《国税庁発表、事前照会》持株会社を株式交換完全親法人とする株式交換における事業関連性の判定について
はじめに
このほど国税庁は、「持株会社を株式交換完全親法人とする株式交換における事業関連性の判
定について」に係る事前照会の回答を公表しましたので紹介します。
事前照会の回答によれば、資本関係のない法人間における株式交換の適格判定における「事業
関連性要件」について、当該事前照会に係る取引等の事実関係を前提とする限り、株式交換完全
子法人の子法人事業と株式交換完全親法人の親法人事業とが相互に関連するものであり、事業関
連性要件を満たすとして差し支えないものと考えると回答しています。
【事前照会の要旨】
A社は、平成26年6月1日に資本関係のないB社を株式交換完全子法人とする株式交換(以
下「本件株式交換」といいます。)を行いました。
株式交換完全親法人となるA社は、傘下の子会社の経営指導等を主な事業とする持株会社で
あり、その子会社には小売業(百貨店等)を営む事業会社が含まれています。また、株式交換
完全子法人であるB社は、小売業(大規模スーパー等)を営む事業会社です。
ところで、資本関係のない法人間における株式交換の適格判定において、株式交換に係る株
式交換完全子法人の子法人事業(当該株式交換完全子法人の当該株式交換前に営む主要な事業
のうちのいずれかの事業をいいます。以下同じです。)と当該株式交換に係る株式交換完全親
法人の親法人事業(当該株式交換完全親法人の当該株式交換前に営む事業のうちのいずれかの
事業をいいます。以下同じです。)とが相互に関連するものであること(以下、この要件を
「事業関連性要件」といいます。)が要件の一つとされています(法令4の3⑯一)。
本件株式交換における以下の事実関係を前提とすれば、B社(株式交換完全子法人)の子法
人事業とA社(株式交換完全親法人)の親法人事業とは、事業関連性要件を満たすものと解し
て差し支えないか。
【事前照会に係る取引等の事実関係】
1.両社の事業内容等
A社は、関西圏を中心基盤として百貨店等を中心に多様な小売業等を営む子会社約40社の
発行済株式の全部を保有する持株会社です。A社は、各子会社との間に経営指導に関する包
括的な契約を締結し、小売業等を営む各子会社の事業計画の策定、予算管理、監査などの経
営指導のほか、A社グループ共通のシステムを活用した各子会社の資金管理、経理業務支援
などを行い、これらの業務に充てるため子会社からその事業規模の大きさに応じて営業利益
の3~7%相当額を収受しており、A社は単に株主としての立場のみだけでなく、小売業を
中心としたグループの持株会社として、グループ全体の財務面、経営面などを監督する立場
にあります。
B社は、関西圏を中心基盤としてあらゆる種類の商品を取り扱う総合的スーパーマーケッ
ト事業(小売業)と主に食料品を取り扱うスーパーマーケット事業(小売業)を営んでいま
す。
なお、A社及びB社は、本件株式交換の直前において、①事務所等の固定施設を所有し、
②従業者があり、③自己の名義でもって、かつ、自己の計算において事業を営んでいます。
2.株式交換の目的等
A社及びB社は、少子高齢化に伴う消費活力の減退、ネット通販の拡大を中心とする購買
スタイルの変化等、顧客の消費動向が急速に変化するなか、市場シェアの確保、様々なニー
ズの変化を確実に捉える商品・売場・販売チャネルの提供により、顧客からの支持をより強
固なものとすることが急務であると認識しており、本件株式交換は、共通の理念を持つ両社
が、関西圏という地域の中で多様な業種業態、取扱商品群を揃えた総合小売サービス業グルー
プを構築することを目的として行うものです。
本件株式交換による経営統合後は、両社の保有するポイントサービス制度を共通化して新
しい顧客還元サービスを構築するほか、相互の人事交流を積極的に図りつつ、両社グループ
の多様な店舗網による情報収集力をもとにした商品開発や物流機能の相互活用などにより、
総合小売業グループ全体として強固な体制を構築することを目指しています。
3.株式交換後の両社の事業内容
本件株式交換後において、A社は、B社との間に経営指導に関する包括的な契約を締結し、
B社の事業計画の策定、予算管理、監査などの経営指導を行うほか、A社グループ共通のシ
ステムを活用した資金管理、経理業務支援など、B社に対し、小売業に係る経営指導等の事
業を行うことを予定しています。
他方、B社は、A社グループ共通のシステムを利用することにより、自社固有のポイント
カードをグループ共通のポイントカードに統合するほか、A社による経営指導の下、A社の
有する小売業のマーケティングなどに係るノウハウ等も活用して独自の商品や付加価値サー
ビス等の提供を行うことで顧客サービスの充実を図り、B社及びA社グループ併せて約700
万人のカード会員を軸に、顧客網、店舗ネットワーク網等を活用して、B社が営む主要な事
業であるスーパーマーケット事業(小売業)の一層のシェア拡大に取り組むこととしていま
す。
【事前照会者の求める見解の内容及びその理由】
1.関係法令等
(1) 事業関連性要件について
共同事業を営むための適格株式交換の要件を満たすためには、株式交換完全子法人の子法
人事業と株式交換完全親法人の親法人事業とが相互に関連するものである必要があります
(事業関連性要件)(法令4の3⑯一)。
(2) 「相互に関連する」ものについて
その株式交換が、次に掲げるイ及びロの要件に該当するものである場合には、株式交換完
全子法人の子法人事業と株式交換完全親法人の親法人事業とは「相互に関連する」ものとさ
れています(法規3①③)。
イ 株式交換完全子法人及び株式交換完全親法人が当該株式交換の直前においてそれ
ぞれ次に掲げる要件の全てに該当すること
①事務所、店舗、工場その他の固定施設を所有し、又は賃借していること
②従業者(役員にあっては、その法人の業務に専ら従事する者に限ります。)があること
③自己の名義をもって、かつ、自己の計算において事業を営んでいること
ロ 株式交換完全子法人の子法人事業と株式交換完全親法人の親法人事業との間に、
当該株式交換の直前において次に掲げるいずれかの関係があること
①子法人事業と親法人事業とが同種のものである場合における当該子法人事業と親法人事
業との間の関係
②子法人事業に係る商品、資産若しくは役務又は経営資源(事業の用に供される設備、事
業に関する知的財産権等、生産技術又は従業者の有する技能若しくは知識、事業に係る
商品の生産若しくは販売の方式又は役務の提供の方式その他これらに準ずるものをいい
ます。以下同じです。)と親法人事業に係るこれらのものとが同一又は類似するもので
ある場合における当該子法人事業と親法人事業との間の関係
③子法人事業と親法人事業とが当該株式交換後に当該子法人事業に係る商品、資産
若しくは役務又は経営資源と当該親法人事業に係るこれらのものとを活用して営
まれることが見込まれている場合における当該子法人事業と親法人事業との間の
関係
2.当てはめ
(1) 上記1(2)イの要件について
本照会は、上記「取引等の事実関係」のとおり、B社及びA社がいずれも、本件株式交換
の直前において、①事務所等の固定施設を所有し、②従業者があり、③自己の名義をもって、
かつ、自己の計算において事業を営んでいることを前提としていますので、上記1(2)イの要
件に該当します。
(2) 上記1(2)ロ③の要件について
イ B社及びA社は、上記「取引等の事実関係」のとおり、本件株式交換の直前において、
それぞれ次の①及び②の事業を営んでいます。
①B社は、主要な事業として、あらゆる種類の商品を取り扱う総合的スーパーマーケット
事業(小売業)と主に食料品を取り扱うスーパーマーケット事業(小売業)を営んでい
ます(以下「B社事業」といいます。)。
②A社は、百貨店等を中心に多様な小売業等を営む各子会社との間に経営指導に関する包
括的な契約を締結し、各子会社の事業計画の策定、予算管理、監査などの経営指導のほ
か、A社グループ共通のシステムを活用した各子会社の資金管理、経理業務支援を行う
など、小売業に係る経営指導等の事業を営んでおり、A社は小売業を営む子会社と共同
して事業を行っているといえます(以下「A社事業」といいます。)。
ロ 本件株式交換後において、B社とA社は、B社事業に係る商品、資産若しくは役務又は
経営資源と、A社事業に係る商品、資産若しくは役務又は経営資源とを活用して、それぞ
れ次の①及び②のとおり事業を営むことを予定しています。
①B社は、A社グループ共通のシステムを利用することにより、自社固有のポイントカー
ドをグループ共通のポイントカードに統合するほか、A社による経営管理指導の下、A
社の有する小売業のマーケティングなどに係るノウハウ等も活用して、事業会社として
独自の商品や付加価値サービス等の提供を行い、顧客サービスを充実させつつ、B社及
びA社グループの顧客網、店舗ネットワーク網等を活用して、自らが営むスーパーマー
ケット事業の拡大を図る予定です。
②A社は、B社がその有する商品、店舗や従業員等を活用して小売業を営むに際し、B社
の事業計画の策定、予算管理、監査などの経営指導を行うほか、A社グループ共通のシ
ステムを活用した資金管理、経理業務支援など、B社に対し、小売業に係る経営指導等
の事業を行うことを予定しています。
ハ 以上のことから、本件株式交換の直前において、B社事業とA社事業とが、本件株式交
換後にそれぞれの事業に係る商品、資産若しくは役務又は経営資源を活用して営まれるこ
とが見込まれており、B社事業とA社事業の間には、上記1(2)ロ③に掲げる関係がある
こととなります。
(3) したがって、上記の事実関係によると、本件株式交換前に営むB社の事業とA社の
事業は、上記1(2)イ及びロ③の要件を満たすため、本件株式交換は事業関連性要件を
満たすとして差し支えないものと考えます。
なお、詳細については「国税庁ホームページ(事前照会に対する文書回答事例)」をご参照く
ださい。