国税庁は、「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」を公表しましたので、紹介します。
令和4事務年度における相続税の調査においては、収集した資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定される事案等について実地調査を実施しています。
その結果、実地調査件数は対前事務年度比129.7%、申告漏れ等の非違件数は対事務年度比127.2%と大幅に増加しており、追徴税額も対事務年度比119.5%と増加しています。
1.相続税の実地調査の状況
令和4事務年度における実地調査件数は8,196件(前事務年度6,317件)、申告漏れ等の非違があった件数は7,036件(前事務年度5,532件)と、新型コロナ感染症の影響により実地調査件数が大幅に減少した令和2事務年度と比較しますと、前年度(令和3事務年度)に引き続き、いずれも大幅に増加しています。しかし、令和元事務年度における実地調査件数(10,635件)、非違があった件数(9,072件)には及ばない状況にあります。
また、申告漏れ課税価格の合計額は2,630億円(前事務年度2,230億円)と対事務年度比で117.9%、追徴税額の合計額は669億円(前事務年度560億円)と対事務年度比で119.5%、といずれも増加しています。
これを実地調査1件当たりでみますと、申告漏れ課税価格では3,209万円(前事務年度3,530万円、対事務年度比90.9%)、追徴税額(加算税を含みます。)では816万円(前事務年度886万円、対事務年度比92.1%)となっています。
なお、重加算税の賦課件数は1,043件(前事務年度858件)、賦課割合は14.8%(前事務年度15.5%)となっています。
2.簡易な接触の状況
国税庁では、実地調査を実施する一方、簡易な接触(文書、電話による連絡又は来署依頼による面接により申告漏れ、計算誤り等を是正するなどの接触)にも積極的に取り組んでいます。
令和4事務年度における簡易な接触件数は15,004件(前事務年度14,730件、対前事務年度比101.9%)、申告漏れ等の非違件数は3,685件(前事務年度3,638件、対前事務年度比101.3%)、追徴税額合計は87億円(前事務年度69億円、対前事務年度比125.2%)と、いずれも簡易な接触の事績について公表を始めた平成28年度以降で最高となっています。
3.無申告事案に係る調査結果
国税庁では、相続税の申告義務があるにもかかわらず無申告となっている事案の把握のための取組を積極的に行っており、その結果、調査件数は705件(前事務年度576件、対前事務年度比122.4%)、申告漏れ件数は607件(前事務年度502件、対前事務年度比120.9%)、申告漏れ課税価格の合計額は741億円(前事務年度572億円、対前事務年度比129.5%)といずれも大幅に増加しています。
無申告事案の1件当たりの申告漏れ課税価格は10,508万円(前事務年度9,934万円、対前事務年度比105.8%)、追徴税額は1,570万円(前事務年度1,293万円、対前事務年度比121.5%)と、実地調査全体の1件当たりの金額と比較して、いずれも大きな金額になっています。
4.海外資産関連事案に対する実地調査の状況
国税庁では、納税者の資産運用の国際化に対応し、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)をはじめとした租税条約等に基づく情報交換制度などを効果的に活用し、海外取引や海外資産の保有状況の把握に努めています。
海外資産関連事案の調査件数は845件(前事務年度660件、対前事務年度比128.0%)、申告漏れ等の非違件数は174件(前事務年度115件、対前事務年度比151.3%)と大幅に増加しています。
海外資産に係る申告漏れ課税価格の合計額は70億円(前事務年度56億円)、非違1件当たりの申告漏れ課税価格は4,028万円(前事務年度4,869万円)となっています。
5.申告漏れ相続財産の状況
調査により把握された申告漏れ財産の構成比をみますと、現金・預貯金が31.5%、有価証券が11.9%、土地が13.0%であり、不表現資産である現金・預貯金等及び有価証券の申告漏れウエイトが43.4%(前事務年度44.7%)となっており、相続税の調査においては、引き続き、不表現資産の把握に重点を置いた調査が行われているといえます。
6.贈与税の申告漏れ相続財産の状況
相続税の補完税である贈与税についても、積極的な資料情報の収集とあらゆる機会を通じた財産移転の把握に努め、無申告事案を中心に調査を実施しています。
令和4事務年度における実地調査件数は2,907件(前事務年度2,383件、対前事務年度比122.0%)、追徴税額は79億円(前事務年度68億円、対前事務年度比115.1%)、1件当たり申告漏れ課税価格708万円(前事務年度734万円、対前事務年度比96.4%)となっています。
◎ 詳細につきましては、国税庁ホームページ>お知らせ>報道発表>国税庁発表分>
「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」をご参照ください。