平成23年税制改正大綱、閣議決定(2010/12/16)証券税制・資産税サマリー
前回の続き
(4)金融証券税制
① 上場株式等の配当等及び譲渡所得等に係る10%軽減税率(所得税7%、住民税3%)
の適用期限を2年延長します。
② 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税(いわゆる「日
本版ISA」)について、施行日を平成26年1月1日からの適用とし、非課税口座に受
け入れることができる上場株式等の範囲に一定のものを追加します。
③ 特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例等について、特定口座に受
け入れることができる上場株式等の範囲に、一定のものを追加します。
④ 相続等に係る保険年金に対する源泉徴収及び支払調書制度について、次の措置を講じま
す。
イ 相続又は贈与等に係る保険年金(一定の基準に該当するものに限ります。以下「相続
等保険年金」といいます。)に対する源泉徴収については、平成25年1月1日から廃
止します。
ロ 上記イの措置に併せて、次の措置を講じます。
(イ) 相続等保険年金に対する支払調書制度については、平成25年1月1日以後の支払分
について、提出省略基準を撤廃するとともに相続等に関する内容を記載事項に追加しま
す。また、最初の支払日が平成23年1月1日以後である相続等保険年金の初年分の支
払調書については、相続等保険年金であることを明らかにする措置を講じます。
(ロ) 国内に恒久的施設を有しない非居住者が支払を受ける相続等保険年金については、申
告の対象とします。
(5)租税特別措置等
〔国税〕
(廃止・縮減等)
① 肉用牛の売却による農業所得の課税の特例について、次の見直しを行った上、その適用
期限を3年延長します(法人税についても同様とします。)。
イ 免税対象牛の売却頭数要件の上限を年間1,500頭(現行:年間2,000頭)に
引き下げます(年間1,500頭を超える部分の所得は免税対象から除外)。
ロ 免税対象牛の対象範囲から売却価額80万円以上(現行:100万円以上)の交雑種
を除外します。
(注)上記の改正は、個人は平成24年分以後の所得税について適用し、法人は所要の経過
措置を講じた上、平成24年4月1日以後に終了する事業年度について適用します。
② 既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除等の見直し
イ 既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除について、次の見直
しを行った上、その適用期限を2年延長します。
(イ) バリアフリー改修工事
税額控除額の上限額(現行:20万円)について、平成23年は20万円とし、平成
24年は15万円とします。
(ロ) 省エネ改修工事
税額控除額の計算の基礎となる省エネ改修費用の額について、補助金等の交付がある
場合は、当該補助金等の額を控除した後の金額とします。
(注)既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除について、適用対象となる地
域の要件を廃止するとともに、補助金等の交付がある場合には、上記(ロ)と同様の見
直しを行います。
ロ 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除及び特定の増改築等に係る住宅借入
金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例について、上記イ(ロ)と同
様の見直しを行った上、省エネ要件の緩和措置の適用期限を2年延長します。
(注1)上記イ(イ)の改正は、平成23年分以後の所得税について適用します。
(注2)上記イ(ロ)及びロの改正は、平成23年4月1日以後に行う改修工事について適
用します。
③ 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例等について、次の見直しを行います
(法人税についても同様とします。)。
イ 土地等が農地法の規定により買収され、その対価を取得した場合の措置を廃止します。
ロ 収用対象事業用地の買取りに係る簡易証明制度の対象に、社会福祉法人等の設置に係
る障害者通所サービス等の事業の用に供される施設を加えます。
(注)上記の改正は、平成23年4月1日以後に行う土地等の譲渡について適用します。
④ 電子証明書を有する個人の電子情報処理組織による申告に係る所得税額の特別控除につ
いて、税額控除額(現行:5,000円)を平成23年分は4,000円、平成24年分
は3,000円に引き下げた上、その適用期限を2年延長します。
(延長・拡充等)
① 山林所得に係る森林計画特別控除の適用期限を1年延長します。
② 総合特区制度の創設に伴い、特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の
特例の適用対象となる株式会社の範囲に、総合特別区域法(仮称)に規定する特定地域活
性化事業(仮称)を行う一定の要件を満たす株式会社を加えます。
(注)上記の改正は、総合特別区域法(仮称)の施行の日から平成26年3月31日までの
間に指定を受けた株式会社について適用します。
③ アジア拠点化を推進するための制度の創設に伴い、特定の取締役等が受ける新株予約権
等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等(ストックオプション税制)につ
いて、一定の措置を講じます。
(注)上記の改正は、特定外国法人による研究開発事業等の促進に関する特別措置法(仮称)
の施行の日から平成26年3月31日までの間に認定を受けた法人の取締役等に対し、
当該認定の日から起算して3年を経過する日までに付与された新株予約権について適用
します。
④ 総合特別区域法(仮称)の制定に伴い、特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡し
た場合の1,500万円特別控除の適用対象に、同法に規定する高度化事業の用に供する
ために土地等を譲渡した場合を加えます(法人税についても同様とします。)。
(新設)
① 特定寄附信託(いわゆる「日本版プランド・ギビング信託」)に係る利子所得の非課税
の創設をします。
〔地方税〕
(廃止・縮減等)
① 肉用牛の売却による農業所得の課税の特例について、次の見直しを行った上、その適用
期限を3年延長します。
イ 免税対象牛の売却頭数要件の上限を年間1,500頭(現行:年間2,000頭)に
引き下げます(年間1,500頭を超える部分の所得は免税対象から除外)。
ロ 免税対象牛の対象範囲から売却価額80万円以上(現行:100万円以上)の交雑種
を除外します。
(注)上記の改正は、平成25年度分以後の個人住民税について適用します。
(6)その他
〔国税〕
① 新たな次世代育成支援のための包括的・一元的な制度(仮称)に基づく給付について、
所要の法整備が行われ、税制上の措置が必要となる場合には、所得税を課さないことや国
税の滞納処分による差押えを禁止する措置を講じます。
② 平成23年度以降の子ども手当について、所要の法整備が行われ、税制上の措置が必要
となる場合には、所得税を課さないことや 国税の滞納処分による差押えを禁止する措置
を講じます。
③ 雇用保険法の失業等給付について、所要の法律改正が行われ、税制上の措置が必要とな
る場合には、所得税を課さないことや国税の滞納処分による差押えを禁止する措置を講じ
ます。
④ 交通用具使用者の通勤手当の非課税について、交通用具使用者が交通機関を利用すると
した場合に負担することとなる運賃相当額まで非課税限度額を上乗せする特例を廃止しま
す。
(注)上記の改正は、平成24年分以後の所得税について適用します。
⑤ 年金所得者の申告手続きの簡素化
イ 公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、当該年金以外の他の所得の金額が
20万円以下の者について、確定申告不要制度を創設します。
(注)上記の改正は、平成23年分以後の所得税について適用します。
ロ 公的年金等に係る源泉徴収税額の計算について、控除対象とされる人的控除の範囲に
寡婦(寡夫)控除を加えます。
(注)上記の改正は、平成24年1月1日以後に支払われる公的年金等について適用しま
す。
⑥ 所得税の確定申告書の提出期間(その年の翌年2月16日から3月15日まで)につい
て、申告義務のある者の還付申告書は、その年の翌年1月1日から提出できることとしま
す。
(注)上記の改正は、平成23年分以後の所得税について適用します。
⑦ 源泉所得税の納税地について、給与等の支払事務所等の移転があった場合には、当該移
転前に支払った給与等に係る源泉所得税の納税地は、移転後の給与等の支払事務所等の所
在地とします。
⑧ 居住者又は国内に恒久的施設を有する非居住者に対して、金地金及び白金地金(金貨及
び白金貨を含みます。以下「金地金等」といいます。)の譲渡の対価の支払をする者(金
地金等の売買を業として行う者に限ります。)は、その支払金額等を記載した支払調書を、
その支払の確定した日の属する月の翌月末日までに、当該支払をする者の所在地の所轄税
務署長に提出しなければならないこととします。
(注1)同一人に対するその金地金等の譲渡の対価の支払金額が200万円以下である場合
には、その金地金等の譲渡の対価に係る支払調書の提出は要しません。
(注2)上記の改正は、平成24年1月1日以後に支払うべき金地金等の譲渡の対価につい
て適用します。
⑨ 居住者が支払を受けた生命保険契約等に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算上、
その支払を受けた金額から控除することができる事業主が負担した保険料等は、給与所得
に係る収入金額に算入された金額に限る旨を法令に規定します。
(注)上記の改正は、平成23年4月1日以後に支払われるべき生命保険契約等に基づく一
時金について適用します。
⑩ 相続等により定期預金、株式等その他の金融資産を取得した場合において、その相続等
に係る被相続人等に生じている未実現の利子、配当等は、実現段階で相続人等に課税され
るという現行の取扱いを法令に規定します。
3.資産課税
(1)相続税・贈与税の見直し
① 相続税の課税ベース及び税率構造について、次の見直しを行います。
イ 相続税の基礎控除額を引下げ、次のとおりとします。
(定額控除額) (法定相続人比例控除額)
3 ,000万円 + (600万円×法定相続人の数)
ロ 死亡保険金に係る非課税限度
非課税限度額の算定基準となる「法定相続人」の範囲が「未成年者、障害者又は
相続開始直前において被相続人と生計を一にしていた者」に限定されました。
(注)死亡保険金の非課税限度額の計算式
限度額 = 500万円×法定相続人の数
ハ 相続税の税率構造
最高税率を55%に引き上げるとともに、税率構造を現行の6段階から次の8段
階に改めます。
1,000 万円以下の金額 10%
3,000 万円 〃 15%
5,000 万円 〃 20%
1億円 〃 30%
2億円 〃 40%
3億円 〃 45%
6億円 〃 50%
6億円 超の金額 55%
② 未成年者控除及び障害者控除を次のとおり引き上げます。
イ 未成年者控除
控除額(現行:20歳までの1年につき6万円)を引上げ、「20歳までの1年につき
10万円」とします。
ロ 障害者控除
控除額(現行:85歳までの1年につき6万円(特別障害者は12万円))を引き上
げ、「85歳までの1年につき10万円(特別障害者は20万円)」とします。
【適用関係】上記①及び②の改正は、平成23年4月1日以後の相続又は遺贈により取得す
る財産に係る相続税について適用します。
③ 相続時精算課税制度の対象とならない贈与財産に係る贈与税の税率構造について、
次の見直しを行います。
イ 20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産に係る贈与税の税率構造
改正の内容は次表のとおりです。
最高税率は55%引上げになっているが、贈与財産300万円から4,500万円
までについては税率の引下げがあり、財産を贈与しやすくなっています。
(税率構造の見直しの詳細)
現 行 改 正 案
税 率 税 率
200万円以下の金額 10% 同 左 10%
300万円 〃 15% 400万円以下の金額 15%
400万円 〃 20% 600万円 〃 20%
600万円 〃 30% 1,000万円 〃 30%
1,000 万円 〃 40% 1,500万円 〃 40%
- 3,000万円 〃 45%
1,000万円超の金額 50% 4,500万円 〃 50%
- 4,500万円超の金額 55%
ロ 上記イ以外の贈与財産に係る贈与税の税率構造
20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産以外の贈与財産の改正の内容は次表の
とおりです。
最高税率の引き上げるほか、1,000万円超の部分については税率を引上げ、適用
税率の刻みを多くしています。
現 行 改 正 案
税 率 税 率
200万円以下の金額 10% 同 左 10%
300万円 〃 15% 300万円以下の金額 15%
400万円 〃 20% 400万円 〃 20%
600万円 〃 30% 600万円 〃 30%
1,000 万円 〃 40% 1,000万円 〃 40%
- 1,500万円 〃 45%
1,000万円超の金額 50% 3,000万円 〃 50%
- 3,000万円超の金額 55%
④ 相続時精算課税制度の適用要件について、次の見直しを行います。
イ 受贈者の範囲に、20歳以上である孫(現行 推定相続人のみ)を追加します。
ロ 贈与者の年齢要件を60歳以上(現行65歳以上)に引き下げます。
(注)上記③及び④の改正は、原則として平成23年1月1日以後の贈与により取得
する財産に係る贈与税について適用します。
⑤ 相続税の連帯納付義務者が連帯納付義務を履行する場合に負担する延滞税につい
ては、一定の要件の下、利子税に代える等の措置を講じます。
(注)上記⑤の改正は、平成23年4月1日以後の期間に対応する延滞税について適用
します。
(2)租税特別措置等
(延長・拡充等)
① 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置等について、
適用対象となる住宅取得等資金の範囲に、住宅の新築等(住宅取得等資金の贈与を受けた
翌年3月15日までに行われるものに限ります。)に先行してその敷地の用に供される土地
等を取得する場合における当該土地等の取得のための資金を追加します。
(注)上記の改正は、平成23年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈
与税について適用します。
② 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、同制度の運用状況等を
踏まえ、次のとおり所要の見直しを行います。
イ 風俗営業会社等に該当してはならないこととされる特別関係会社の範囲について、特
別関係会社のうち次に掲げる者によりその株式等を直接又は間接に保有される会社とし
ます。
(イ)認定会社
(ロ)認定会社の代表権を有する者
(ハ)認定会社の代表権を有する者と生計を一にする親族
(ニ)認定会社の代表権を有する者と特別の関係がある者
ロ 資産保有型会社・資産運用型会社の判定の基礎となる特定資産の範囲に、一定の外国
会社に対する貸付金等を追加します。
ハ その他所要の見直しを行います。
③ 住宅用家屋の所有権の保存登記若しくは移転登記又は住宅取得資金の貸付け等に係る
抵当権の設定登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長します。