公開日: 2022年07月12日

退職者への未払い残業代の支払いと源泉所得税の徴収

[相談]

 私は、会社で経理を担当しています。
 先月、勤務先に対して労働基準監督署による臨検が行われ、その結果、勤務先は過去の勤務について未払いとなっていた割増賃金(残業代)を従業員に支払うよう是正勧告を受けました。
 これを受け、勤務先は過去2年分の残業代を従業員に支払うことになったのですが、その支払先には、すでに退職した元従業員もいます。
 そこでお聞きしたいのですが、この元従業員への支払いについて、源泉所得税の徴収を行う必要があるのでしょうか。教えてください。

[回答]

 ご相談の元従業員への残業代の支払いについては、所得税の源泉徴収を行う必要があります。

[解説]

1.未払い残業代の概要

 労働基準法では、原則として、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて従業員に労働をさせた場合には、基礎となる賃金に対して一定以上の割合で算出した割増賃金(残業代)を従業員に支払わなければならないことと定められています。

 この定めに反して、企業が割増賃金の全部または一部を従業員に支払っていない場合には、いわゆる「未払残業代」が発生することとなります。

2.未払残業代を支給した場合の所得税法上の取扱い

 所得税法上、退職に際し又は退職後に使用者等から支払われる給与で、その支払金額の計算基準等からみて、他の引き続き勤務している者(在職者)に支払われる給与・賞与等と同性質であるものについては、それは退職したことに基因して支払われるものではないことから退職手当等には該当せず、給与等として取扱い源泉徴収を行うこととされています。

 なお、このような場合の源泉徴収税額については、給与所得者の扶養控除等申告書の効力がその申告書を提出した人の退職により失われることとされているため、原則として、給与所得の源泉徴収税額表の「乙欄」により求めることとなります。

[参考]
所法30、所基通30-1、194・195-6、労働基準法24、32、37など

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