人生の三分の一という貴重な時間を費やすにもかかわらず、意外に軽く見られているのが「寝具」ではないでしょうか。
それでもここ数年は、低反発枕が注目を集めるなど、「快眠グッズ」という括りで脚光を浴びつつあり、市場的にも拡大傾向が見られます。その背景としては、“眠れればなんだっていい”から“眠りに質を求めたい”と、私たちの睡眠に対する意識の変化が挙げられます。
メーカー各社は、これまでになかった機能性の高いハイテク商品を打ち出して、快眠市場の需要に応えようとしています。
医療・介護など、メディカルの現場で培った独自のテクノロジーを一般消費者向け製品に反映させて新市場に挑むのは、「パラマウントベッド」。寝返りを妨げないマットレスをはじめ、枕、ベッドパッド、ベッドフレーム、電動アジャスタブルベッドなど、昨年末に同社の高機能寝具のラインナップを「スマートスリープ」というブランドに統一。併せて、敷きふとんやマットレスの下に敷いて呼吸や身体の振動から眠りを測定する「眠りスキャン」という睡眠測定器を開発。この機器を使った「睡眠改善プログラム」を提案しています。参加者を募り、「眠りスキャン」を貸し出して約2週間試してもらいます。その結果を元に睡眠改善インストラクターがアドバイスを行い、必要に応じて枕などの寝具を貸出。最終的に、睡眠状態を評価し、改善策を提案することで拡販につなげようというものです。
寝具メーカーの老舗、「西川産業」は、マットレス自体に高い機能性を持たせた商品を開発しました。眠りのフォーム(寝姿勢)にこだわった三層特殊立体構造コンディショニングマットレス「AiR」(エアー)で、寝ている間の汗や湿気を効率よく拡散して不快感を軽減する70個もの通気孔を設けた設計がポイントです。
寝具メーカー以外も参入に積極的です。
家庭用健康機器大手の「タニタ」から、今年6月、敷いて寝るだけで睡眠状態がわかる「スリープスキャン」が発売されました。本体の中には500mlの水が入っていて、その上に横たわることでかかる内圧をセンサーが感知し、脈拍数、呼吸数、体動を検知。そのデータをSDカードに記録し、専用のソフトで解析して睡眠の深さを表示します。さらに、寝つき時間や途中で目覚めた回数などの情報から、眠りの質を点数化するという仕組みです。
日本人の睡眠時間の平均は、7時間42分(2006年 総務省調べ)。そして、5人に1人が不眠症などの睡眠障害を抱えているとのデータもあります。
睡眠は、言うまでもなく健康の基本となる生命現象です。近年、生活習慣病との関連性も取り沙汰されています。良質な眠りを手に入れるためには、寝具も材質やデザインだけではなく、科学的に選択する時代になってきたようです。