中古車を使ったレンタカービジネスの市場が、ここにきて一段と活況を呈してきました。
このレンタカーシステムの最大の特徴は、文字通り貸し出す車両に中古車を利用しているため、仕入れにかかるコストが新車の場合と比べて格段に安く、その結果、大手レンタカーの半額以下という画期的な低価格を可能にした点です。
もう一つの特徴は、多くの場合、店舗というかレンタルの拠点がガソリンスタンド(GS)である点です。運営母体各社は、全国のGSとフランチャイズ、あるいはより加盟店の自由を尊重するボランタリーチェーンとしての契約を結んで展開しています。実はこのビジネスが脚光を浴びるようになった背景には、苦肉の策的な台所事情がありました。GSを取り巻く構造変化です。
1996年の石油自由化によって安価なガソリンなどの輸入が解禁され、98年にはセルフスタンドの誕生によって全国のGSは激減。さらに、追い討ちをかけるような消費の減退、クルマ離れ……もともと価格競争の激しい業界のため、体力のないGSは生き残りのための新たな収益源を求めていたのです。
中古車をレンタルするという“サイドビジネス”がGSにとって好都合だったのは、既存のGSを利用するため、敷地、設備、スタッフなどといったほとんどのインフラをそのまま活用できる点が大きく、初期投資も数十万円に抑えることができるのが特徴。さらにクルマを返却する際の“満タン返し”も、そこのGSで給油できるので双方にとってまさに一石二鳥というわけです。
2007年、「中古車レンタカー」を最初にビジネス化した「ワンズレンタカー」(ワンズネットワーク=船橋市)の場合、マーチ、デミオといったSクラスで、12時間2,625円から。
2008年に参入した「ニコニコレンタカー」(レンタス=横浜市)は、Sクラス12時間の利用で2,525(ニコニコ)円。全国に263店舗で展開中(2010年2月現在)です。
2009年秋には、「100円レンタカー」(カーベル=東京都)が新規参入しました。Sクラス、3時間まで10分100円というインパクトのある価格設定で話題を集めています。ちなみに、3時間以降は30分100円、12時間利用だと3,000円。
「イツモレンタカー」(エネクスオート=東京都)は、Sクラス12時間で2,594円。2010年2月現在の店舗数は約200店舗です。
その他、「バリューレンタカー」(ITサポート21=横浜市)、「アルルレンタカー」(エヴリス=東京都)など。
サンダル履き感覚で近くのGSへクルマを借りに—–気軽に利用できる地域密着型の新ビジネスが、中古車の格安レンタカーです。今後は、GSにとどまらず、整備工場や中古車販売店などへと加盟店の輪を拡大していく動きも盛んです。
“持たずに借りる、しかも安く!”という消費者の意識が、成長市場をさらに後押ししそうです。