(質問) 弊社は、3月決算法人ですが、当期(平成26年3月期)、創業以来の好業績となる見込みとなったことから、使用人全員に対して決算賞与を支給することとしました。 期末の3月31日に支給対象者(使用人の全員)に対して各人ごとの支給予定額を通知して翌4月10日に通知のとおり支払いました。 この決算賞与については、当期において未払賞与として損金経理しますが、この未払賞与に係る社会保険料の会社負担額についても、当期の経費(損金)の額に算入して差し支えないでしょうか? (回答) 使用人に対する賞与の損金算入時期は、原則としてその支払日となりますが、 未払賞与に係る例外として、(1)支給を受けるすべての使用人に対して各人ごとの支給額を通知していること、(2)通知した金額を、通知したすべての使用人に対し、通知した日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること及び(3)その支給額につき通知した日の属する事業年度において損金経理をしていることの3つの要件のすべてを満たす場合には、その支給額を通知した日の属する事業年度の損金の額に算入することができます(法令72条の3)。 お尋ねの場合の決算賞与の額については、上記の3つの要件のすべてを満たすことから、当期の損金の額に算入することができますが、その決算賞与に係る社会保険料の会社負担額については、当期の損金の額に算入することはできないものと考えられます。 すなわち、法人税法上、各事業年度の損金の額に算入すべき金額は、その事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額とされています(法法22〔3〕二)。 そして、法人が負担する社会保険料の額については、当該保険料の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度において損金の額に算入することができることとされています(法人税基本通達9-3-2)。 これは、法人が負担する社会保険料は、被保険者が月末において在職している場合にのみ、同者に係る保険料を翌月末日までに納付することとなり、被保険者が月の中途で退職した場合には、同者の退職月に係る保険料は納付する義務がない(健康保険法156〔3〕、厚生年金保険法19〔1〕)ことによるものです。 したがいまして、法人が各使用人に支給する決算賞与に係る社会保険料の支払債務は、その決算賞与を支払った月の末日におけるその使用人の在職の事実をもって確定することになります。 これをお尋ねのケースに当てはめると、決算期末である3月末に未払計上した各使用人の決算賞与に係る社会保険料の支払債務は、その決算賞与を支払った月の末日すなわち4月末日におけるその使用人の在職の事実をもって初めて確定することになりますから、その社会保険料の額について3月末において損金算入(未払計上)することはできないことになります。 なお、この点に係る参考判決例として、平成24年7月5日東京地裁判決(LEX/DB:60057220)がありますので、参照ください。 【関連情報】 《法令等》 法人税法施行令72条の3 法人税基本通達9-3-2 健康保険法156条 厚生年金保険法19条