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【事業承継】 幹部社員に社長の座を譲りたい事例の紹介

Q1
 親族ではない幹部社員に事業承継したいと考えています。注意点を教えてください。

A1
 幹部社員に事業承継するという場合に生じる問題点や対応策について、「ヒト」「モノ」「カネ」という視点で考えてみましょう。

 まずヒトの問題です。承継においては社内外からの反発や「やっかみ」がつきもの。だからその選定理由や決定までのプロセスを明確にするべきです。関係者の理解や納得が得られないと、その後の協力体制に不安が残ります。早期に後継者を決定し、時間をかけて理解を得るようにしてください。

 特に金融機関においては、現在の経営者に対する信用を前提に取引があることを忘れてはなりません。今後のスムーズな承継のためには後継者の経営能力や信用力、保証能力等について相談したり、早めに紹介し気心しれた間柄になるよう積極的にコミュニケーションをとることが大切です。

 次にモノについては、何といっても自社株対策が重要となります。後継者として身分の安定を確保させ支配権を移転させるためには、ある一定の株数を後継者が取得しなければなりません。その方法としては「贈与」も考えられますが、通常は「譲渡」です。よって買取資金の問題が生じます。これまで資産形成があまりされていない幹部社員が一気に株を取得するのはかなり難しい。そこで早いうちから自社株の評価を行い、計画的に取得する必要があります。

 ちなみに中小企業経営承継円滑化法における金融支援には、後継者となる親族外であるその会社の役員や従業員が、既存の株主から株式を取得するための資金の融資を受けることができる制度があります。もちろん審査がありますから必ず実行されるとは限りませんが、資金調達方法として検討してみてはいかがでしょうか。また承継後の経営方針の急な変更や暴走が心配な場合は、拒否権付種類株式等を取得しておくことで備えることも必要です。

 最後にカネの問題です。中小企業が借入をする場合、保証人と担保の問題が必ず出てきます。信用力にもよりますが、保証人については、現経営者に加え後継者も追加で入ることが多いようです。そして担保についても資産価値が下落している昨今、担保不足となっていると後継者にも担保差入れが求められる場合があります。また新たな借入分からは前経営者に代わって個人保証や担保差入れが求められることになるでしょう。これは親族外の後継者にとって物的のみならず精神的にも相当の重荷になります。このことから「後継者に指名されても負担感からやむなく辞退する」ということにつながるのです。

 一番の対応策はその“重荷”を減らすことです。債務の圧縮及び財務体質の強化を事業承継計画の中で明確に方針として打ち立て、承継時に後継者の負担を軽減させることしかありません。また保証人や担保については、粘り強く金融機関と交渉することや承継後もしばらく相談役等として会社に残る配慮も必要です。さらに後継者が保証人になったり担保を差入れた場合には、それに見合った役員報酬の増額等を図り、万が一の事態に備える思いやりが大切となります。何より負担がない、魅力ある継ぎたくなるような会社づくりをすることが最大の経営者の役割といえます。また、一つのアドバイスとして、きたるべき承継に向けて事業承継計画を策定することをお勧めします。

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