Q1
最近、「協同労働」という言葉を新聞などで目にするようになりました。法案化が検討されているそうですが、どのような制度なのか詳しく教えてください。
A1
現在、日本には農業協同組合(農協)や、生活協同組合(生協)などの協同組合があります。これらの協同組合は法律によって法人格を持って活動しています。
現在、超党派の議員連盟で議論されている「協同労働の協同組合法案(仮称)」では、協同労働とは、働く意思のある者たちが協同で事業を行うために出資をし、協同で経営を管理し、あわせて協同で物を生産またはサービスを提供する働き方と定義しています。
協同労働を行うための組織を協同労働の協同組合といい、組合は法人とする案となっています。組合が法人格を持つことで、組織としても、働く組合員にとっても、社会的な信用が得られて活動がしやすくなり、活動の趣旨も認知されるようになります。
また、法人税率が軽減されるメリットもあります。主婦、若者、高齢者などが地域密着型の事業を起こすことで、地域社会の活性化や雇用創出に寄与することが期待されています。
企業に正規雇用されていないフリーター、働いても収入が少ないワーキングプア、定年退職した高齢者などが働く機会を得ることで、自分たちで生計を立てられるようにする新しい働き方であり、「脱貧困対策」としても注目を集めています。要するに自らが担い手となって働く場所を創造することができるということであり、働きがい、生きがいづくりにつながります。
組合の設立は協同労働に従事する組合員になろうとする3人以上が発起人となり、役員として理事を2人以上、監事を1人以上置くこととすることになっています。
組合員の資格
協同労働の事業としては、地域密着型の事業として、公園の緑化・清掃事業、子育て支援事業、介護事業、農産物の加工販売業、地域資本を活用した観光事業、農村と都市との交流事業などが考えられています。
組合員の資格は、議員連盟の法案では(1)協同労働に従事する者(従事組合員)、(2)無償ボランティア(ボランティア組合員)、(3)組合の提供する物またはサービスを利用するのみの者(利用組合員)、(4)組合の目的に賛同し出資だけを行う者(出資組合員)、(5)組合業務に関与する地域団体またはその構成員――などが組合員となれることになっています。
民間企業の場合の「雇用者と非雇用者」という関係ではなく、働く人が出資者と経営者を兼ねる形のため、生活協同組合(生協)の労働版とも言われています。
協同労働に従事する組合員(従事組合員)の法的地位については、雇用保険では組合を適用事業所の事業主とみなして、雇用保険法を適用し、被保険者とするとしています。労災保険についても同様に適用対象とすることにしています。これにより、失業した際や労災事故で怪我をしたときなどについては、労働者として保護されることになります。
また、ボランティア組合員についても労災保険については、適用対象となり、保険給付を受けられることとしています。
組合員は、出資口数にかかわらず、平等に1人1票の発言権を持つので、給与についても全員協議によって決定されることになります。協同労働という働き方を支援する超党派の議員連盟会長の坂口力元厚生労働相は、今国会での成立を目指すことを表明しています。