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適格退職年金廃止への対処法について

Q1

 適格退職年金が平成24年に廃止されると聞きましたが、具体的にどう対応すればよいのでしょう。(サービス業)

A1

 適格退職年金は昭和37年に税制上優遇措置のある退職金制度の外部積立として創設されました。この制度や厚生年金基金などにより、退職金を一時金で支給する方式から企業年金へ移行する動きが活発化しました。しかし、バブル経済崩壊により資産運用は悪化し、雇用環境の変化もあり、企業年金制度の見直しが図られました。

 確定拠出年金や確定給付企業年金という新しい制度が創設され、適格退職年金は、平成24年3月末日に廃止されることになりました。

 適格年金の移行の選択肢として、まず、解約して退職金制度を廃止する方法があります。ただし、精算した際の還付金は事業主に支給されるのではなく、従業員へ支給されます。従業員へ支給される分配金は、退職所得控除が受けられず一時所得として課税されます。また、適格年金を解約しても、退職金規定が自動的に無効になるわけではないので、別途廃止の手続きが必要です。退職金制度の廃止は、労働条件の不利益変更にあたるため、労働者の同意や代償措置を講じて進めていく形となります。

 第2に、中小企業退職金共済(中退共)へ移行する方法があります。中退共とは、掛金月額5000円(短時間労働者2000円)以上3万円以下の範囲内で事業主が従業員ごとに掛金を選択・拠出し、退職金は従業員へ直接支給される制度です。

 適格年金契約をしている事業主が、平成14年4月から平成24年3月までに新たに中退共に加入した場合、適格年金契約の移行は全額を独立行政法人勤労者退職金共済機構に引き渡すことができます。具体的には、個人別の分配金を中退共に移行し、分配金に見合った加入期間が付加されるという移行方法となります。

 ただし、加入できる中小企業は、一般業種(製造業、建設業等)は常用従業員数300人以下または資本金3億円以下、卸売業は100人以下または資本金1億円以下、サービス業は100人以下または資本金5000万円以下、小売業は50人以下または資本金5000万円以下、であることが条件です。

 第3に、確定拠出年金(401K)への移行があります。確定拠出年金は、事業主が決まった額の掛金を拠出し、従業員が自己責任で運用をし、原則60歳以降に老齢給付金として支給される制度です。確定拠出年金への移行の場合は、積立不足がないことが条件です。積立不足がある場合には、一括拠出で不足金を払い込むか、給付水準を減額するなどの方法があります。

 第4に、確定給付企業年金への移行があります。この制度は給付が原則60歳〜65歳(例外措置あり)で支給期間は5年以上なので、退職後すぐに支給する制度を修正する必要がありますが、積立不足でも移行は可能です。掛金は原則として事業主負担です。なお、積立不足が生じた場合、一定期間内に不足が解消されるよう掛金を拠出しなければなりません。

 第5に、厚生年金基金への移行があります。この制度は、公的年金の老齢年金の3階部分にあたるものなので、掛金額が厚生年金の保険料を算出する際の標準報酬月額をもとに算出されます。このため、適格年金制度との適合は難しいものになります。

 以上が主な移行ですが、移行は検討開始から行政の認可・承認まで1年半から2年程度かかるため、方針を決定すべき時期にあります。

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