公開日: 2023年10月17日

《法人税》完全子法人株式等の配当等に係る源泉徴収の不適用措置について

この源泉徴収の不適用措置は、会計検査院から法人税において受取配当等の益金不算入とされる完全子法人株式等及び関連法人株式等に係る配当等に対して所得税の源泉徴収を行われている一方で、これらの配当等の受取法人においては所得税額控除の適用により所得税の還付金及び還付加算金の支払が生じている等の指摘を受けて、事務負担等の軽減のため所得税の源泉徴収を不要とする改正が令和4年度税制改正において行なわれました。この改正は、令和5年10月1日以後に支払うべき配当等から適用されます(令和4年改正法附則6)。

 

〇 所得税の源泉徴収の不適用措置について
一定の内国法人(一般社団法人等以外の法人)が支払を受ける配当等で、次に掲げるものについては、所得税を課さないこととし、その配当等に係る所得税の源泉徴収を行わないこととされました(所法177、所令301②)。
(1) その一定の内国法人がその配当等の額の計算期間の初日からその末日まで継続して発行済株式等の全部を保有する株式等(完全子法人株式等:自己の名義をもって有するものに限ります。)に係る配当等
(2) その配当等の額に係る基準日等(配当等の額の計算期間の末日等)において、その一定の内国法人が直接に保有する他の内国法人(一般社団法人等を除きます。)の株式等の発行済株式等の総数等に占める割合が3分の1超である場合における当該他の内国法人の株式等(自己の名義をもって有するものに限られ、上記(1)に該当するものを除きます。)に係る配当等〔この場合、株式等の継続保有は求められていません。〕

 

(源泉徴収の不適用措置の適用事例)
A株式会社(親法人)が100%出資するB株式会社(子法人)の株式等(完全子法人株式等)を所有する場合に、B株式会社がA株式会社に対して、令和5年10月1日以後の株主総会等で配当する決議を行い、その後、B株式会社がA株式会社に支払う配当については、源泉徴収の不適用措置が適用されます。
また、A株式会社がB株式会社の株式を配当等に係る基準日に同社株式を3分の1超所有する場合、B株式会社がA株式会社に支払う配当についても同様に源泉徴収の不適用措置が適用されます。
(注)B株式会社への出資割合は、どちらの場合もA株式会社のみの出資で判定します。

 

〇 不適用措置の適用にあたり注意すべき事項
特に、法人税における対象株式等の判定と異なるところがありますので、よく検討をすることが必要となります。
(1) 対象とされるのは完全子会社株式等と関連法人株式等に係る配当等ですが、配当等を受ける内国法人が自己の名義で所有する株式等に限定した上で出資割合が判定されます。したがって、兄弟会社等関連法人の株式所有分を含まないで判定されますので、法人税の受取配当等の益金不算入制度を適用する場合の判定方法とは異なります。
(2) 上記の源泉徴収の不適用措置(2)は、配当等に係る基準日の株式所有状況が3分の1超であるかで判定(所令301②)されることから、法人税の受取配当等の益金不算入制度のように株式等の継続保有は求められていません。
(3) 対象とされる配当等は、令和5年10月1日以後に支払うべき配当等に係る源泉所得税について不徴収とされます。この場合の「支払うべき」とは、その配当等の決議があった日、効力が生じた日とされますので、実際に配当等が支払われた日ではありません。
したがって、配当等することが令和5年9月30日までに確定している場合、その配当等の支払が令和5年10月1日以後に行われたとしても不適用措置の適用対象にはなりません。

 

〇 不適用措置の適用対象外とされる「一般社団法人等」について
一般社団法人及び一般財団法人(公益社団法人及び公益財団法人を除きます。)、労働者協同組合、人格のない社団等並びに法人税法以外の法律によって公益法人等とみなされている特定非営利活動法人などの一定の法人(みなし公益法人)は、不適用措置の適用対象外とされます(所令301①)。
【根拠法令】
〇 所得税法・・・(施行日 令和5年10月1日)
(完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例)
第百七十七条 第七条第一項第四号(課税所得の範囲)、第百七十四条(内国法人に係る所得税の課税標準)及び第百七十五条(内国法人に係る所得税の税率)の規定は、内国法人(一般社団法人及び一般財団法人(公益社団法人及び公益財団法人を除く。)、労働者協同組合、人格のない社団等並びに法人税法以外の法律によつて法人税法第二条第六号(定義)に規定する公益法人等とみなされているもので政令で定めるもの(次項において「一般社団法人等」という。)を除く。以下この条において同じ。)が支払を受ける当該内国法人の同法第二十三条第五項(受取配当等の益金不算入)に規定する完全子法人株式等に該当する株式等(同条第一項に規定する株式等をいい、当該内国法人が自己の名義をもつて有するものに限る。次項において同じ。)に係る第二十四条第一項(配当所得)に規定する配当等については、適用しない。
2 第七条第一項第四号、第百七十四条及び第百七十五条の規定は、内国法人(当該内国法人が他の内国法人(一般社団法人等を除く。)の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式等を除く。)の総数又は総額の三分の一を超える数又は金額の株式等を有する場合として政令で定める場合における当該内国法人に限る。)が支払を受ける当該他の内国法人の株式等(前項に規定する完全子法人株式等に該当する株式等を除く。)に係る第二十四条第一項に規定する配当等については、適用しない。
〇 令和4年改正法附則
(完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例に関する経過措置)
第六条 新所得税法第百七十七条第一項の規定は、同項の内国法人が令和五年十月一日以後に支払を受けるべき同項に規定する配当等について適用する。
2 新所得税法第百七十七条第二項の規定は、同項の内国法人が令和五年十月一日以後に支払を受けるべき同項に規定する配当等について適用する。
〇 所得税法施行令
(完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例)
第三百一条 法第百七十七条第一項(完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例)に規定する政令で定める内国法人は、地方自治法第二百六十条の二第七項(地縁による団体)に規定する認可地縁団体、建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)第四十七条第二項(成立等)に規定する管理組合法人及び同法第六十六条(建物の区分所有に関する規定の準用)の規定により読み替えられた同項に規定する団地管理組合法人、政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律(平成六年法律第百六号)第七条の二第一項(変更の登記)に規定する法人である政党等、密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律(平成九年法律第四十九号)第百三十三条第一項(法人格)に規定する防災街区整備事業組合、特定非営利活動促進法第二条第二項(定義)に規定する特定非営利活動法人並びにマンションの建替え等の円滑化に関する法律第五条第一項(マンション建替事業の施行)に規定するマンション建替組合、同法第百十六条(マンション敷地売却事業の実施)に規定するマンション敷地売却組合及び同法第百六十四条(敷地分割事業の実施)に規定する敷地分割組合とする。
2 法第百七十七条第二項に規定する政令で定める場合は、同条第一項に規定する内国法人が、同条第二項に規定する他の内国法人(以下この項において「他の内国法人」という。)の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の三分の一を超える数又は金額の同条第一項に規定する株式等を、当該内国法人が当該他の内国法人から受ける同条第二項に規定する配当等の額に係る基準日等(法人税法施行令第二十二条第一項(関連法人株式等の範囲)に規定する基準日等をいう。)において有している場合とする。
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