ゴルフ会員権の譲渡所得に係る取得費の取扱いの変更
預託金会員制ゴルフ会員権の譲渡所得に係る取得費の取扱いが変更されました。
1.従来の取扱い
(1)譲渡所得の基因となる預託金会員制ゴルフ会員権とは、契約上の地位であり、優先的施設
利用権(いわゆるプレー権)と預託金返還請求権をその内容とする資産(事実上の権利)を
いうものとされます。
(2)一方、預託金会員制ゴルフ場の経営会社においては、預託金の償還問題等に対して、民事
再生法等による再建型処理つまり再生計画、更生計画及び整理計画に基づき、預託金債権を
切り捨てた上、優先的施設利用権を保障する方策(自主再建型)を採ることがあります。
(3)自主再建型の場合、すなわち、
① 会社更生法に基づく更生計画による更生手続等により、預託金債権を切り捨てた上、ゴ
ルフ場経営会社は営業を存続するというもので、単に契約内容の変更があったものにすぎ
ず、ゴルフ会員権としての性質は維持するというものであり、その場合における譲渡所得
の計算においては、切り捨てられた損失の金額は認識せず、取得価額も減額(付け替え)
しないという取扱いがされてきました。
② また、預託金債権を100%切り捨てた上、優先的施設利用権だけが継続されるケース
においては、上記(1)に述べたように、預託金会員制ゴルフ会員権は、優先的施設利用
権と預託金返還請求権を内容とするものですから、優先的施設利用権のみのゴルフ会員権
の取得価額とそのゴルフ会員権の時価相当額との差額としての損失は、譲渡所得等の各種
所得の金額の計算上考慮されないものとされてきました(平成15年7月4日付国税庁資
産課税課情報第13号「個人所有の預託金制ゴルフ会員権を巡る課税上の問題について
(情報))。
2.今後の取扱い
上記1の(3)②の場合、すなわち、預託金会員制ゴルフ会員権が上記の更生手続等(会社
更生法に基づく更生計画による更生手続と同等の法的効果を有する民事再生法に基づく再生計
画による再生手続等を含みます。)により、預託金債権の全額を切り捨てられたことにより、
優先的施設利用権(年会費等納入義務等を含みます。以下同じです。)のみのゴルフ会員権と
なったときであっても、当該更生手続等により優先的施設利用権が、次に掲げる状況その他の
事情を総合勘案し、更生手続等の前後で変更なく存続し、同一性を有していると認められる場
合には、その後に当該優先的施設利用権のみのゴルフ会員権を譲渡した際の譲渡所得の金額の
計算において、当該譲渡による収入金額から控除する取得費については、更生手続等前の預託
金会員制ゴルフ会員権を取得したときの優先的施設利用権部分に相当する取得価額とするとい
うものです。
① 当該更生計画等の内容から、優先的施設利用権が会員の選択等にかかわらず、当該更生手
続等の前後で変更がなく存続することが明示的に定められていること。
② 当該更生手続等により優先的施設利用権のみのゴルフ会員権となるときに、新たに入会金
の支払いがなく、かつ、年会費等納入義務等を約束する新たな入会手続が執られていないこ
と。
3.所得税の還付手続
上記2の取扱いの変更は、過去に遡って適用することとされます。
したがって、これにより、過去の所得税の申告内容に異動が生じ、所得税が納めすぎとなる
場合には、国税通則法第23条第2項の規定に基づき、この取扱いの変更を知った日の翌日か
ら2月以内に所轄税務署長に更正の請求をすることにより、当該納めすぎとなっている所得税
が還付されます(国税通則法23②三、同法施行令6①五)。
更正の請求をする場合には、更生計画等上記2に掲げた内容が分かる書類を併せて提出する
必要があります(国税通則法23③)。
なお、法定申告期限等から既に5年を経過している年分の所得税については、法令上、減額
することはできないこととされています(国税通則法70①一)。
(注)本件の取扱いの変更は、平成24年8月2日付国税不服審判所裁決に係るものと思われ
ます。
以上