Q.
私は楽器レンタル業を営む会社(9月決算)を経営しています。
このたびの新型コロナウイルス感染症の影響により、3月以降の各種演奏会が軒並み中止・延期となった結果、3月の売上高は前年同月比で70%も減少し、今後さらにこの減少傾向が続くことが見込まれています。
このままでは会社が存続できないため、臨時株主総会の決議を経たうえで私の役員報酬を急きょ50%減額したのですが、この場合、減額前・減額後それぞれの役員報酬支給額は、法人税法上の損金となるのでしょうか。
A.
ご相談の場合、減額改定前の各支給時期における支給額と、減額改定後の各支給時期における支給額がそれぞれ同額であることを前提としますと、各支給時期に支給された役員報酬は、法人税法上の損金に算入できるものと考えられます。
[解説]
1.法人税法上の役員給与の、基本的な考え方
法人税法上、法人が役員に対して支給する報酬(退職給与等を除きます)で、「定期同額給与」(支給時期が1ヶ月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものをいいます)等に該当しないものについては、その法人の損金(会社の経費)の額には算入できないことと定められています。
また、役員報酬は、原則としてその事業年度開始から3ヶ月以内に決定・改定されたものでなければならないとも定められています。
2.「業績悪化改定事由」に該当した場合の取扱い
上記1.以外の原則的な改定以外にも、会社の経営状況が著しく悪化(「業績悪化改定事由」に該当)したために事業年度途中で役員報酬を減額改定した場合、その減額改定前の各支給時期における支給額と、減額改定後の各支給時期における役員報酬の支給額がそれぞれ同額であれば、改定前・改定後それぞれの役員報酬支給額は上記1.の定期同額給与として損金に算入できることとされています。
新型コロナウイルス感染症の影響により売上高が大きく減少した結果、やむを得ず役員報酬を減額せざるを得ない事情が発生したという今回のご相談の内容は、業績悪化改定事由に該当するものと考えられます。
したがって、減額改定前の各支給時期における支給額と、減額改定後の各支給時期における役員報酬の支給額がそれぞれ同額であれば、ともに損金に算入できるものと考えられます。
新型コロナウイルス感染症が経営環境に与える悪影響は、当初の想像を遥かに超えるレベルまで進展してきています。会計事務所は、中小企業の皆様の経営や資金繰りを専門家として支えるパートナーですので、このような厳しいときにこそ、ぜひご相談をいただき、一緒にこの難局に立ち向かわせていただければと思います。
[参考]
法法34、法令69、法基通9-2-13、国税庁「役員給与に関するQ&A」など