数は128件であり、昨事務年度までの増加傾向から転じて減少しました。
〇「要請に基づく情報交換」の活用例
内国法人Bは、日本国内で仕入れた宝石類をY国に輸出し、Y国に所在する取引先の法人へ販売することで、輸出売上を計上し、仕入に係る多額の消費税の還付申告を行っていた。
内国法人Bの調査において、取引資料に不審点があったため、Y国税務当局に、取引先の法人の経理処理等が分かる資料の提供を要請した。
その結果、当該取引は実在しないことが判明し、内国法人Bが架空仕入及び架空売上を計上し、不正に消費税の還付申告を行っていた事実を把握した。
≪参考≫令和4事務年度におけるCRS情報の受領・提供の状況(令和4年12月31日時点)
令和4事務年度の中途における令和4年12月31日時点の情報として、日本居住者のCRS情報約257万件を95か国・地域の外国税務当局から受領し、外国居住者のCRS情報約53万件を76か国・地域の外国税務当局に提供したことを公表しています。
◎ 詳細につきましては、国税庁ホームページ>お知らせ>報道発表>国税庁発表分>「令和3事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」をご覧ください。

 

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