【質問】 歯科医師Aは本年死亡し、社団法人○○県歯科医師会から福祉共済金(死亡共済金)400万円が、妻Bに支給された。
この場合、支給された死亡共済金は、相続財産と判断してよいか。
なお、福祉共済制度の概要は次のとおりである。
○ 負担金(月額) 9,000円
○ 支給原因 会員の死亡、火災等の災害及び重度障害
○ 中途脱会でも負担金の返還はない(掛け捨て)
○ 死亡共済金の支給は会員の指定した受給権者又は法定相続人
○ 当制度の負担金は、「○○県歯科医師会福祉共済基金」として別会計とする
【回答】 当該死亡共済金は、妻Bの一時所得になる。
また、一時所得の金額の計算上、Aの支払った負担金は控除できない。
【関連情報】 《法令等》 所得税法34条
所得税法施行令183条2項
所得税法施行令183条3項
相続税法3条1項1号
相続税法施行令1条1項
相続税法施行令1条2項
所得税基本通達34-4
【解説】 本件の死亡共済金は、受給権は会員の指定した者(指定した者がいない場合は法定相続人)にあり、死亡した会員に帰属した後に相続されるものではありませんので、本来の相続財産ではありません。
また、相続又は遺贈により取得したと見なされる生命保険金については、相法3条1項一号及び相令1の2条1項、2項に規定するものに限定されているところ、本件死亡共済金はいずれにも当たらず、みなし相続財産にも該当しません。
1 所得区分について
この共済一時金は、会員の死亡という偶発的な事由により会員ではなく受給権者に支給されるものであり、労務や役務の対価性もなく資産の譲渡の対価としての性質も有していないことから、受給者の一時所得に該当するものと考えられます(所法34条)。
2 一時所得の収入金額から共済掛金を控除することの可否について
一時所得は、その発生原因が単発で個別性が強いので、一般的な必要経費の概念はなく、「その収入を生じた原因に伴い直接要した金額」を控除することとしており(所法34条)、厳密な個別対応方式をとっています。
そこで、当該共済掛金の性質は、中途返戻金のないいわゆる掛け捨てであり、火災や重度の障害に対しても共済金が支払われることになっています。そうしますと、この掛金の内、死亡共済金の原資として積み立てられている部分の金額とそれ以外の部分の金額(災害や重度障害の給付積立金)とに明確に区分できるかどうかが判断基準になろうかと思われます。一般の生命保険金等の場合は、積立金部分を掛金として一時所得の収入金額から控除するのですが、掛け捨てという性質上、この掛金(負担金)を積立金と見なすことはできず、火災等の災害等にも支払われることから個別対応(死亡共済金と掛け金)は無理となります。
また、所基通34-4において、支払を受ける者以外の者が負担した保険料等であっても、一時所得の収入金額から控除できる取扱いになっていますが、これは所令183条3項に規定される生命保険契約等についての取扱いですので、本件の共済金は該当しません。
したがって、本件共済金の掛金は所法34条2項の「収入を得るために支出した金額」には該当せず、本件の死亡共済金に係る一時所得の収入金額から控除することはできないものと考えます。
なお、今回は「○○県歯科医師会」の福祉共済制度に基づく死亡共済金についての回答ですが、他の歯科医師会からの死亡共済金についても、同様の考えで判断することになろうかと思いますので、福祉共済制度の内容(規約等)を十分に検討する必要があります。