Q1
当社は独自技術を持っており、近い将来には株式公開を行いたいと思っています。そのため、ベンチャーキャピタルを活用したいのですが、留意点を教えてください。
A1
ベンチャーキャピタル(VC)から出資を受ける場合、銀行等からの融資とは資金の性質が異なるということに注意すべきです。資金の性質の違いにより、資金提供者と企業の関係も変わってきます。
銀行等の融資であれば、資金提供者は利子収入を目的に資金を貸出します。この場合、貸出先企業の成長は、資金の回収の確実性は高めてもリターン(利子額)には影響しませんから、約束通りに返済が行われている限りにおいては、資金提供者が経営に介入することはないでしょう。
それに対して、VCからの出資の場合、資金提供者は基本的に企業価値が向上することによるキャピタルゲインを目的とします。ですから、投資先の成長度合いがリターンに直結しますので、資金提供者は企業価値が向上するように経営に参加していこうとします。
経営者の立場から言えば、他者から経営に口出しされるのはあまり喜ばしいことではないかもしれませんので、注意が必要です。とはいえ、誰もが銀行等から融資を受けられるわけではありません。融資は資金が確実に返済されることを大前提としていますから、実績のないベンチャー企業が実際に融資を受けるのは通常の場合困難です。
そういった意味でVCは、将来性のあるベンチャー企業にとって貴重な資金供給者と言えます。また、企業の成長時に自社だけでは不足しがちな経営ノウハウを効率的に補うことにおいても、VCを活用することは有効です。
次に、VCを選ぶ際の基準ですが、VCによって強みとするところが異なりますので、自社がVCから何を得ようとしているかということを選択基準とするのが良いでしょう。
たとえば、技術力に優れたベンチャー企業であるが、自社のみでは技術を商品化して販売するだけの力がなかった場合、その企業が成長するためには、他企業との連携が有効と考えられます。そうした面から考えると、当該企業には、幅広い分野に投資を行う銀行系のVCや事業分野に太いパイプを持つ事業会社系のVCが良いかもしれません。
一番大事なことは、それぞれのVCの企業に対する支援の方針をよく理解した上で、そのVCから何が期待できるのか、そして自社の経営方針に合ったパートナーであるのかを見極めてから出資を受けることだと思います。
それでは、出資を検討してもらうVCをどのように探せばいいのでしょうか。たとえば、取引銀行や企業同士の横のつながりを利用して探したり、インターネットで検索してみたりするという方法があります。
また、公的機関がVCの運営するファンドへ出資していますので、こうした機関に紹介を依頼してみるのも1つの手でしょう。ファンドからの出資を受ける場合のメリットとしては、VCだけでなく、ファンドへ出資している他の出資先からの支援も期待できることが挙げられます。