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社員旅行費用の経理処理の判断ポイントは?

Q1
 会社が負担した慰安旅行費用を福利厚生費として処理したいのですが、注意すべき点があったら教えてください。

A1
 平成不況のなか、社員旅行を実施する企業もなかなか見かけなくなりましたが、会社の創立記念行事としてや、不況といえども社員の息抜きは欠かせないといった理由で社員旅行を敢行する企業も少なくありません。また、各旅行会社がしのぎを削る「激安ツアー」を利用して、海外まで足を伸ばすケースも珍しくありません。
 会社が社員の慰安のために実施した旅行費用を負担した場合、その負担額は通常「福利厚生費」として取り扱われ、法人税の計算上、損金として経費算入が認められます。ただし、社員旅行という名目であれば、すべて福利厚生費として取り扱うことが認められるわけではありません。まず、その実態により、福利厚生費に該当するものか否かの判断を行なわなければなりません。

「福利厚生費」に該当しないもの

 成績優秀社員に対する表彰旅行、予算達成のインセンティブとして賞与に代えて行なう旅行など、1. 労務の対価としての性格が強い旅行、2. 役員、幹部社員等特定のポスト以上の社員を対象として行なうもの、3. 換金性のある旅行券、クーポン券の供与や不参加者に対する旅行費用相当額の金銭の支給――これらは、明らかに福利厚生の一環としては認められず、給与または賞与として取り扱われます。したがって、源泉徴収を行なう必要が生じます。これが役員に対するものであれば、法人税の計算上、役員賞与として損金不算入とされます。
 また、販売金額、数量等に応じて取引先を招待する旅行など、売上割り戻し的性格を有するものについては「接待交際費」として取り扱われます。ご承知のように接待交際費であれば法人税の計算上、一部損金不算入の規定があります。
 さらに、社員に対する経済的利益についての判断も必要です。
 会社が社員のリクリエーションのために旅行等の費用を負担した場合、会社は社員に対して経済的利益の供与をしたこととなります。この経済的利益については、本来、給与または賞与として取り扱われるべきものですが、その旅行等が「社会通念上一般的に行われていると認められる程度もの」であれば、福利厚生費として取り扱われることが認められています。社員慰安旅行の場合、この「社会通念上」の判断は、まず、その旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、参加割合・会社及び参加者の負担額及び負担割合などを総合的に勘案して、実態に即した経理処理を行なうこととされています。しかし次のいずれの要件も満たしている場合には、会社が負担した費用につき、原則として、給与又は賞与として取り扱わなくてもよいこととされています。

(1)
旅行期間が4泊5日(海外の場合は現地4泊)以内であること

(2)
参加人数が全社員の50%以上であること

 ただし、これらの要件を満たしていたとしても、必ずしも福利厚生費として経理処理できるといったものではありません。会社負担費用が高額な、いわゆる豪華旅行と呼ばれるものについては、これらの要件を満たしていたとしても給与又は賞与扱いとなります。
 期間帰属についての経理処理についても注意が必要です。
 一般に旅行費用は旅行前に払い込んでしまうものが多いと思います。支払が当期、旅行が翌期となるようなケースでは、払い込んだ事業年度における経費算入は認めらず、仮払金や前払金として処理しなければなりません。また、事業年度をまたぐ旅行のケースでは、今期中に使った分として、交通費、宿泊費などが明確に区分されている場合には、当事業年度でのその部分の経費算入は認められます。しかし、いわゆるパッケージ旅行の場合には、旅行が終了した時点、つまり翌事業年度にて全額経費算入となります。
 社員旅行に関する経理処理は、税務調査でもっともマークされやすい項目の一つです。実態の証明として、現地における集合写真も用意しておくなど細部にわたり万全を期してください。

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