【質問】
前回の調査において、反面調査で知った架空外注費を課税所得に影響する外注費だけ修正申告させられ、仕掛工事に含まれていた外注費はそのままとなりました。今回の調査において、前回架空の外注費がありましたがと前回調査に来た担当官の内の一人に、今回調査に来て指摘され唖然とするばかりですが、正しい税務行政から言えばあってはならないことと思っています。憤懣やるかたなく添付した上申書を署に提出しましたが、なんの効果もなく、重加算税の賦課決定書が来ました。
こういう場合、納税者の悪いやり方だけが浮き上がってきますが、署のやり方にも問題があるのではと思って異議の申立てをしたいと思いますが、こういうことは理由にならないのか、異議の申立てができるとすれば、どういう形式で、また、どういう順序で申立てするのが良いのか、ご教示下さるようお願い致します。
<経緯等>
(1)平成9年9月1日から平成10年8月31日までの事業年度に生じた架空外注費のうち、9,981千円を工事原価に算入、修正申告(前回調査時)
このほか、架空外注費を仕掛工事に19,870千円計上
(2)上記のうち、11年8月期に10,000千円を工事原価に算入、13年8月期に9,870千円を工事原価に算入、修正申告
以上、今回の調査による修正申告の提出日は平成15年7月2日
(3)架空計上した相手方外注業者は、一業者である。
【回答】
1 ご質問の事実関係は、建設工事業を営む法人において、平成9年中に架空外注費を計上していた事実があり、このうち(1)平成9年9月1日から平成10年8月31日までの事業年度において完成工事原価に算入していた9,981,850円については、前回の税務調査により、既に修正申告書を提出したが、(2)これ以外に、当該事業年度において未成工事原価(仕掛工事)に算入していた19,870,000円については、今回の税務調査により、これを工事原価に算入していた平成10年9月1日から平成11年8月31日までの事業年度に10,000,000円、平成12年9月1日から平成13年8月31日までの事業年度で9,870,000円を、それぞれ修正申告をしたというものです。
ご質問は、上記(1)の事実に係る前回の税務調査において上記(2)の事実が既に発覚していたことを前提として(ただし、これは、推測であるに過ぎません)、重加算税の対象事実に当たらないといえるかどうか、というものです。
2 税務調査による更正処分又は修正申告については、申告に係る課税標準である所得金額が過少であったことを対象として行われるものであり、仮装の事実があっても、それが当該事業年度の所得金額の計算に影響しない場合には、それが更正処分又は修正申告の対象となることはありません。
したがって、その仮装の事実が所得金額の計算に影響することとなった事業年度で是正されることになるのは、やむを得ません。
そして、その是正される事実が仮装の事実に基づくものであるときは、重加算税の対象になることは明らかであり、仮装隠ぺいの事実が存しないということは困難です。
ご指摘は、前回の税務調査において上記(2)の事実が既に発覚していたのならば、税務調査の担当官がその事実を教えてくれていれば、正しい申告をすることができたということであり、それはそのとおりですが、だからといって、税務調査の担当官にそのような指導助言義務があるとはいえません。
重加算税は納税者本人に課せられる制裁であり、仮装していた事実は納税者自身が一番よく知っていることですから、後の事業年度においてこれを損金に算入した年度において自ら是正すべきであったことになります。納税者に責任のある事柄を税務署の責任に置き換えることはできません。
したがって、上申書記載の事情をもって、異議申立てをしても、それが容認される可能性は低いものと考えます。
3 なお、異議申立てをされるのであれば、当該重加算税の賦課決定の通知を受けた日の翌日から起算して2か月以内に当該賦課決定をした税務署長に対し、当該重加算税の賦課決定を対象として異議の申立てをすることになります。
4 今回の修正申告の原因となった事実については、税理士に責任がないことはもちろんですが、仮装行為を行う納税者については、翌期以降の申告において前同様の不正行為が行われていないかどうか念入りに確かめる必要があります。
今後の対応についての教訓とすべきでしょう。
【関連情報】 《法令等》 国税通則法19条
国税通則法68条