みなさんは、“介護食”と聞いて、どんな食事を思い浮かべますか? ほとんどの人が、普通の食事を細かく刻んだものやミキサーにかけてつぶした流動食のようなものをイメージされると思います。はっきり言って、見た目や味は二の次になりがち。自分がいま何を食べているのかわからないといった味気のない食事…。
しかし、いくら噛む力や飲み込む力が弱くなっても、普段の食事の延長線上にあるような料理を、美味しく、楽しく、安全にいただきたいという願いは強いもの。そこで最近は、栄養バランスはもとより、味や視覚的にもこだわった「介護食」が、大小の食品メーカーから続々と登場しています。
食品メーカー各社は、2002年に「日本介護食品協議会」をつくり、「ユニバーサルデザインフード(UDF)」という介護食の基準を設けました。食材の硬さによって、「区分1=容易に噛める」「区分2=歯ぐきでつぶせる」「区分3=舌でつぶせる」「区分4=噛まなくてよい(ペースト食)」と、一般食に近い状態の順で4段階に区分されており、商品パッケージにもはっきりと明記されるようになりました。
キューピーの「やさしい献立」シリーズは、「赤魚と根菜の煮付け(250円)」「肉だんごの和風あんかけ(250円)」「やわらかごはん 赤飯風(180円)」「なめらか野菜 かぼちゃ(150円)」など、UDFの区分ごとに約40種類のメニューが揃っています。
“形のある介護食”にこだわるメーカーもあります。
普通の料理のように形があるのに、上あごと舌でつぶれるほど軟らかく、しかも食べやすくムセにくいように仕上げてあるのが、「カムウエル」の冷凍パック。和・洋・中のシリーズが揃っていて、12分の湯煎で簡単調理。香りまでパックされた介護料理です。
高齢者向け宅配弁当の「エックスヴィン」の介護食も、形を普通食と同じように残しながら軟らかく、風味や色も味わえる製法が施されています。
今年4月には、マルハニチロホールディングスから、冷凍介護食の新ブランド「メディケア食品」が登場します。レンジや流水解凍で手軽に調理できるムースタイプの「やわらか食」シリーズで、「赤魚ムース煮付け」「鮭ムースクリーム煮」「いかムースチリソースがけ」「抹茶ようかん」など、約20品が500円前後で発売されます。
政府の「高齢社会白書」によると、3年後には65歳以上の人口の割合が25%、つまり4人に1人が“高齢者”の時代に!
今後も成長が続くことが容易に想像される超有望市場「在宅向け介護食」。一流シェフが調理する高級介護食も現れたりと、大小メーカー入り乱れての闘いはますます激しさを増していくようです。