【質問】 私(A)は、個人タクシーを営む者ですが、約5年間使用していたタクシーを平成21年10月20日に廃車し、同日、これに代わるエコカーを350万円で購入して事業を継続しています。翌年2月3日に当該エコカーに係る補助金10万円が指定銀行口座に振り込まれましたが、この補助金は、タクシー事業に係る収入金額として計上するのでしょうか。
【回答】 Aさんが交付を受けたエコカー補助金10万円は、平成22年分の事業所得に係る総収入金額に算入すべき金額となりますが、このエコカー補助金は国庫補助金ですので、所得税法42条1項の規定により総収入金額不算入となります。
この場合、総収入金額不算入とした補助金は、新たに取得したタクシーの取得価額から控除し、当該補助金控除後の取得価額を基礎として減価償却費の計算を行うことになります。
【関連情報】 《法令等》 所得税法42条1項
所得税法42条5項
所得税法49条
所得税法施行令90条
所得税法施行令120条の2
所得税法施行令131条
所得税法施行令134条1項2号イ
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)5条
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)6条
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)8条
経済産業大臣が定めた環境対応車普及促進対策費補助金交付要綱3条
環境対応車普及促進対策費補助金の応募要領(平成21年6月19日付 一般社団法人次世代自動車振興センター)
【解説】 1 エコカー補助金とは
エコカー補助金とは、環境性能に優れた新車への買替・購入を促進することにより、環境対策と景気対策を効果的に実現することを目的に導入された「環境対応車普及促進対策費補助金」の通称名ですが、この補助金は、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)」等に基づき、経済産業省から委託を受けた「一般社団法人次世代自動車振興センター」(以下「自動車振興センター」といいます。)を通じて交付される国庫補助金です。
このエコカー補助金を非課税とする規定はありませんので、基本的には各種所得金額の計算上総収入金額に算入すべき金額となります。
2 エコカー補助金に係る所得税法42条の適用
エコカー補助金については、まず該当する車両を購入した者が同補助金の交付申請をした後、その審査を経て補助金額の決定・交付を受けるということですので、目的とするエコカーの取得が先になり、同補助金は後に支払われるということで、文理上、所得税法42条1項に規定する要件に適合しないのではという考え方もあります。
しかし、この点については、エコカー取得と同時にエコカー補助金の交付申請を行うことから、事実上、同補助金の交付を受けることを前提としたエコカー取得であり、手続きの関係でたまたま同補助金の交付だけが遅れているにすぎないという見方もできます。
したがって、エコカー補助金については、所得税法42条1項の適用要件を満たしていると考えられます。
3 エコカー補助金の総収入金額に計上すべき時期
エコカー補助金交付のための審査、決定、支払までの一連の業務は、自動車振興センターで執り行われますが、エコカー補助金の各種所得金額の計算上総収入金額に計上すべき時期は、その収入すべき権利が確定した日、すなわち同センターで交付の適否・金額等が決定された日ということになるものと考えます。
4 Aさんの課税関係
Aさんの場合、事業所得を生ずべき事業用資産(タクシー)としてのエコカー取得ですので、エコカー補助金10万円は、事業所得に係る総収入金額不算入とし(所法42条1項)、減価償却費の計算の基礎となる取得価額は、同補助金10万円を控除した金額340万円(350万円-10万円)となります(所法42条5項、所令90条)。
なお、Aさんの場合、エコカー補助金10万円の総収入金額に計上すべき時期は、上記3のとおり、自動車振興センターで補助金の交付が確定した日(一般的には、補助金が指定口座に実際に振り込まれた2月3日の約2週間前の日と考えます。)の属する年分、すなわち平成22年分ということになりますが、Aさんは、エコカーを実際に取得した平成21年10月20日には事業の用に供していますので、平成21年分の減価償却費の計算は、国庫補助金等の総収入金額不算入とする所得税法42条1項適用前の取得価額350万円を基礎として計算を行い、平成22年分以後の減価償却費の計算は、同項適用後の取得価額340万円を基礎として計算した額となります。
(耐用年数5年とした場合の減価償却費の計算)
1年目(21.10〜12)
3,500,000×0.2×(3/12)=175,000
(175,000)
(注)かっこ書の数字は、減価償却費の累計額です(以下同じ。)。
2年目〜5年目
3,400,000×0.2=680,000
(2,895,000)
6年目(26.1〜9)
3,400,000-2,895,000-1=504,999
(3,399,999)