Q:
最近、知人の経営者から「動産担保融資」で、運転資金を調達したと聞きました。どうすれば利用できるのか教えてください。
A:
動産担保融資は、商工中金や地方銀行・信用金庫・信用組合などの地域金融機関で、最近、急速に広がってきた融資ですが、ABL(Asset Based Lending)という横文字で呼ばれているものです。
この融資は、企業が営業活動に使用している在庫や売掛債権などの流動資産を担保としたものであり、米国では一般的な資金調達として定着しています。最近、金融庁が地域金融機関に強く要請している「過度に不動産担保などに依存しない融資手法」としても注目されています。
当初、日本では畜産品を担保にしたケースが主でしたが、ここにきてファッション商品などを担保にしたケースも出てきています。実際、ABL融資は07年度では1000億円を超える実績をあげており、その伸び率は目を見張るものがあります。
ITで「担保管理」する
ABL融資の担保は、前述したように売上債権・在庫・機械設備等の流動資産です。これは、企業の創業期や衰退期などに関係なく、どんな業種・業態でも持っているものですから、敷居の低い融資だといえます。また、売上債権や在庫などは、従来の、不動産や株式・有価証券・定期預金などの担保資産とは違って、金融機関の内部に押さえられることなく、企業(借り手)自身の管理下で、自由に使えることも好印象を与えているようです。
金融機関としても、これまで「正常な運転資金貸出先」として、信用扱い(担保なし)で貸出していたものが、担保貸出に変わり、その貸出に対する引当金負担も軽減されることになるため、歓迎する向きがあります。
しかし、中小企業がABL融資を利用するにあたっては“ハードル”があります。それはいかにして「担保管理」を行うかです。ABL融資の担保は流動資産のため、その多くは常に入れ変わるからです。例えば、売掛金であればその支払人は常に変わっていますし、在庫にしても出し入れが頻繁です。しかも、その時価評価は毎日変動します。ちなみに、その貸出残高は、担保資産の時価評価の一定の掛け目以下であることを原則としています。
金融機関は、この担保資産を保管する「融資企業」に対して、まず、担保資産の管理システムを求めます。つまり、融資を受ける側は、常にこのABL担保資産の明細を把握していて、その在庫や売掛金などをきちんと管理し、金融機関に定期的に報告しなければならないということです。
法律的にはこの担保は譲渡担保ですから、金融機関としては、担保が今どうなっているのかを正確に把握する必要があります。だから、融資企業にIT対応を求めるとともに、内部統制についても厳しく見ていきます。
このようにABL融資は、中小企業にとって使い勝手のよいものですが、半面、担保資産をきっちり管理しなければならなという側面もあります。したがって、普段からITを使って個別在庫管理や売掛金・受取手形の日々の記入・消しこみなどを行っておくことが、ABL融資を受けるにあたってのキーポイントだと思います。