公開日: 2023年10月24日

消費税簡易課税制度における貸倒れに係る消費税額の取扱い

[相談]

 私は、個人で年商1,500万円程度のサービス業を営んでおり、消費税の申告方法は簡易課税制度を選択しています。
 今年の7月に、ある取引先への売掛金が貸倒れ(消費税法上の貸倒れに該当します)となったのですが、この貸倒れとなった売掛金に係る消費税額について、消費税法上どのように取り扱われるのかを教えてください。

[回答]

 ご相談の貸倒れとなった売掛金に係る消費税額については、今年分の消費税課税標準額に対する消費税額から控除することとなります。詳細は下記解説をご参照ください。

[解説]

1.消費税簡易課税制度の概要

 消費税の簡易課税制度とは、消費税法上の課税売上高と、事業の種類の区分(事業区分)に応じて定められたみなし仕入率を用いて、納付すべき消費税額の計算を簡便的に行うことができるという制度です。

 なお、この制度の適用を受けるためには、原則として、その年(もしくはその事業年度)の前々年(もしくは前々事業年度)の消費税課税売上高が5,000万円以下であり、かつ、その年(もしくは事業年度)の開始の日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することが必要です。

2.貸倒れに係る消費税額の控除の規定の概要

 消費税法上、事業者(消費税免税事業者を除きます)が、国内において課税資産の譲渡等(※1)(消費税が免除されるものを除きます)を行った場合において、その課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権について更生計画認可の決定により債権の切捨てがあったことその他一定の事実(※2)が生じたため、その課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をすることができなくなったときは、その領収をすることができないこととなった日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、その領収をすることができなくなった課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税額の合計額を控除すると定められています。

 したがって、今回のご相談の売掛金に係る消費税額については、その領収をすることができないこととなった日の属する課税期間(今年)の消費税課税標準額に対する消費税額から控除することとなります。

※1 課税資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供のうち、消費税非課税とされるもの以外のものをいいます。

※2 消費税法上の貸倒れとして認められる事実とは、具体的には、次のようなものが該当します。

  • 再生計画認可の決定により債権の切捨てがあったこと。
  • 特別清算に係る協定の認可の決定により債権の切捨てがあったこと。
  • 債権に係る債務者の財産の状況、支払能力等からみてその債務者が債務の全額を弁済できないことが明らかであること。
  • 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより債権の切捨てがあったこと。
    • イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
    • ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの
  • 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その債務を弁済できないと認められる場合において、その債務者に対し書面により債務の免除を行ったこと。
  • 債務者について次に掲げる事実が生じた場合において、その債務者に対して有する債権につき、事業者がその債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして経理したこと。
    • イ 継続的な取引を行っていた債務者につきその資産の状況、支払能力等が悪化したことにより、その債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時がその取引を停止した時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合(その債権について担保物がある場合を除きます)
    • ロ 事業者が同一地域の債務者について有するその債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、その債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき。

※3 消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(資産の譲渡、資産の貸付けや役務の提供について受け取る金額または受け取るべき金額)とすると定められています。なお、この課税標準となる対価の額には、消費税等相当額は含まれません。

[参考]
消法2、28、37、39、消令59、消規18など

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