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相続により取得した建物の減価償却の計算について

【質問】  被相続人である父が平成9年7月に賃貸マンションを取得し、事業の用に供していたが、平成20年6月15日に死亡した。このマンションは長男である私が相続したが、建物の減価償却はどのように計算するのか。
   構造        鉄筋コンクリート
   取得年月      平成9年7月
   取得価額      200,000,000円
   未償却残額     117,089,595円
   被相続人の償却方法 定率法

【回答】  単純承認に係る相続により取得した減価償却資産は、被相続人が引き続き所有していたものとみなし、取得価額、取得時期を引き継ぐこととされています(所令126条2項)。
 また、償却方法については、所令120条の2第1項一号において、平成19年4月1日以後に取得した建物の償却方法は定額法に限ることとされ、この場合の「取得」には相続による取得も含まれることとされています(所基通49-1)。
 したがって、相続が開始した平成20年分のあなたの減価償却費の計算は、次のとおりです。
200,000,000×0.022×7/12=2,566,666円
年末未償却残額=117,089,595-2,566,666=114,522,929円
(注)1 償却率の0.022は、耐用年数47年の定額法による償却率です。
   2 償却の月数に1月未満の端数がある場合は、1月とします(所令132条2項)。

【関連情報】 《法令等》 所得税法49条
所得税法60条
所得税法施行令120条
所得税法施行令126条
所得税基本通達49-1
所得税基本通達49-20

【解説】  所令126条2項は、相続により取得した減価償却資産の取得価額及び取得時期を引き継ぐ旨を規定していますが、償却方法を引き継ぐことまでは規定されておりません。相続による減価償却資産の「取得」も、自己の購入や建設による「取得」と同様に、所令120条の2第1項の取得に含まれる(所基通49-1)ことから、償却方法は所令120条の2の規定により、相続人が選定する方法によって減価償却費の計算をすることになります。
 次に、平成19年4月1日以後に取得した建物の償却方法は、定額法とされ、定額法による減価償却の計算は、「当該減価償却資産の取得価額にその償却費が毎年同一となるように当該資産の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算した金額を各年分の償却費として償却する方法をいう」(所令120条の2第1項一号と定義されています。
 つまり、定額法は、取得価額をベースに各年均等に償却することになり、この場合の取得価額は、被相続人から引き継いだ200,000,000円であり、被相続人の未償却残高117,089,595円ではありません。
 なお、所基通49-20は、事業の用に供していた減価償却資産の償却方法を定率法から定額法に「変更」した場合の計算であり、相続による「取得」は、自己の建設や購入による取得と同義であり、「変更」にはなり得ないことから、適用されません。
(参考)
 裁決事例集No.67 P299 大蔵財務協会
 東京高裁平成18年4月21日判決平成18年(行コ)第13号

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