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【人事労務】 業績の大幅悪化で労働条件を見直す

Q1

 業績の大幅悪化で労働条件の見直しを検討せざるを得なくなりました。労使合意を大前提に考えていますが、昨年施行の労働契約法で「合意のルール」が法制化されたと聞きました。留意すべき点を教えてください

A1

 労働契約法(以下、契約法。平成20年3月施行)は、労働契約についての基本ルールをわかりやすく示し、これまでの判例理論を明確にした意味があります。就業規則の不利益変更については、これまでの判例を参考にした対応に変わりないと思います。

 「就業規則の変更に係る手続きは、労働基準法(以下、労基法)第89条(作成及び届出の義務)及び第90条(作成の手続)の定めによる(契約法第11条)」とし、過半数労働組合または過半数を代表する者の意見を聴くことになっています。労基法上では明文化していませんが、この場合も原則労使合意が背景にあります。

 労基法では、就業規則の不利益変更については規定していません。しかし、就業規則の労働条件は、会社と労働者の契約内容であり、労働者の既得権であるとして、不利益変更を認めない判例も多々あります。一方、就業規則の不利益変更は原則として許されないとしつつ、例外的に変更に合理性がある場合に限り認めた例(秋北バス事件、最高裁昭和43年)もあります。このような裁判を積み重ね、就業規則の不利益変更に合理性を認める要件として、判例では別表(〔『戦略経営者』2009年7月号31頁〕別表参照)の項目をあげています。

 また、特定従業員層に大きな不利益をもたらす場合は、多数労働組合の賛成があっても就業規則の不利益変更を認めない例(みちのく銀行事件、最高裁平成12年)もあります。これまでの判例を見ると、労働者にとって不利益な取り扱いのみになってしまう場合は、無効となる可能性は高いといえるでしょう。

全体の合意を求める
 契約法では、「労働者と合意することなく、就業規則を変更することによって、労働者の不利益となるように労働条件を変更することはできない(契約法第9条)」「変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が(中略)合理的なもの(〔『戦略経営者』2009年7月号31頁〕別表参照)である(契約法第10条)」(個別特約を除く)と規定しています。合理性の判断については、従前の7つの要素を4つの要素に整理したものとして厚生労働省でも解しており、実質的には差異はないと考えられます。

 近年の経済環境により、やむなく就業規則の不利益変更をすることもあると思います。その場合は、過半数労働組合または労働者の過半数を代表する者と会社の経営状態や将来展望を十分に話し合い、全体の合意を求めていくことが肝要です。ワークシェアリングなども考慮して、景気回復時の対策も視野に入れながら、雇用の維持や労働者の保護を心がけていくべきでしょう。

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