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《税務質疑応答》判例からみるロータリークラブ年会費の事業所得の経費性について

〇弁護士が支払ったロータリークラブの年会費は事業所得の計算上必要経費には該当せず家事費に当たるとした事例
1.事案の概要
本件は、弁護士である原告が、Aクラブ(以下「本件クラブ」という。)の年会費(以下「本件会費」という。)を諸会費又は接待交際費として、原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入して、平成24年分ないし平成26年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税又は所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の確定申告及び修正申告をしたところ、長野税務署長が、本件会費は、原告の事業所得の金額の計算上必要経費とは認められないとして、平成27年10月21日付けで、平成24年分の所得税について更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を、平成25年分の所得税等について更正処分を、平成26年分の所得税等について更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をそれぞれした(以下、平成24年分の所得税についての更正処分並びに平成25年分及び平成26年分の所得税等についての更正処分を併せて「本件各更正処分」といい、平成24年分及び平成26年分の過少申告加算税賦課決定処分を併せて「本件各賦課決定」という。)ことから、原告が、被告に対し、本件各更正処分のうち、原告が修正申告の際に申告した納付すべき税額を超える部分及び本件各賦課決定の取消しを求める事案である。

 

2.本判決の要旨
(1) 必要経費の意義・範囲
所得税法(法)37条1項が、事業所得の金額の計算上必要経費の算入を認めている趣旨は、総収入金額のうち、課税対象を所得に限定し、投下資本の回収部分に課税が及ぶことを避けるためであると解される。この点、個人は、日常生活において事業による所得の稼得活動のみならず、所得の処分としての私的な消費活動も行っているところ、所得の処分としての私的な消費活動は、投下資本の回収とは無関係であるから、所得に対して適切に課税をするためには、事業所得の金額の計算に当たり、投下資本の回収部分である必要経費と所得の処分である家事費とを明確に区別する必要がある。そこで、法37条1項は、一般対応の必要経費について、所得を生ずべき業務について生じた費用であるとし、法45条1項は、家事費及び家事関連費で政令に定めるものは必要経費に算入しない旨規定し、同条項を受けた施行令96条は、必要経費として算入される家事関連費について、経費の主たる部分が事業所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分できるもの(同条1号)又は事業所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされるもの(同条2号)であることを要する旨規定している。上記各規定に照らせば、個人の支出のうち、事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、支出が事業に係る収入を生み出す業務に直接関連して支出されたものであり、当該業務の遂行上必要なものに限られるというべきである。そして、上記関連性及び必要性の判断は、関係者の主観的判断を基準とするのではなく、客観的に判断されるべきである。
(2) 本件会費の必要経費該当性について
本件クラブの会員は本件会費を納入する義務を負っており、本件会費を納入しなければ、本件クラブの会員としての地位を失うこと、本件会費の大半が、本件クラブの運営費及び委員会運営費として用いられていたことからすれば、本件会費は、本件クラブの会員が本件クラブで活動するために納入されるものということができる。そして、本件クラブの会員は、奉仕の理念の奨励という目的に従って、各種の奉仕活動を行うとともに、会員に義務付けられている例会への出席、所属する委員会での活動、会員同士の親睦を深めるためのレクリエーション活動、各種行事に参加しており、原告も、本件クラブの会員として、上記例会等へ参加し、また、本件各会計年度において、本件クラブの委員会に所属し、各委員会の事業計画にあるような活動を行っていたと認められる。したがって、原告が支出した本件会費は、原告が本件クラブにおいて、上記のような活動をするために納入されたものであり、上記の原告の本件クラブでの活動の目的及び内容に照らせば、本件会費の支出は、法律事務を行う弁護士としての原告の経済活動と直接の関連を有し、客観的にみて当該経済活動の遂行上必要なものということはできない。そして、上記の原告の本件クラブでの活動の目的及び内容に照らせば、本件会費は、弁護士の経済活動の一環として支出されるものではなく、消費経済の主体である一個人として行われる消費支出として、家事費に該当するというべきである。
また、本件クラブにおいて原告が活動することによって、本件会費に原告の業務の遂行上必要なものが一部含まれていて、家事関連費に該当するとしても、本件クラブの会員としての活動は、本件クラブの掲げる奉仕の理念に従い、奉仕活動を行うことや懇親を深めることに主眼が置かれるものであるから、本件会費はその主たる部分が原告の弁護士としての事業所得を生ずべき業務の遂行上必要なものということはできない。さらに、本件会費のうち原告の弁護士としての業務の遂行上必要である部分を明らかに区別することはできず、他にかかる区分を可能ならしめるに足りる証拠もない。したがって、仮に、本件会費が、その中に原告の業務の遂行上必要なものが一部含まれていて、家事関連費に該当すると解したとしても、これを事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。

 

3.参考
過去の争訟事件におけるロータリークラブの年会費が事業所得計算上の必要経費に当たるかが争われたものは、確認できているものとしては、裁決事例3件、裁判事例1件(本件)のみであるが、裁決事例では公認会計士が争ったもの(昭58.1.27裁決)、司法書士が争ったもの(平17.4.26裁決、平26.3.6裁決)があり、いずれも事業所得に係る必要経費性が否定されている。本判決に係る原告は弁護士であるが、このような事業を営む者が支払うロータリークラブの年会費が、司法判断として事業所得に係る必要経費性が否定されたのは本件が初めての事例であり、実務上参考となる。
なお、本件に係る控訴審判決(東京高判令1.5.22)は、一審の判断の大部分を引用しほぼ同様の判断により、控訴人(原告)の主張を排斥しており、その上告審に係る上告及び上告受理申立てに対しては、上告理由に当たらないとして棄却するとともに、不受理決定がなされている。
(長野地方裁判所平成30年9月7日判決・LEX/DB25565507)
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