Q1
商品を納入している大口取引先の1社が先日、民事再生法の申請を行いました。この会社に対し売掛債権があるのですがどのように対応すればいいのでしょうか。)
A1
中小企業を取り巻く経営環境は、ますます厳しくなっています。自社で経営努力を重ねていても、得意先が経営不振から民事再生法の申請をしたことで大きな影響を受けるといったケースもここにきて増加しているようです。
民事再生手続とは、債務者(ご質問のケースでは取引先)が業務遂行権及び財産の管理処分権を原則として従来どおり保持しつつ、債権者(質問者の会社など)の一定数の同意によって可決された再建計画に基づいて事業の再建を図る手続きです。
民事再生では、手続開始の申立てから再生手続開始までの間に財産が散逸しないよう、(1)再生債権に基づく強制執行などの手続きの中止命令、(2)一般債権者の権利行使を一切禁止する包括的禁止命令、(3)担保権の実行としての競売の手続きを一時的に中止する命令などが定められています。よって民事再生手続の申立て直前や後でこれらの手続きをとっても効果がない場合があることをまずは留意しておいてください。
また、債務者から民事再生手続開始の申立てがなされたときは、第一に再生の見込みの有無を判断しなければなりません。開始決定前にこの判断をすることは決して容易ではありませんが、再生手続に関する裁判所の閲覧謄写請求規定の行使や債権者説明会や取引先からの情報収集に努め、的確な判断を行いましょう。
次に再生手続が開始されたら債権者は、債権届出を提出しましょう。これにより債権調査の結果、再生債権者表に記載されると、確定判決と同一の効力が認められるからです。逆に債権届出がないと、原則として再生手続への参加や議決権の行使ができなくなったり、再生計画による配当を受けられなくなったりします。
相殺については、再建型の倒産手続であるため制約があるので注意が必要です。再生手続開始時に債権債務の対立があり、かつ再生債権届出期間の満了前に相殺適状(当事者間の債権が相殺できる状態にあること)が生じた場合、相殺禁止事由に該当しない限り、その期間内に限り相殺できることとなっています。よって相殺の意思表示は早めに行うことをおすすめします。
できるだけ事業を継続させることを趣旨とする民事再生法では、債権者が債務者の財産に担保権を有していても、その財産が事業の継続に不可欠である場合、債務者が当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付して、財産上にある全ての担保権を消滅させること(担保権消滅請求制度)が定められています。これに対して債権者としては、その財産が事業の継続に不可欠でない、と判断したときは即時抗告を、申出額に異議があるときは価額決定請求をすることができます。
再生計画案の内容については、賛否の意思を決めなければなりません。つまり債権額の20%を10年以内に弁済する、というような再生計画案であれば、そのカット率や弁済方法を詳細にわたり検討する必要があります。
しかし債権者集会における再生計画案の決議の可否要件は、(1)議決権を行使することができる届出再生債権者で出席した者の過半数であって、かつ(2)議決権総額の2分の1以上の議決権者の賛成です。このことから実際は、大口債権者の意向が大きく反映される点に気をつけなければなりません。