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《税務質疑応答》法人成り直後に退職した従業員の退職所得控除額の計算における勤続期間の通算の可否

代表ブログ,税務質疑応答 | 2022年8月26日 金曜日 14:08

Q.今年、私が個人で経営していた学習塾を法人化(法人成り)しました。
 この法人成り直後に、正社員1名から家庭の事情により退職したいとの申し出を受けたため、これまでの働きへの感謝として会社からその社員に退職金を支給したいと考えています。

 そこでお聞きしたいのですが、この場合、所得税法上の退職所得控除額の計算において、個人経営(以下、個人事業)の勤続期間と会社の勤続期間とを通算して、勤続年数を計算できるのでしょうか。

 なお、その社員は私の個人事業の青色事業専従者でなく、その勤続期間は個人事業時代が1年6ヶ月間、法人成り後が1ヶ月間です。

 また、当社の退職金規程では、退職金の支払額の計算の基礎とする期間は、法人成り後の期間によるものと定めています。

A.ご相談の場合、個人事業時代の勤続期間と法人成り後の勤続期間との通算は、認められないものと考えられます。

[解説]
1.退職金からの所得税の源泉徴収手続きの概要
 所得税法上、役員や従業員に対して退職金を支払うときには、原則として、所得税(及び復興特別所得税)を源泉徴収して、徴収した月の翌月の10日までに国に納めなければならないことと定められています。

 その源泉徴収税額は、退職者から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けていない場合には、退職金の支給額に一律で20.42%の税率を乗じて計算した金額となります。

 一方で、上記の申告書の提出を受けている場合には、勤続年数に応じた「退職所得控除額」を退職金支給額から控除したうえで、源泉徴収税額を計算することとなります。

2.退職所得控除額を計算する場合における勤続年数の計算方法

 所得税法上、上記1.の退職所得控除額を計算する場合の勤続年数の計算について、
退職金の受給者(退職所得者)が、その退職金の支払者の下において勤務しなかった期間に他の会社等で勤務したことがある場合において、その退職金の支払者が、その退職金の支払金額の計算基礎期間のうちに他の会社等で勤務した期間を含めて計算するとしているときは、他の会社等で勤務した期間を勤続期間に加算した期間により勤続年数を計算すると定められています。

 この点について、今回のご相談のように法人成りがあった場合には、(会社の)退職給与規程等に個人事業当時からの期間を含めた勤続期間を基礎として退職金を計算する旨が定められており、それに従って計算した退職金を支払うのであれば、税務上は、個人事業当時の勤続期間を含めて勤続年数を計算することができるとされています。

 反対に、退職給与規程等により、退職金の支払額の計算の基礎とする期間が、法人成りしてからの期間によるものとされている場合には、個人事業当時の勤続期間との通算は認められないこととなります。

 したがって、今回のご相談には、個人事業時代の勤続期間と法人成り後の勤続期間との通算は、認められないものと考えられます。

[参考]
所法30、所令69、所基通30-10、国税庁源泉所得税質疑応答事例など

《税務質疑応答》インボイス制度導入後における、免税事業者からの仕入れにかかる消費税額の取扱い

代表ブログ,税務質疑応答 | 2022年8月23日 火曜日 15:08

Q.私は建築業を営む会社を経営しています。
 当社は、大工工事や左官工事などを数十名の個人事業主(消費税課税事業者、消費税免税事業者が混在しています)に外注しているのですが、その外注費にかかる消費税について、令和5年(2023年)10月1日のインボイス制度導入後に取扱いが変わるとの話を聞きました。その概要を教えてください。

A.ご相談の外注費のうち、消費税免税事業者への支払にかかる消費税については、インボイス制度導入後は、原則として、御社の消費税納付額の計算上、仕入税額控除を行えないこととなります。

[解説]
1.消費税法上の「課税仕入れ」とは
 消費税法上の「課税仕入れ」とは、原則として、事業者(個人事業者および法人)が、事業として他の者から資産を譲り受け、もしくは借り受け、又は役務の提供(給与等を対価とする役務の提供を除きます)を受けることをいうものと定められています。

 なお、現行の消費税法では、上記の「他の者」には、消費税課税事業者だけでなく、消費税免税事業者や一般消費者も含まれるものとして取り扱われています。

2.消費税の納付税額の計算方法
 消費税の納付税額は、課税期間中の消費税課税売上げにかかる消費税額から、その課税期間中の「課税仕入れ等に係る消費税額」を控除して計算します。この場合の課税期間とは、原則として、個人事業者の場合にはその年、法人の場合にはその事業年度となります。

 事業者が消費税免税事業者から行った資産の譲り受け(商品などの購入)等については、上記1.のとおり、消費税法上の課税仕入れに含まれることとされているため、例えば、消費税免税事業者に外注費110万円(10%税込)を支払った場合には、原則として、そこに含まれる消費税額10万円を、消費税課税売上げにかかる消費税額から控除(仕入税額控除)して、その事業者が納付すべき消費税額を計算することとなります。

3.インボイス制度導入後の、免税事業者等からの仕入れの取扱い
 令和5年(2023年)10月1日から導入される、消費税の「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)では、上記2.の「仕入税額控除」の要件として、原則的に、「適格請求書発行事業者」から交付を受けた適格請求書(インボイス)の保存が必要になります。

 上記のインボイスを発行できる「適格請求書発行事業者」となれるのは、消費税課税事業者に限定されています。

 このため、インボイス制度導入後に消費税免税事業者や一般消費者(以下、消費税免税事業者等)から課税仕入れを行った場合には、原則として、上記2.の「仕入税額控除」が行えないこととなり、その分だけ、消費税の納税額が増える可能性があるということになります。

 なお、インボイス制度導入から一定期間は、消費税免税事業者等からの課税仕入れであっても、一定の要件のもと、仕入税額の一定割合を控除できるという経過措置が設けられています。その点はご留意ください。

[参考]
消法2、新消法30、57の2、平成28年改正法附則52、53、消基通11-1-3、国税庁タックスアンサー6455「免税事業者や消費者から仕入れたとき」など

《税務質疑応答》インボイスに記載すべき事項と、端数処理の注意点

Q. 私は会社で経理を担当しています。
 令和5年(2023年)10月1日から導入されるインボイス制度では、現在の請求書(区分記載請求書)の記載事項に新たな記載事項が加わるそうですが、それはどのような内容でしょうか。

A.インボイス制度導入後は、現在の請求書(区分記載等請求書)の記載事項に加えて、インボイス(適格請求書)発行事業者の「登録番号」と「税率の異なるごとに区分した消費税額」を記載することが必要となります。

[解説]
1.インボイスに記載すべき事項

 2023年10月1日から導入されるインボイス制度では、インボイスを発行する事業者(適格請求書発行事業者)は、国内において商品の販売やサービスの提供等を行った場合には、原則として、その取引の相手方の事業者(消費税免税事業者を除きます)からインボイス(適格請求書)の交付を求められたときは、その商品の販売等にかかるインボイスを交付しなければならないと定められています。

 インボイスに記載すべきとものとして定められている事項(原則)は、次のとおりです。
• ①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
• ②商品の販売等を行った年月日
• ③販売した商品や提供したサービス等の内容(販売した商品が軽減税率対象である場合には、その旨)
• ④商品の販売等にかかる税抜価額又は税込価額を、税率の異なるごとに区分して合計した金額及び適用税率
• ⑤税率の異なるごとに区分した消費税額
• ⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
※インボイスの記載事項は、現行の請求書(区分記載請求書)の記載事項に、上記①の「登録番号」と⑤の「税率の異なるごとに区分した消費税額」が新たに加えられた形となっています。

2.インボイスの端数処理の注意点

 インボイスに記載する消費税額の端数処理は、商品やサービスの明細ごとに行うのではなく、税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額を基礎として算出し、算出した消費税額の1円未満の端数を処理することとされています。

 つまり、消費税額の1円未満の端数処理は、1枚のインボイスにつき、税率の異なるごとにそれぞれ1回のみとされていますので、注意が必要です。

 なお、端数処理の方法(切上げ、切捨て、四捨五入)については、どの方法でも良いこととされています。(国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問46)。

[参考]
新消法57の4、インボイス通達3-12、国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」など

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