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《税務質疑応答》退職者から法定付与日数を超える有休買取と所得税の所得区分


[相談]

 当社はいくつかの店舗を運営しておりますが、諸般の事情により、そのうち1店舗を近日中に閉店することとなりました。
 その店舗に勤務する従業員のうち、当社が運営する他の店舗への異動が可能な者については転勤してもらうことで合意しましたが、通勤等の問題で異動が不可能な者については、話し合いのうえ、店舗閉店日をもって退職とすることで会社と従業員双方が合意しました。
 ところで、当社では、法定付与日数を超える日数の年次有給休暇を従業員に付与しているのですが、上記の退職予定の従業員の中には、その法定付与日数を超える日数の年次有給休暇を退職予定日までに全日消化できない者がいることから、今回限りの特例として、その消化できない年次有給休暇の日数(法定付与日数を超えて付与されたもの)に対応する賃金相当額を、従業員の退職後に、最終の給与とは別に金銭で一括支給する予定です(いわゆる有給休暇の買い取り)。
 そこでお聞きしたいのですが、上記の有給休暇の買い取りに伴って金銭を支給することにより生ずる所得について、その所得税法上の所得区分はどのように取り扱われるのでしょうか。
 なお、年次有給休暇のうち法定付与日数部分については、退職予定日までに全日消化できる見込みです。

[回答]

 ご相談の場合、退職予定の従業員に退職後に金銭を支給することにより生じる所得の所得税法上の所得区分は、退職所得に該当するものと考えられます。詳細は下記解説をご参照ください。

[解説]

1.所得税法上の退職所得の定義

 所得税法上、退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(退職手当等)に係る所得をいうと定められています。

2.所得税法上の退職手当等の範囲

 上記1.の退職手当等とは、具体的には、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与をいうものとされています。

 このため、退職に際し又は退職後に会社などから支払われる給与で、その支払金額の計算基準等からみて、他の引き続き勤務している人に支払われる賞与等と同性質であるものは、原則として、退職手当等に該当しないとされています。

 したがって、今回のご相談の場合、退職予定の従業員に対してその退職後に支給される予定の金銭は、その従業員の退職に基因して一時に支払われるものであることから、その収入により生じる所得の所得税法上の所得区分は、退職所得に該当するものと考えられます。

 なお、労働基準法では、年次有給休暇を「与えなければならない」と定められているため、金銭を支給しても年次有給休暇を与えたことにはなりません。
 また、年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて労働基準法の規定により従業員が請求しうる年次有給休暇の日数を減じたり、従業員から請求された日数を与えないことは、労働基準法違反となります。
 ただし、労働基準法に定められた有給休暇日数を超える日数を労使間で協約している時は、その超過日数分については、労働基準法によらず労使間でその取扱いを定めてよいこととされています。

[参考]
所法30、所基通30-1、労働基準法39、厚生労働省基収4718号(昭和30年11月30日)、基発513号(昭和23年3月31日)、基収3650号(昭和23年10月15日)など

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