Q.
中小企業の連鎖倒産防止に大きな効果がある「中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)制度」が、平成23年10月より、さらに拡充されたと聞きました。詳細を教えてください.
A.
中小企業倒産防止共済は、平成23年10月に大幅な制度改正が実施され、中小企業が連鎖倒産のリスクを回避する手段としてはたいへん有効な仕組みとなっています。
この制度は、中小企業の取引先事業者が倒産し売掛金債権等が回収困難になった場合に、その「売掛金債権等の額」または積み立てた「掛金総額の10倍に相当する額」のいずれか少ない額までが必ず融資(=「共済金貸付」)されることにより急場の資金を手当てして、中小企業の連鎖倒産を防止する制度です。制度に加入した企業は、原則として毎月一定の掛金を積み立てて取引先倒産時の借入枠を上記の通り確保する一方、掛金を40カ月以上納付済みなら任意解約でも納付済み掛金の全額が返戻(=「解約手当金」)されるという、いわば無料の連鎖倒産リスク対策です。さらに、毎月の掛金納付時は当該掛金の全額を「事業所得の必要経費(個人事業)」または「損金(法人)」とすることができる、大きな税制上のメリットも備えています。
共済金貸付を受ける際は、倒産した取引先事業者との商取引の内容・方法がわかる書類の提出が必要になります。共済金貸付を受けた際は、当該貸付額の10分の1に相当する積立済み掛金の権利が消滅します(完済後に任意解約した場合、例え掛金を40カ月以上納付していても同額分だけ差し引かれて返戻される仕組み)。なお解約手当金は雑収入となります。
掛金月額は最高20万円共済金貸付は最大8000万円に
それでは、同制度がどのように改正拡充されたのでしょうか。上表(『戦略経営者』2011年12月号29頁表参照)および以下をご覧ください。
1.掛金月額の上限が8万円から20万円に
掛金は、全額を必要経費・損金に算入可能ですから、リスク対策と同時に掛金納付年度に大きな節税が可能です。
2.掛金の積立限度額が800万円に
掛金月額の最高額の40カ月分が積立限度額です。
3.共済金貸付の限度額が8000万円に
積立済み掛金総額の10倍が限度ですから8000万円が限度額となり、非常に強力な連鎖倒産対策が可能です。なお、これは1件または複数の共済金貸付の合計限度額です。
4.共済金貸付の償還期限が延長
従来の一律5年返済から、共済金貸付の額により最長7年まで貸付期間が延長されました。
5.その他
所定の償還期限より12カ月以上早期の繰上完済等を条件に「早期償還手当金」が支給される仕組みや、今年3月の東日本大震災をうけて災害時に共済金貸付を利用できる仕組みの追加等が実施されて、より企業のセーフティーネットとしての有効性が向上しました。
また、今回の制度改正により、新規加入申込および既存契約者の掛金の増額・前納(掛金上限の引き上げにより申込増加が予想されます)等の手続きも大きく変更されています。