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《税務質疑応答》開業した際の確定申告と少額減価償却資産の特例について

Q.

私は今年7月に、個人でパン屋を開業する予定で準備を進めています。開業にあたり設備等をいくつか購入する際に、メーカーから「取得価額が10万円以上30万円未満の資産は、その取得価額の合計額が300万円に達するまでは、その年の必要経費に算入できるという特例がある」と聞きました。
私はパン製造機器等、上記金額の範囲内にあるものを10点ほど購入する予定で、この特例をぜひ利用したいと思っています。実際に私は適用を受けることができるのでしょうか。

なお、私は青色申告承認申請書を法定期限内に提出する予定です。

A.

ご相談の場合、租税特別措置法に規定されている「中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例」を適用できます。
ただし、7月の開業“予定”であることから、仮に7月に開業した場合、開業年の必要経費算入限度額は300万円ではなく、150万円となりますのでご注意ください。

[解説]
1.「中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例」とは
所得税法上、減価償却資産について必要経費に算入できる金額は、法定の計算方法により計算した償却限度額までとされています。

ただし、中小事業者(※1)については、より多くの金額を必要経費に算入できる特例が設けられています。この特例のことを「中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例」といいます。

その特例の適用を受けるための具体的な要件は、下記の通りです。
A. 中小事業者が、青色申告書を提出していること
B. 中小事業者が、平成32年3月31日までの間に取得等し、業務の用に供した減価償却資産であること
C. その減価償却資産の取得価額が、30万円未満であること(※2)
以上の要件を満たす場合には、その減価償却資産(以下「少額減価償却資産」といいます。)については、その少額減価償却資産の取得価額相当額を、その中小事業者のその業務の用に供した年分の事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入することができることとされています。

※1 常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人をいいます。
※2 取得価額が10万円未満であるもの等を除きます。

2.少額減価償却資産の特例の限度額

この少額減価償却資産の特例には、その年分における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円に達するまで、という限度額が設けられています。

ただし、その業務の用に供した年が、業務を開始した年であったり、業務を廃止した年であったりした場合には、上記の限度額は縮小されます。

具体的には、それらの年については、業務を営んでいた期間に応じて300万円を月数按分計算した金額が限度となります。

ご相談では7月開業予定とのことですから、仮に7月開業とした場合、

 300万円×6/12=150万円

がこの特例の限度額となります。

なお、この特例の適用を受けるためには、確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付すること等が必要とされています。

上記のように、開業初年度の所得税の確定申告には注意を要する点が非常に多く存在しますので、税金の専門家である当事務所に、ぜひご相談ください。

[根拠法令等]
措法28の2、措令5の3⑨など

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