【質問】
製造業を営むA社は、おおよそ10年前に営業不振に陥ったB社の売掛金100万円について、現在まで帳簿上何らの減額をしないで資産として計上していることが判明しました。今般、その関係について調べた結果、B社は破産宣告や更生手続き等の法的整理の対象となった経緯はありませんが、B社は現在実質的に倒産状態となり、その役員も今期において亡くなりました
なお、当会計事務所がA社に関与したのは2年前ですが、10年前からの回収の経緯について現社長に確認をしたところ、B社は1年ほど前まで細々と事業を行っており、A社の前社長が継続して回収をしていた事実を示す資料も現存しております。
以上のような事実関係ですが、今期において貸倒損失として計上した場合、税務上認められる否かにつきましてご教示ください。
【回答】
ご質問の10年前に営業不振に陥ったB社の売掛金に係る貸倒損失計上の可否につきましては次のとおりです。
1 先ず、法人の有する金銭債権について回収不能が発生した時には、それぞれの債権の種類に応じ、一定の要件に該当する場合には、その回収不能金額を貸倒損失として損金の額に算入することができるとして定められています(法基通9-6-1、同9-6-2及び同9-6-3)。
具体的には、貸付金その他これに準ずる債権が法律上の貸倒として切り捨てられたような場合には、その事実の発生した事業年度において損金の額に算入されます(同9-6-1)。
一方、それらの債権の全額が、債務者の資産状況、支払い能力等からみて回収不能となった場合には、貸倒損失として損金経理をすることにより損金算入が認められることとされております(同9-6-2)。
また、売掛債権等について債権確保が事実上不能の状態にあり取引停止後1年以上を経過したような場合においても損金経理により貸倒損失が認められることとして取り扱われております(同9-6-3)。
2 さて、ご質問の事実関係を上記の税務上の取扱い等に照らし併せて判断しますと、貸倒損失の取扱いは、基本的には、回収不能が確定した時期の損金として認められることとなります。
この場合、貸付金や売掛金等の債権の種類に応じ、法律上の貸倒れ、事実上の貸倒れ及び形式上の貸倒れに大別して、それぞれ判断することとなりますが、税務上の取扱いとしましては、債権が回収不能となった時点において損金経理を行うことにより認められることとなります。
したがって、10年前に営業不振に陥ったB社の売掛金に係る貸倒損失の時期につきましては、債務者の資産の状況やその支払能力等からみて、当期においてその全額の回収不能が明らかとなったということであれば、貸倒損失としての損金確定時期は当期ということになりますので、損金経理を要件として貸倒損失が認められると考えます。
また、債務者の資産の状況やその支払能力、債権者の債権の回収経過等からみて、当期において内容証明等による債権放棄に係る書面を発するのであれば、その発した日を含む事業年度において損金計上することにより貸倒損失も認められると考えます。
なお、利益調整のために貸倒損失の計上時期を操作することが認められないことは当然のことと考えますので念のため申し添えます。
【関連情報】
《法令等》 法人税基本通達9-6-1
法人税基本通達9-6-2
法人税基本通達9-6-3