平成23年税制改正大綱、閣議決定(2010/12/16)所得税等サマリー

- 平成23年度税制改正大綱を閣議決定 -

  政府は、16日、平成23年度税制改正大綱を閣議決定しました。
  大綱によれば、デフレ脱却や雇用の確保などの観点から、国と地方を合わせた法人税の実効税
 率を約5%引き下げるとともに、雇用を増やした企業の減税をする雇用促進税制を創設します。
  その一方では、「格差是正」の観点から個人の所得税や相続税では、高額所得者、高額財産家
 等を中心に増税を実施することとしています。
  23年度税制改正大綱のポイントは、次のとおりです。
 
 1.納税環境整備
 (1)納税者権利憲章の策定
 〔国税〕
   納税者の立場に立って、申告・納税をサポートするために提供されるサービス、税務手続に
  係る納税者の権利利益や納税者・国税庁に求められる役割・行動、国税庁の使命や税務職員の
  行動規範等を内容とする「納税者権利憲章」を策定し、平成24年1月1日に公表します。
 〔地方税〕
   国税における「納税者権利憲章」の策定を踏まえて対応を行います。
 (2)税務調査手続
   調査手続の透明性と納税者の予見可能性を高め、課税庁の納税者に対する説明責任を強化す
  る等の観点から、
  イ 税務調査を行う場合には、原則として(税務署長等が、正確な事実の把握を困難にする等
   のおそれがあると認める場合を除き)、調査の開始日時・場所、調査の目的、調査の対象と
   なる帳簿書類等を、文書で、納税者本人、調書提出者及びその代理人に対して事前に通知す
   ることとし、
  ロ 調査終了時においては、調査の結果(非違の内容、金額、理由)等を説明し、それらを簡
   潔に記載した文書を交付し、又は、「その時点で更正・決定等をすべきと認められない」旨
   を記載した文書を交付する、
  などのことを行うこととします。
 (3)更正の請求
 〔国税〕
   法定外の手続により課税庁に対して減額変更を求める「嘆願」という実務慣行を解消し、納
  税者の救済と課税の適正化・制度の簡素化を図る観点から、
  イ 更正の請求を行うことができる期間を(現行1年)を5年(贈与税及び移転価格税制に係
   る法人税に係る更正の請求については6年、法人税の純損失等の金額に係る更正の請求につ
   いては9年)に延長し、併せて、増額更正を行うことができる期間を5年に延長する(脱税
   に係る増額更正については現行の7年を存置)、
  ロ 当初申告時に選択した場合に限り適用が可能な「当初申告要件」のある措置について見直
   しを行ったところで、更正の請求の範囲を拡大する、
  ハ 故意に内容虚偽の更正の請求書を提出した場合についての処罰規定(1年以下の懲役又は
   50万円以下の罰金)を設ける、
  などの措置を講ずることとします。
 〔地方税〕
  イ 納税者の救済と課税の適正化とのバランス、制度の簡素化の観点から、
  (イ)納税者が「更正の請求」を行うことができる期間(現行1年)を5年に延長します。
  (ロ)併せて、課税庁が増額更正できる期間(現行3年のもの)を5年に延長します。
     これにより、基本的に、納税者による修正申告・更正の請求、課税庁による増額更正・
    減額更正の期間を全て一致させることとします。
    (注)脱税の場合の課税庁による増額更正期間(現行7年)は、現行どおり存置します。
  ロ 故意に内容虚偽の更正の請求書を提出した場合を処罰する規定を設けることとする。法定
   刑は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金とします。
 (4)理由附記
    処分の適正化と納税者の予見可能性の確保の観点から、全ての処分について、原則として
   平成24年1月より理由附記を実施します。
    ただし、個人の白色申告者に対する更正等に係る理由附記については、記帳・帳簿等保存
   義務の拡大と併せて実施することとします。
 (5)租税罰則の見直し
    経済社会状況の変化に対応し、税制への信頼の一層の向上を図る観点から、租税に関する
   罰則について、所要の措置を講じます。
 (6)その他
    事前照会に対する文書回答制度及び還付加算金の計算期間の見直しを行い、法定調書の光
   デスク等による提出義務を創設し、官公署等に対する協力要請(照会)規定を整備するほか、
   「保険年金」に係る最高裁判決を受けた対応として、相続又は贈与等に係る保険年金の保険
   金受取人等に対する特別還付金を支給するための措置及び更正の請求についての特別措置を
   講ずることとします。
 
 2.個人所得課税
 (1)給与所得控除の見直し
   ① 給与所得控除の上限設定
     その年中の給与等の収入金額が1,500万円を超える場合の給与所得控除額について
    は、245万円の上限を設けます。
   ② 役員給与等に係る給与所得控除の見直し
     その年中の給与等のうち、給与等の支払者の役員等が、当該給与等の支払者から役員等
    の職務に対する対価として支払を受けるもの(以下「役員給与等」といいます。)の収入
    金額が2,000万円を超える場合の当該役員給与等に係る給与所得控除額については、
    次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額とします。
    イ その年中の役員給与等の収入金額が2,000万円を超え2,500万円以下の場合
     245万円からその年中の役員給与等の収入金額のうち2,000万円を超える部分の
     金額の12%相当額を控除した金額
    ロ その年中の役員給与等の収入金額が2,500万円を超え3,500万円以下の場合
     185万円
    ハ その年中の役員給与等の収入金額が3,500万円を超え4,000万円以下の場合
     185万円からその年中の役員給与等の収入金額のうち3,500万円を超える部分の
     金額の12%相当額を控除した金額
    ニ その年中の役員給与等の収入金額が4,000万円を超える場合125万円
   (注)「役員等」とは、次に掲げる者をいいます。
     1 法人税法第2条第15号に規定する役員
     2 国会議員及び地方議会議員
     3 国家公務員(特別職に属する職員のうち一定の者又は一般職に属する職員のうち指
      定職に該当する者に限ります。)
     4 地方公務員(上記3に準ずる者に限ります。)
   ③ 特定支出控除の見直し
     特定支出控除について次の見直しを行います。
    イ 特定支出の範囲の拡大
     特定支出の範囲に次に掲げる支出を追加します。
    (イ) 職務の遂行に直接必要な弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの資格取得費
    (ロ) 職務と関連のある図書の購入費、職場で着用する衣服の衣服費、職務に通常必要な交
     際費及び職業上の団体の経費(勤務必要経費)
    (注)その年中に支出した勤務必要経費の金額の合計額が65万円を超える場合には、
      65万円を限度とします。
    ロ 特定支出控除の適用判定・計算方法の見直し
      その年の特定支出の額の合計額が、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める
     金額を超える場合(現行:給与所得控除額を超える場合)は、その超える部分の金額を
     給与所得控除額に加算することができることとします。
    (イ) その年中の給与等の収入金額が1,500万円以下の場合その年中の給与所得控除額
     の2分の1に相当する金額
    (ロ) その年中の給与等の収入金額が1,500万円を超える場合125万円
   ④ その他
     給与所得控除の見直しに伴い、役員給与等と役員給与等以外の給与等がある場合の給与
    所得の計算方法、給与等に係る源泉徴収税額の計算方法、給与所得の源泉徴収税額表(月
    額表、日額表)、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表及び年末調整のための給与所得
    控除後の給与等の金額の表並びに給与所得の源泉徴収票の記載事項及び様式などについて
    所要の措置を講じます。
   (注)上記の改正は、平成24年分以後の所得税及び平成25年度分以後の個人住民税につ
     いて適用します。
 (2)退職所得課税の見直し
   ① 役員退職手当等に係る退職所得の課税方法の見直し
     その年中の退職手当等のうち、退職手当等の支払者の役員等(役員等としての勤続年数
    が5年以下の者に限ります。)が当該退職手当等の支払者から役員等の勤続年数に対応す
    るものとして支払を受けるもの(以下「役員退職手当等」といいます。)に係る退職所得
    の課税方法について、退職所得控除額を控除した残額の2分の1とする措置を廃止します。
   (注)「役員等」とは、次に掲げる者をいいます。
     1 法人税法第2条第15号に規定する役員
     2 国会議員及び地方議会議員
     3 国家公務員及び地方公務員
   ② その他
     役員退職手当等に係る退職所得の課税方法の見直しに伴い、役員退職手当等と役員退職
    手当等以外の退職手当等がある場合の退職所得の計算方法、退職手当等に係る源泉徴収税
    額の計算方法並びに退職所得の源泉徴収票の記載事項及び様式などについて所要の措置を
    講じます。
   (注)上記の改正は、平成24年分以後の所得税について適用します。個人住民税は、平成
     24年1月1日以後に支払われるべき退職手当等について適用します。
  〔地方税〕
   ① 退職所得に係る10%税額控除の見直し
     退職所得に係る個人住民税の10%税額控除を廃止します。
   (注)上記の改正は、平成24年1月1日以後に支払われるべき退職手当等について適用し
     ます。
 (3)成年扶養控除の見直し
  〔国税〕
   ① 成年扶養控除の対象の見直し
     居住者が次に掲げる成年扶養親族(扶養親族のうち、年齢23歳以上70歳未満の者を
    いいます。以下同じです。)を有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額等か
    らその成年扶養親族1人につき、38万円を控除することとします。
    イ 特定成年扶養親族
    ロ 特定成年扶養親族以外の成年扶養親族(その年の合計所得金額が400万円以下であ
     る居住者の成年扶養親族に限ります。)
   (注)「特定成年扶養親族」とは、成年扶養親族のうち、次に掲げる者をいいます。
     1 年齢65歳以上70歳未満の者
     2 心身の障害等の事情を抱える次に掲げる者
      ① 障害者(障害者控除制度の対象者)
      ② 介護保険法の要介護認定又は要支援認定(以下「要介護認定等」といいます。)
       を受けている者
      ③ 居住者と生計を一にする配偶者その他の親族のうち要介護認定等を受けている者
       と同居を常況としている者又はこれに準ずると認められる者
      ④ 心身の状態により就労が困難と認められる次に掲げる者
       イ 難病や精神疾患等に係る公費負担医療制度等に基づく医療に関する給付の対象者
       ロ 障害者自立支援法の介護給付費等の対象者
       ハ その年中に病院等において高額な療養を受けた者(高額療養費制度の対象者等)
       ニ その年中に入院又は通院等をした者(その年又はその年の前年の療養期間の合
        計が90日以上となる者に限ります。)
     3 勤労学生控除の対象となる学校等の学生、生徒等
   ② 負担調整措置
     居住者が特定成年扶養親族以外の成年扶養親族を有する場合(その居住者のその年の合
    計所得金額が400万円を超える場合に限ります。)には、その居住者のその年分の総所
    得金額等からその成年扶養親族1人につき、38万円からその居住者の合計所得金額のう
    ち400万円を超える部分の38%相当額(当該相当額が38万円を超える場合には38
    万円)を控除した残額を控除する負担調整措置を設けます。
   ③ その他
     扶養控除の見直しに伴い、給与所得者の扶養控除等申告書及び公的年金等の受給者の扶
    養親族等申告書並びに給与所得及び公的年金等の源泉徴収票についてその記載事項及び様
    式の見直しを行うなど所要の措置を講じます。
   (注)上記の改正は、平成24年分以後の所得税について適用します。
  〔地方税〕
   ① 成年扶養控除の対象の見直し
     所得割の納税義務者が次に掲げる成年扶養親族を有する場合には、その所得割の納税義
    務者の前年分の総所得金額等からその成年扶養親族1人につき、33万円を控除すること
    とします。
    イ 特定成年扶養親族
    ロ 特定成年扶養親族以外の成年扶養親族(前年の合計所得金額が400万円以下である
     所得割の納税義務者の成年扶養親族に限ります。)
   ② 負担調整措置
     所得割の納税義務者が特定成年扶養親族以外の成年扶養親族を有する場合(その所得割
    の納税義務者の前年の合計所得金額が400万円を超える場合に限ります。)には、その
    所得割の納税義務者の前年分の総所得金額等からその成年扶養親族1人につき、33万円
    からその所得割の納税義務者の合計所得金額のうち400万円を超える部分の33%相当
    額(当該相当額が33万円を超える場合には33万円)を控除した残額を控除する負担調
    整措置を設けます。
   ③ その他
    イ 個人住民税の非課税限度額制度等に活用するため、成年扶養控除の見直しの後も市町
     村が成年扶養親族に関する事項を把握できるよう所要の措置を講じます。
    ロ 現行の調整控除について、成年扶養控除の見直しに伴う所要の措置を講じます。
    ハ 成年扶養控除の見直しに伴い、給与支払報告書及び公的年金等支払報告書についてそ
     の記載事項及び様式の見直しを行うなど所要の措置を講じます。
   (注)上記の改正は、平成25年度分以後の個人住民税について適用します。

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